もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > 海戦ゲーム

CoC

Carrier Clashは、Against the Odds誌第58号の付録ゲームで、2023年に発売された作品です。このゲームの扱うテーマはマリアナ沖海戦。1944年6月下旬にマリアナ西方海上で戦われた日米の艦隊決戦です。
この戦いは、史上最大の空母決戦と言われており、参加空母が両軍合わせて24隻、艦載機1300機以上が参加しました。戦い自体は連合軍の大勝利に終わり、日本の空母艦隊はこの戦い以降米空母部隊と互角の戦いを行えなくなりました。

本作はマリアナ沖海戦のほぼ全体を再現するSLGで、1Hex=25海里、1Turn=6時間、1ユニット=巡洋艦以上1隻、駆逐艦以下数隻、航空機は10~30機程度というスケールになっています。システムはダミーを併用したチットプルで、タスクフォース別に活性化チットが用意されていて、引いて来たタスクフォースが活性化するというものです。ちなみにこのシステムのおかげで、ダミーを使用しているにも関わらずダミーによる兵力隠匿の効果はあまり大きくはありません。

今回、本作のコンポーネント紹介動画を作成しました。マリアナ沖海戦といういわば「バランスの悪い」戦いをどのようにゲーム化したのか。そういった点にも着目してご覧頂ければ幸いです。



Carrier Battle - Philippine Sea
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 精強261空“虎部隊”サイパン戦記 太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで The Philippine Sea 1944

CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGで、テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

本作については、以前にシナリオ6「The Battle of 19 June」のAARを紹介した。

シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【1】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【2】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【3】

前回のプレイでは「空母7隻撃沈」というちょっと信じられない大戦果だったので、さすがに現実離れしていると思い、別シナリオをプレイしてみた。そこで選択したのが今回のシナリオだ。

  シナリオ8「Battle of Phillippine Sea

このシナリオは、6月19日~20日の2日間全体を扱うシナリオで、事実上ヒストリカルシナリオでは本作で一番大きなシナリオである。さてさてどうなることか・・・

前回までの展開 --> こちら

その後

Carrier Battle - Philippine Sea 夜に入ると艦載機の大半を失った日本艦隊は西に向けて退避していった。米艦隊も針路を西に転じてこれを追う。

翌6月20日。夜明けになって索敵機を飛ばそうとしたが、ここで待ったが入った。某参謀曰く。

「長官、索敵機を出すのは少し待ってください」
「なぜだ?」
「ルールを読むと、索敵機に発見された日本艦隊は、燃料補給を打ち切ってすぐに逃げる、とあります」
「だから、なんだ?」
「索敵機を出すのは止めましょう」
「ダミーはもう皆無なのだから、敵空母の位置は明白です」
「十分に距離を詰めてから索敵機を飛ばして敵空母の位置を確認し」
「敵を逃がさない距離から攻撃隊を放つのが良いと思いますが」
「下手に索敵して日本艦隊が逃げ出してしまえば、元も子もありません」
「よしわかった。索敵機の発進マテ」


米艦隊は全力で日本艦隊を追いかけ、午後に入って距離200海里に日本空母を捉えた。

写真13


しかし燃料補給を終えた日本空母は全力で西へ向けて退避していく。米索敵機が日本空母を発見したのが1730。最早今から発進しても夜までに日本空母を捕捉できる可能性は小さい。しかも日本空母は全力で逃げている。さらに言えば、風向きの関係で攻撃隊の発進は最終ラウンドになってしまう。帰還が夜になるのが危ぶまれたが、私は決断した。

「ただちに攻撃隊を発進せよ」


USN_AS6各空母から準備済みの攻撃隊が発進していく。戦爆連合240機からなる攻撃隊が2つのグループに分かれて日本空母を追う。距離は約230海里。日没が迫っているので、巡航速度を260ノットに上げて目標に向かう。燃費が悪化するので帰還が危ぶまれたが、とにかく目標海域に急ぐ。

