『本土決戦1945 〜オリンピック作戦からコロネット作戦へ〜』(以下、本作)は、2016年にGame Journal誌60号の付録ゲームとして発売された二人用SLGである。テーマは1945〜46年を想定した米軍による日本本土上陸作戦。プレイヤーは連合軍と日本軍に分かれ、仮想の本土決戦をエリア制とカードドリブンを組み合わせたシステムで再現する。ゲームは全8ターンで構成され、連合軍は日本本土の主要部分を制圧しVPを獲得することを目指し、日本軍は「国体」マーカーを秘匿して守り抜くことで勝利を狙う。
本作の歴史的背景には、史実とは異なる複数の分岐が設定されている。鈴木貫太郎が二・二六事件で暗殺されて穏健派が弱体化した結果、陸軍の阿南惟幾が首班指名を受けて首相に就任。阿南内閣はポツダム宣言を拒否。一方の米軍は史実よりも原爆開発が遅延したことで本土上陸作戦ダウンフォールを実行、南九州への上陸を決断する――という世界線である。誌面では、沖縄戦以降の戦局、連合軍の作戦計画、帝国陸海軍の秘密兵器、終戦政治史などが多角的に解説され、ゲームのテーマ性を強く補完している。
ゲームシステムは、エリア制のマップとカードドリブンの手番管理を組み合わせた軽快な構造が特徴である。各ターン、プレイヤーは自軍が支配する基地の数だけカードを選び、連合軍→日本軍の順で手番を交互に実施する。手番では同一エリアの未使用ユニットを「グループ」として選び、移動、通常攻撃、航空攻撃、カードアクションのいずれかを行う。ユニットは行動後に裏返り、原則として1ターンに1回しか行動できない。
戦闘はユニットごとにダイスを振り、攻撃力以下で命中というシンプルな方式で、耐久力に応じて裏返し、退却、除去といった結果が発生する。空母や航空隊は航空戦を実施することができ、航空戦ではより広い範囲を攻撃できる。航空戦力に勝る連合軍の火力投射力を強く表現している。一方日本軍は対空師団やリアクションカードによる迎撃で応戦する。
ゲームスケールは、1ターン約1か月、マップは日本本土を大きく区分したエリア制で、師団規模の陸軍ユニット、空母・戦艦などの艦艇、航空隊やB29が登場する。連合軍は大規模な上陸作戦を展開し、日本軍は分散配置された防衛戦力と基地航空隊で迎え撃つ構図が、過度な複雑さを排して再現されている。
コンポーネントは、198個のカウンター、ハーフマップ2枚、カード32枚、各種マーカー類で構成される。陸軍ユニットは歩兵・戦車・海兵・空挺・対空の5種、艦艇は空母、戦艦、護衛艦艇などが用意されている。航空ユニットは通常の航空部隊の他、B29部隊が登場する。また、震電・秋水・伊400・回天などの秘密兵器を扱うオプションルールも用意され、リプレイ性を高めている。
総じて本作は、重厚なテーマ性と遊びやすいシステムを両立した比較的シンプルなウォーゲームだ。連合軍は圧倒的な航空、海軍力を背景に上陸作戦を展開し、日本軍は限られた戦力とカード運用で国体を守り抜く。歴史IFのドラマ性と、陸海空の統合戦をシンプルな処理で表現したゲームデザインが魅力であり、誌面の豊富な特集記事と合わせて、歴史的興味とゲーム的興奮の両方を味わえる作品となっている。
今回、本作を対人戦でプレイしてみた。うp主は連合軍を担当する。
1Turn(1945年11月)
日向灘沖に米英の機動部隊が出現する。その戦力は高速空母14隻、軽空母8隻、戦艦24隻などからなり、まさに史上最強の艦隊であった。その艦隊に護衛されて米海兵隊及び陸軍の計9個師団が南九州一帯に上陸する。日本軍は激しく迎撃したが、米上陸部隊はそのまま南九州に橋頭保を築いた。米軍は空母艦載機と沖縄から発進する基地航空隊の攻撃で南九州に残った日本軍の守備隊を撃破。南九州一帯は連合軍の支配下となった。勢いに乗る米軍地上部隊は九州北部にも侵攻。日本軍と交戦を開始する。
2Turn(1945年12月)
