「Atlantic Sentinels」は、2024年に米国CompassGamesが出版したSLGだ。テーマはWW2での大西洋における船団護衛戦で、プレイヤーは連合軍の護衛部隊を率いてUボートの攻撃から船団を守ることを目指す。
今回、キャンペーンシナリオに挑戦してみた。
前回までの展開 --> こちら
第11回航海:1942年7月前半
中佐に昇進した直後、私は60隻の大船団を率いてロンドンデリーを出航した。しかしこの航海は呪われたものであった。連日の悪天候で船団は散り散りになってしまい、落伍した船が続出。落伍船を狙ってUボートが襲ってくる。船団の被害は大型輸送船「ユリシーズ」(14,600トン)を初め4隻に達し、他に1隻が魚雷1本を食らいながらも辛うじてニューファンドランドに到着した。我々の戦果はUボート撃沈1隻のみ。我々が被った初めての大被害であった。
第18回航海:1942年10月後半
1942年10月16日。ニューファンドランド島セントジョーンズ港を出航した我々の大輸送船団は、一路東を目指していた。これまでの17回の航海で我々は商船12隻、85,200トンを失っていた。その一方で撃沈したUボートは計14隻。決して小さな損害ではなかったが、敵に与えた被害も決して小さいものではなかった。出港して6日後の10月22日夜半。我々はUボートの集団による攻撃を受けた。合計7隻のUボートよりなるウルフパックである。最初に攻撃してきた4隻のUボートは、船団を包囲するように左右及び前方から襲撃を企てた。しかしこの4隻は、HF/DF、271型レーダー、そしてASDICによって次々と捕捉された。2隻のUボートを撃沈し、残る2隻は損傷を与えて追い払った。
続いて第2波のUボート3隻が船団左側から近づいてきた。3隻のうちHF/DFで1隻、ASDICで1隻を捕捉したが、遂に1隻のUボートが護衛スクリーンを突破した。Uボート1隻を撃沈したが、Uボートの雷撃によって輸送船2隻に魚雷が命中した。幸い両船とも沈没こそ免れたが、損傷によって船団から落伍していった。なお、この時輸送船に命中魚雷を与えたUボートは、その後再び船団襲撃を試みた際、護衛部隊に発見されて撃沈の憂き目を見ている。
この4日後、船団がアイスランド南方に到着した頃、再びウルフパックの攻撃を受けた。今回はUボートが4隻。先ほどよりも隻数は少なかったが、悪天候のため船団の隊形が乱れていた。
そして、そこを狙われた。
落伍船を狙ってUボートが近づく。がっちりと陣形を組んだ輸送船団はUボートの攻撃に対して強力であったが、落伍した輸送船はUボートのカモに過ぎない。輸送船3隻が撃沈され、1隻が大破した。損失トン数は16100トンに達した。
一方、攻撃してきたUボート4隻のうち1隻を撃沈した。この航海を通して撃沈したUボートの隻数は合計5隻。損害も大きかったが、敵に与えた戦果も大きい航海であった。
第25回航海:1943年2月前半
大西洋の冬は厳しい。毎日のように嵐が吹き荒れる。嵐の中では船団は隊形を維持できないし、頼みの長距離哨戒機も飛来しない。我々にとってもっとも嫌な季節が冬だった。しかし長かった冬もようやく終わろうとしていた。この頃になると我々の装備も当初からは見違えるほど強化されていた。旗艦の駆逐艦「ハブロック」には新型の前投兵器ヘッジホッグが装備されていた。また271型レーダーもこの時期になると一部の旧式駆逐艦を除いて殆どの艦に装備されていた。
この航海では、我々は3度に渡ってUボートの群狼攻撃を受けた。しかし強化された護衛部隊はUボートに対して牙をむいた。この航海だけで実に8隻のUボートを海底に葬ったのである。しかもその半数が「ハブロック」に装備されたヘッジホッグによる戦果だった。
もっとも、数で襲い掛かるUボートの攻撃から船団を完全に守り切ることはさすがに難しく、この航海では輸送船3隻、合計19,100トンが撃沈されてしまったのだが・・・
第29回航海:1943年4月前半
我々が船団護衛の任務に就いてから既に1年以上の月日が流れていた。昨年の今頃に比べると、今は隔世の感がある。当時はわずかに1隻に装備されていた271型対水上レーダーも今では全ての護衛艦に装備されていた。また当時は1基もなかった前投対潜兵器ヘッジホッグも、今では凡そ半数の護衛艦に装備されていた。さらに船団上空には常に大型哨戒機が飛び回り、大型哨戒機の行動範囲外では護衛空母を発進した艦載機が監視の目を光らせていた。今回の航海は、強化された我々の対潜網がその威力を発揮した。ロンドンデリーからセントジョーンズに向かう途上、我々は大規模な群狼による攻撃を受けた。その群狼は9隻のUボートよりなっており、彼らは2波に別れて船団を包囲するように攻撃してきたのである。しかし我々の対潜防御は彼らの攻撃を完全に阻止した。