写真14


IJN_CV_Shokaku日没直前に攻撃隊は日本艦隊上空に達した。燃料タンクは半分以上使い切っているが、とにかく攻撃を開始する。目標となった日本艦隊は、正規空母「翔鶴」と改造空母「隼鷹」「飛鷹」の3隻、護衛部隊は戦艦「金剛」と巡洋艦戦隊である。元々この部隊には正規空母「大鳳」がいたのだが、「大鳳」は午前中の燃料補給時に米潜水艦の雷撃を受けて魚雷数本が命中、轟沈してしまっていた。

写真15


攻撃隊は日本の戦闘機の妨害を突破し、空母艦隊に殺到する。攻撃目標は「翔鶴」と「飛鷹」の2隻。最初の攻撃では両艦共数発の命中弾を受けて損傷しただけだが、機関部は無事で全力戦闘が可能だった。
しかし続いて米側の攻撃第2陣が日本側の不意を突く形で日本艦隊上空に殺到してきた。この攻撃隊は損傷してやや対空火力の弱まった「翔鶴」「飛鷹」に攻撃を集中する。今回の攻撃では多数の魚雷・爆弾が両方の空母に命中し、両艦共轟沈してしまう。米側の損害は約20機である。

写真16


さて、問題はこれからである。攻撃自体は終わったが、攻撃隊は空母に帰還しなければならない。帰還は完全に夜になりそうだ。例の「サーチライトルール」のお世話になるかもしれない。

攻撃隊が空母上空に戻ってきたのは2130頃であった。各空母艦上ではサーチライトを点灯し、照明弾を撃ち上げて味方機を迎え入れる。付近に潜んでいる日本潜水艦の目標になる危険性があったが(確率10%)、幸い攻撃を受けることはなかった。着艦に失敗したり、不時着水等で約40機が失われたが、残った機体は無事空母に着艦できた。
ちなみに本作戦全体を通じて失われた空母艦載機の総数は約170機。一方で撃墜した日本機は400機以上である。

結果

今回の最終結果は以下の通りである。

日本側の損害

損失:空母「大鳳」「翔鶴」「飛鷹」「千歳」「千代田」、巡洋艦2個戦隊、駆逐艦2個戦隊
大破:空母「瑞鳳」
中破:空母「龍鳳」
航空機:55ポイント(440機)

米軍の損害

沈没:潜水艦「フィンバック」
小破:戦艦「アイオワ」
航空機:14ポイント(168機)


流石に前回の「空母7隻撃沈」に比べると戦果がやや小ぶりになったが、それでも「空母5隻撃沈、2隻撃破」というのは史実に比べると十分大戦果と言える。ちなみに勝利条件に当てはめるとVPは113点。「Overwhelming US Victory(米軍の大勝利)」という結果になった。

感想

勝利条件については日本空母を沈めた隻数に依存するので、チャンスがあれば攻撃した方が良い。今回はまさに日没直前の攻撃となり、史実に似た結果となった。幸い攻撃に成功したので勝利レベルを上げることができたが、もし最後の航空攻撃がなかったら、勝利レベルが1~2段階ぐらい低下していた可能性が高い。

今回は全部のルールを入れたいわば本作の最終版的なシナリオである。風向きルールや基地航空隊の増強ルールがあるので、シナリオ6に比べるとやや「手強い」シナリオとなっている。まあ対応を間違えなければ日本機の攻撃から空母を守り切ることは十分可能だ。運が悪ければ防空ラインを突破される可能性もあるが、空母が誘爆を起こしたり火災を起こさなければ、大きな損害を被ることはないだろう。一番怖いのは爆装した機体が飛行甲板に並んでいる時に爆撃されることだが、レーダー警戒によって攻撃を受けるまでの時差があるので、その間に対応可能だ。