米機動部隊は豊後水道を超えて瀬戸内海に進出。九州北部一帯に対して航空攻撃を実施する。日本軍はそれに対して航空機による夜間攻撃を敢行。軽空母1ユニット(2隻)を撃破した。損害に関わらず空襲を継続。激しい攻撃によって九州北部の日本軍を壊滅。連合軍が九州北部を支配した。これにより、九州一帯は連合軍の支配するところとなった。九州北部には日本軍の基地がある。このゲーム、自軍の支配している基地の数が入手できるカード枚数となる。ゲーム開始時は日米共に6カ所ずつだが、米軍が日本軍の基地を1カ所占領する毎に米軍のカード枚数が1枚増加し、日本軍のカード枚数が1枚減少する。このゲームではカードが部隊行動のエンジンになるので、一度米軍が日本軍の基地を占領すると、その後加速度的に状況が進展(日本軍から見れば悪化)する可能性がある。
3Turn(1946年1月)
年が明けて昭和21年。大東亜戦争も5年目に入っている。九州全域を制圧した連合軍は基地航空部隊を北部九州に進出させた。また瀬戸内海に布陣する米機動部隊は山陽地区一帯に攻撃し日本軍を制圧する。そこへ戦車2個師団を含む米軍4個師団が瀬戸内海を経て上陸を敢行する。例によって航空攻撃で日本軍を排除して山陽地区一帯を占領。これにより連合軍は2個目の日本軍基地を占領した。4Turn(1946年2月)
山陽地区から東へ向かった米陸軍部隊は、近畿地方に進入した。例によって空母艦載機と基地航空隊による攻撃で日本側の守備隊撃破を図る連合軍。しかしさすがに近畿地方は日本の中枢部なので、日本軍も隣接する東海地方や北陸地方から増援部隊を送り込んで激しく抵抗している。5Turn(1946年3月)
遂に米軍は近畿地方を制圧した。これにより日本軍のカードは3枚、連合軍のカード9枚になる。残り3Turnだが、この時点で米軍による東海、北陸地区への進攻を阻止することはほぼ不可能となった。VP的にも連合軍の勝利がほぼ確実になったため、この時点でゲーム終了とした。ちなみにプレイ時間はセットアップを含めて約2時間であった。感想
今回の対戦はかなり一方的な展開になってしまった。南九州上陸から九州全域制圧、さらに山陽、近畿へと、ほぼ連合軍の理想的なルートをそのままなぞる形で進んでしまい、日本軍側には相当厳しい内容だったと思う。ただ、これは対戦相手氏の判断が悪かったというより、本作そのものが日本軍にとって相当にハードなゲームであることを改めて実感した。日本軍にとっては基地を1つ失うたびにカード格差が広がり、その差がさらに次の基地喪失を呼び込む。この“負の連鎖”は日本軍にとって本当に重い。今回も九州北部の基地が落ちた瞬間、こちらのカード枚数が増え、日本軍の選択肢が一気に狭まった。そこから先は、どうしても流れが止まらない。
とはいえ、対戦相手氏の日本軍は厳しい状況の中でよく粘っていたと思う。夜間攻撃で軽空母を沈めた場面など、光るプレイもあった。恐らく日本軍としてのベストな展開は、南九州での持久戦法だと思う。連合軍による最初の基地奪取を一手でも遅らせていれば、カード格差の広がり方はもっと緩やかになり、近畿以東での攻防にも別の展開が見えたかもしれない。
ゲーム全体の感想としては、プレイの軽さとテンポの良さは素晴らしい。2時間ほどでここまで濃密な戦略ゲームが遊べるのは貴重だ。ただし、今回のように展開が一方的になると、後半はどうしても“作業感”が出てしまい、プレイし続けるのがやや辛くなるのも事実だ。
そしてもう一つ、ゲーム的抽象化とはいえ、空母艦隊が何か月も瀬戸内海に居座り続けるという状況には、やはり違和感を禁じ得ない。史実の運用を知っていると、「いや、補給どうしてるの?」とツッコミたくなる場面がどうしても出てくる。もちろんゲームとして割り切るべき部分ではあるが、テーマ性が強い作品だけに、そこが少し気になった。
総じて、本作は“短時間で濃いIF戦を味わえる”という点で非常に魅力的だが、日本軍側の難易度は高く、展開次第では一方的になりやすい。次に日本軍を担当する人は、ぜひ南九州での遅滞戦術を徹底し、連合軍の加速を少しでも抑え込んでみてほしい。


