襲撃してきた9隻のうち、実に5隻のUボートを撃沈した。そのうち4隻はヘッジホッグによる戦果だった。残りの4隻のうち、2隻は襲撃前に護衛空母を発進した艦載機による攻撃を受けて急速潜航を余儀なくされた。残り2隻は船団への襲撃を試みたものの、我々の警戒網に捕まって反撃を受け、損傷を被りながらも辛くも戦場を離脱していった。
第34回航海:1943年6月後半
この航海が私にのって最後の護衛任務となった。6月中旬のある日にニューファンドランド島を出航した我々は、長距離哨戒機と護衛空母に守られて東を目指した。その航海は比較的平穏な航海であったが、あと2日でイギリスに到着するという日で我々は群狼の攻撃を受けた。その群狼はUボート3隻という比較的規模が小さいものであったが、悪天候が敵を利した。荒天の為に船団から落伍していた1800トンの「トレビサ」がUボートの攻撃を受けた。遠距離から発射された魚雷1本が「トレビサ」に命中。小型船の「トレビサ」は浸水を止められずに沈没した。これが私の輸送任務で喪われた最後の輸送船となった。
直ちに反撃に出た護衛部隊はフラワー級の「ゴデチア」と「カメリア」がUボートを追撃。ASDICで探知した「ゴデチア」が、ヘッジホッグでこのUボートを撃沈した。
「ゴデチア」は夜に入って船団襲撃を企てた別のUボートをヘッジホッグで仕留めており、この日だけで2隻のUボートを仕留めたことになる。
結果
この航海を最後に私は護衛任務から退いた。私の最終的な戦歴は以下の通りである。・護衛回数:34回
・護衛対象:1820隻
・船舶損失:24隻(130.300トン)、損失率1.31%
・撃沈戦果:Uボート42隻
感想
キャンペーンの結果は「決定的勝利」でした。Uボートを64隻も沈めたのが大きかったです。とはいえ、若干の違和感は禁じ得ません。
こちらの護衛部隊は損失ゼロ(損傷艦すらなかった)で果たして40隻ものUボートを撃沈できるものなのでしょうか?。大西洋の戦いとは、これほど容易な戦いだったのでしょうか?。私のルール適用が実は間違っているのでは?。
苦言を少し続けると、このゲームとにかくチャートの配置が下手です。プレイを始めると複数枚のチャートをあちらこちらから引っ掻き回す必要があります。さらに一工夫すれば少しは使いやすくなりそうなのに、無造作に配置されているので使いにくい。極めつけは船の大きさ判定で、ダイス目と船の大きさについて順番がバラバラなので、大きさを判断するために船名表を見なければならない。船の大きさがダイス目の順番に並んでいれば、船名表を見る機会を激減できたはずなのですが・・・。
さらに言えば、このゲーム、プレイヤー側に「頭を使う」場面が殆どありません。護衛艦の隻数が少ない場合には少しだけジレンマが発生しますが、護衛艦が増えてくると手数が足らないという場面が殆どなくなり、船団の全周の守りを固めて、さらに落伍船への護衛を割り当てることもできます。プレイヤーの仕事は、護衛艦一旦配置すると、あとはひたすらダイスを振るだけ。プレイ中に「一体俺は何をやっているんだろう?」と違和感を覚えることもしばしばでした。
まあ苦言はこれぐらいにして、今回のプレイで威力を発揮したのはHF/DFとレーダーです。特にHF/DFで事前探知するUボートがとにかく多い。もしHF/DFがなければ、船団の被害は倍増どころでは済まなかったと思います。
レーダーはHF/DFほどではないですが、それでも夜間に襲撃をかけてくるUボートを事前発見するのに威力を発揮しました。序盤はレーダー装備艦が少なかったのですが、少しずつ増えていき、最終的には全艦がレーダーを装備するに至りました。
ちなみに今回のキャンペーンでは、最初からHF/DFをレーダーを持っていましたが、ゲーム開始時にHF/DFを持っている可能性は30%、レーダー装備艦を保有する可能性は60%です。確率40%で登場するカナダ軍護衛部隊は、HF/DFもレーダーも持っていません。だから「地獄の大西洋」を味わいたい方は、是非カナダ軍に挑戦してみて下さい。