ゲーム自体はとても面白い。テーマの関係上プレイヤーが負ける可能性はあまりないが、気を抜くとやられるという緊張感は心地よい。また日本機の攻撃の合間を縫って攻撃隊を発進させて日本空母を首尾よく攻撃できたら気持ちいいものだ。そういえば姉妹作品のCarrierもまだ未プレイだったので、機会を見つけてプレイしてみたいと思う。

Task_Force_38_off_the_coast_of_Japan_1945


Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 波まくらいくたびぞ アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(上) New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGで、テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

本作については、以前にシナリオ6「The Battle of 19 June」のAARを紹介した。

シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【1】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【2】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【3】

前回のプレイでは「空母7隻撃沈」というちょっと信じられない大戦果だったので、さすがに現実離れしていると思い、別シナリオをプレイしてみた。そこで選択したのが今回のシナリオだ。

  シナリオ8「Battle of Phillippine Sea

このシナリオは、6月19日~20日の2日間全体を扱うシナリオで、事実上ヒストリカルシナリオでは本作で一番大きなシナリオである。さてさてどうなることか・・・

前回までの展開 --> こちら

19日1210

Carrier Battle - Philippine Sea IJN_AirRaid_1-A最初に飛来した日本機による攻撃は終わったが、第2波約100機の日本機がTF58に近づいてきた。その頃、米戦闘機の多くは燃料補給のために空母に着艦していて、上空に残っていた戦闘機は約100機に過ぎなかった。さらにそれらの機体の多くも燃料が残り少なくなってきている状況である。まさに米機動部隊は危機を迎えた訳だ。

写真08


USN_IF1しかし米空母も燃料補給を終えた戦闘機を次々と発進させて迎撃に向かわせた。日本機を発見した距離が比較的遠かったため、迎撃時間に余裕があったことが幸いした。瞬く間に約80機の戦闘機が舞い上がって迎撃に向かう。米軍機の迎撃を受けた日本機は次々と撃ち落され、残ったのは護衛戦闘機が数機のみとなった。ここまでの戦いで米軍機が撃墜した日本機はこの日だけで300機以上となり、この日の戦いが後に「マリアナの七面鳥撃ち」と呼ばれることになる。

19日1330

IJN_CVL_Zuiho米軍の攻撃隊が日本艦隊上空に到達した。攻撃を受けたのは第3航空戦隊所属の改造空母「瑞鳳」「千歳」「千代田」の3隻とその護衛部隊である。

写真09


米軍の圧倒的な攻撃部隊は日本空母を発進したCAPを易々と突破し、日本空母を叩いた。正規空母ではないのが残念だが、改造空母であっても空母は空母だ。さっきの駆逐艦とは違う。

最初の攻撃で「千代田」が沈没。「瑞鳳」も大破して航行不能。もう1隻「千歳」も爆弾1発が命中して損傷する。
続く2回目の攻撃で「千歳」も沈没。「瑞鳳」は既に航行不能なので無視されたため生き残った。結局日本艦隊の損害は、改造空母2隻沈没、1隻大破で、第3航空戦隊は事実上戦力を失う。

空母瑞鳳


19日1450

Z_Intel_Surf_L1先の攻撃で北から接近してきた日本空母艦隊を無力化することに成功した。一方南方からは別の日本艦隊が近づいてきた。これは空母艦隊ではなく水上部隊らしい。3群に分かれてサイパン島向けて突進してきている。これを早めに阻止しないと面倒なことになる。米空母から攻撃隊が発進し、南の日本艦隊に向って行く。その兵力は約200機である。

写真10


19日1610

IJN_AirRaid_1-A 「国籍不明機2個編隊接近中、機数合計約80」

日本軍の新たな攻撃隊が出現した。先ほどの攻撃隊の残余か?、あるいは先に撃破した改造空母部隊から発進した部隊か?
いずれにしても脅威は脅威なので迎撃戦闘機を向かわせなければならない。先ほどのように200機とか300機といったような大編隊ではないので、対処は比較的容易だ。この時、上空警戒中の戦闘機は約240機。そのうち燃料が不足していた約50機を除いた200機弱が日本機迎撃に向かった。

「別の国籍不明機、北北東より接近、機数約50」

なんだと、まだ新たな敵空母艦隊が現れたのか?
どうやらそうではないらしい。硫黄島から発進してグアムへ向かう増援部隊のようだ。当面は無視しても差し支えなさそうだが、グアムの航空戦力が強化されるというのも厄介だ。戦力の1/3である約70機をグアムに向ける。

F6F


USN_CV17日本の攻撃隊と米戦闘機の交戦が始まっていた。戦力的には十分な米軍戦闘機であったが、日本機の一部は戦闘機の防衛ラインを突破し、TF58上空に達していた。この日本機は賢明にも艦隊前衛の戦艦部隊を無視し、後方にいる空母本隊を狙う。狙われたのはモントゴメリー少将麾下のTG58.2(第58.2機動群)である。「バンカーヒル」「ワスプ」「モントレー」「キャボット」の4空母を基幹とする空母群だ。
激しい対空砲火が20機弱の日本機を包み込む。近接信管付の5インチ砲や「最も多くの日本機を落とした」と言われている40mm機関砲が次々と日本機を撃ち落とした。こうして日本機の大半は撃墜され、残った日本機も空母に命中弾を与えることなく引き上げていく。

IJN_CA_15108一方、日本艦隊に近づきつつあった米攻撃隊は、その視界内に日本艦隊を捉えた。巡洋艦1個戦隊からなる部隊だ。全部で200機もの攻撃隊が小さな巡洋艦戦隊を攻撃したのだ。同戦隊は壊滅的な損害を被り、作戦を諦めて引き上げていく(ゲーム的には1ユニット除去)。

写真11


19日1730

別の日本艦隊がグアム島南方から接近しつつあった。空母を含まない水上部隊らしい。直ちに空母に戻ってきた攻撃機を再編成して攻撃隊を編成する。戦闘機は全て迎撃戦闘に投入されていたため、護衛なしの艦爆・艦攻のみ約100機の攻撃編隊が空母から発進して南へ向かう。時刻は既に夕方に入っていたが、既に日本艦隊はTF58から150海里以内の近距離に迫っていたので燃料や帰還時間の心配はない。

写真12


19日1850

夕日が西の空に沈もうとしている。今日最後の攻撃隊が日本艦隊を捉えた。日本艦隊の正体は、小規模な駆逐艦戦隊でいわゆる「東京急行」だ。約100機の攻撃隊は駆逐艦戦隊を苦も無く撃沈し、「東京急行」はここでも運航停止となった。

SB2C_in_landing_USS_YORKTOWN


つづく

Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 波まくらいくたびぞ アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(上) New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGで、テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

本作については、以前にシナリオ6「The Battle of 19 June」のAARを紹介した。

シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【1】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【2】
シナリオ6「1944年6月19日の戦い」【3】

前回のプレイでは「空母7隻撃沈」というちょっと信じられない大戦果だったので、さすがに現実離れしていると思い、別シナリオをプレイしてみた。そこで選択したのが今回のシナリオだ。

  シナリオ8「Battle of Phillippine Sea

このシナリオは、6月19日~20日の2日間全体を扱うシナリオで、事実上ヒストリカルシナリオでは本作で一番大きなシナリオである。また上級ルールは全て採用した。中でも影響の大きいのが、以下のルールだ。

  16.0 Land Air Reinforcements
  17.0 Leeward Movemet

Z_AC_IwoJima前者は日本軍基地航空隊の増援で、硫黄島及びヤップ・パラオ方面から1日100機前後が増援として登場する。もし全部の増援が登場すると2日間で約400機が登場することになるので、結構脅威になる。

後者は風向きのルールで空母が風下に向けて移動すると色々と面倒なことになるというルール。この地方は貿易風で東風なので、風上に向かう時には東に向かうことになる。日本艦隊がやってくるのは西からで、しかも彼らは長距離攻撃大好き。米艦隊としては間合いを詰めたいけど、風向の関係でなかなか間合いを詰めることができない。これは確かに苦しめそうだ。

さてさてどうなることか・・・

19日0530

いよいよ決戦当日。まだ日本艦隊発見の報告はないので、米艦隊は索敵機を扇形に発進させた。またグアム島からの空襲に備えて戦闘機の1隊をグアム島上空に派遣する。

写真01


19日0810

Carrier Battle - Philippine Sea USN_Finback日本艦隊を追っていた潜水艦「フィンバック」から、「空母らしきもの1隻撃沈」の報が入った。まずは大戦果である。
その一方、グアム島方面に派遣していた戦闘機隊からも報告があった。

「日本機約50機グアムより発進」
「その約半数を撃墜したものの、残りは貴艦隊に向かう」


さあ、やってきたぞ

写真02


19日0930

「敵空母みゆ、位置、TF58の北北西300海里」
「別の敵艦隊あり、位置、TF58の北北西200海里」

索敵機から待ちに待った敵発見報告が入った。他にもその付近に別の敵艦隊発見報告も入っている。

「第1次攻撃隊全機発進、直ちに攻撃せよ」

USN_AS8各空母に待機していた攻撃隊が直ちに発進していく。戦爆連合約230機からなる大攻撃隊だ。これは米空母部隊の攻撃兵力の約半数に相当する。遠方の空母は距離300海里とやや遠いので、まずは200海里の距離にある敵艦隊を攻撃することにした。空母の存否は不明だが、上手く行けば敵空母を叩けるかもしれない。仮に空母を含まない水上部隊であっても、サイパン島に近づきつつある敵艦隊であれば、早めに阻止する必要がある。

IJN_DD_644果せるかな、発見した日本艦隊の正体は駆逐艦数隻からなる軽部隊であった。サイパンへ向かう「東京急行」の一種だろう。数隻の駆逐艦相手に200機以上の攻撃隊は些か過剰であったかもしれない。駆逐艦の大半は撃沈破され、「東京急行」は運転中止となった。

写真03


19日1050

IJN_AirRaid_3-A 「国籍不明機西北西より接近、2波に分かれて機数約200。距離100海里~170海里」

こちらが本命か?
現在約180機の戦闘機が空母の守りについていたが、いかんせん、日本機が多すぎる。撃ち漏らしが発生するかもしれない。幸い敵機が空母上空に現れるまでにはまだ間があるので、急いで各空母艦上で戦闘機の準備をする。
しかし飛行甲板には爆装待機中の第2次攻撃隊が埋まっている。直ちに攻撃隊を発進させて300海里北方の日本空母艦隊に振り向けた。第2波攻撃隊は戦爆連合約150機。200機以上の第1波攻撃隊に比べるとやや小ぶりだが、それでも強大な打撃力があることには変わりがない。こうして飛行甲板をクリアにした後、迎撃用の戦闘機に武装を施して飛行甲板に上げていく。時間との勝負。日本機がTF58上空に到達するまでに何機の戦闘機を発進させらるかが勝敗を左右する。

写真04


USN_F6FTF58西方33海里地点では、米戦闘機隊と日本攻撃隊との交戦が始まっていた。波状攻撃を行う米戦闘機隊は約70機の撃墜を報じたが、こちらも戦闘機24機を失った。そして生き残った日本機の編隊はなおもTF58に近づいて来る。

米空母からは残っていた攻撃機を編制し、戦爆連合72機からなる第3波攻撃隊を発進させた。これで飛行甲板は完全にクリアになる。迎撃戦闘機も続々と発進し、今や空母を守る戦闘機は300機以上となっていた。彼らは日本側攻撃機を繰り返し襲撃し、報じた撃墜戦果は今や120機以上に達した。日本側攻撃隊の戦力は既に半数以下に撃ち減らされていた。その一方、米軍も一部の戦闘機隊が燃料不足を来してきたため、そろそろ空母へ着艦させる必要がある。

写真05


「国籍不明機北西より接近、2波に分かれて機数約100。距離約200海里」

CICに新たな報告が届いた。別の日本軍の攻撃編隊が北西方向から接近中である。現在まさに交戦中の日本機の他に、さらに100機もの日本機来襲とは。さすがにCICに緊張が走った。

USN_BB61TF58上空では、来襲してきた日本機と米戦闘機の激しい空中戦が続いている。米軍機の戦果は170機に達したが、それでも生き残った日本機20~30機が戦闘機の防衛ラインを突破して艦隊上空に達していた。彼らが狙いを付けたのは、前衛の戦艦部隊。通称「バトルライン」である。空母が狙われなかったことは幸いだった。激しい対空砲火が迎え撃つ。しかしVT信管つきの対空砲火はここでは余り威力を発揮できなかった。数機を撃墜したものの、残った日本機は戦艦を狙って爆撃を実施。250kg爆弾1発が新鋭戦艦「アイオワ」に命中した。「アイオワ」の被害は軽微であったが、それでも数十名の死傷者を出してしまう。

写真07


つづく

Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 波まくらいくたびぞ アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(上) New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



写真00


5th Fleet(以下、本作)は、1989年に発売されたSLGで、テーマは1990年前後におけるインド洋での東西両陣営の海上戦闘だ。3枚のマップには、ペルシャ湾からマレー半島までの広大な地域が描かれており、米ソ両軍は勿論、英仏伊豪の西側諸国、インド、イラン、パキスタン、サウジアラビア等の地域主要国、ペルシャ湾岸諸国、イエメン、インドネシア、マレーシア、シンガポール等の中小国、そしてインド洋を航行する日本等の非武装タンカーが登場する。

本作は、フリートシリーズの第4作目で、1Turnは8時間、1Hexは45海里に相当し、1ユニットは艦艇1隻(一部は複数隻)、1個飛行中隊を表す。シナリオは基本シナリオが計9本、他に全部のマップを使用するキャンペーンシナリオが3本用意されている。

今回選んだのはシナリオ4「バルチスタン侵攻」。これはイランとパキスタンに侵攻し、インド洋沿岸に不凍港を手に入れたソ連軍に対し、アメリカを筆頭とする西側諸国が、イラン、パキスンタン、サウジアラビア、オマーン等、現地諸国の支援を得て反撃しようとするものである。参加者は計4名。筆者はソ連軍の水上部隊を担当した。

1~3Turn(第1日目)

フリートシリーズでは、1Turnが8時間で、朝、夕、夜に分かれている。朝のTurnに戦略航空作戦を行う。ソ連軍はペルシャ湾に航空戦力を集中し、航空偵察を実施。航行中のタンカーを次々と発見した。

写真01
写真02


このシナリオでは、イランが西側陣営の味方になっている。そこでソ連軍はイラン中部に残っているイラン空軍の航空基地を攻撃する。Shiraz(3806)基地に対してTu-95HベアがKh-55(AS-15 Kent)巡航ミサイルを発射するも、基地の機能を奪うには至らず。その後にソ連空軍の戦爆連合部隊がShiraz基地を攻撃したが、イラン空軍のF-4ファントム、F-5タイガー2の迎撃を受けて攻撃は失敗する。

ペルシャ湾では、Tu16バジャーC、Tu-22Mバックファイアの編隊がペルシャ湾の西側艦隊を襲う。タンカーを守るサウジアラビア軍護衛艦艇数隻が対艦ミサイルを受けて撃沈される。

写真03


オマーン湾では、戦略偵察によって発見されたソ連潜水艦「Ovseenko」(945型/シエラ型)に対して西側水上部隊が寄ってたかって攻撃を加えてきた。同艦に搭載されている巡航ミサイルの発射を意地でも阻止しようとしてきたわけだ。しかし「Ovseenko」は被弾しながらも沈没を免れて巡航ミサイルを発射し、オマーンのMuscat航空基地にダメージを与えた。さらに対潜攻撃を行ったことで西側の水上部隊が発見されるところとなる。ソ連側水上艦とミサイル原潜「Balkhash」(949型/オスカー型)が長距離ミサイル攻撃を行い、イタリア海軍のフリゲート艦2隻を撃沈した。

写真04


4~6Turn(第2日目)

ソ連軍の輸送船団がパキスタンのジワニ港に向けて近づいてきた。米軍はジワニ(Jiwani)港とイランのチャー・バハール(Chah Bahar)港を破壊すべく、航空攻撃を仕掛けてきた。米軍の狙いは港湾を破壊することでソ連軍輸送船団の入港を阻止すること。輸送船団の入港がソ連側のVP得点源なので、それを断つのが目的であったが、果てさて・・・。

写真05


ソ連艦隊は港に近づいていく。ソ連空母「トビリシ」(現「アドミラル・クズネツォフ」)の戦闘機がCAPの傘でジワニ港をカバーした。しかし米軍の攻撃隊はソ連戦闘機の防空網を突破して攻撃を実施。まずジワニ港を破壊した。

ソ連軍は残ったチャー・バハール港を何としても守り抜くべく「トビリシ」を同港に近づける。米軍も空母艦載機とMucatの海兵隊航空部で連続攻撃を実施する。激しい戦闘の末遂にチャー・バハール港は破壊されてしまう。この時点でソ連軍の輸送船団はほぼ無傷であり、それがチャー・バハール港に入港できないことで、ソ連軍は55VPを失うことになってしまう。

写真06


これにより、NATO側の勝利が確定した・・・・?

結論と感想

と思ったが、納得できないのは筆者の方だ。シナリオの多くは港湾への輸送船の入港が勝利条件になっているが、その目的地の港湾を破壊することでVP獲得が不可能になるのであれば、港湾破壊は「必勝法」になってしまう。天下のVictory Gamesがそんな緩いゲームバランスを認める筈がない。そうだ、そうに決まっている。

とはいえ、私以外のプレイヤーは皆「港が破壊されたのだから、入港してもVP獲得はムリじゃね?」的な主張である。3対1で不利な状況であったが、ここで救いの神が・・・。

「ルールに書いてあるよ、5.2 Suurface Unit Movement」

と、別のプレイヤーから一言。食い入るように該当部分を読むと、果たして以下の文章が見つかった。

Unit may dock in damaged or destroyed ports.(ユニットは損傷又は破壊された港湾に入港できる)

これにより一気に逆転。ソ連側のVPが西側を上回り、ソ連側の勝利が確定した。結果的には輸送船団を守り切ったソ連軍が勝利を収めたことになる。

今回のプレイはプレイ時間約6時間だった。不慣れなプレイヤーもいたが、一応シナリオを完遂できたので良かったと思う。ただ、このような中規模シナリオでもほぼ丸1日かかってしまう点、もう少し何とかしたいとは思う。プレイ時間が伸びる原因は、長考とルール確認時間だ。長考については仕方がない面もあるが、ルール確認時間については工夫次第で短縮できないものか。何か妙案があれば良いのだが・・・。

それにしても久しぶりにフリートシリーズをプレイしてみたが、やはり面白かった。現代海戦を扱ったゲームの中では傑作と評して良いと思う。今度は別のゲームも挑戦してみたい。



Blue Water Navy Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編
海上自衛隊「空母」 いずも&かがマニアックス 海上自衛隊 護衛艦メカニズム図鑑 イカロスMOOK アメリカの航空母艦資料写真集 Cold War Submarines

↑このページのトップヘ