Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGだ。テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。
「え、マリアナ沖海戦?、バランス悪そう」
その通り。そこでこのゲームは一捻りしていて、米軍の立場によるソロプレイゲームだ。なるほど、米軍なら勝って当然だし、ソロプレイゲームで「ちょっと苦戦したかな?」と思うぐらい苦戦して、最後は圧勝、というパターンは気持ちいいかもしれない。
という訳で早速プレイしてみた。
前回までの展開は-->こちら
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その間、TF58本隊はマリアナ諸島に向けて突っ込んできた日本の巡洋艦部隊を叩く。戦爆連合180機(15ポイント)を2波に分けて送り込み、重巡1隻撃沈、1隻を撃破したが、日本艦隊を壊滅させるには至らなかった。
下の写真で「3」と書かれているのが撃破された日本空母部隊、「5」が爆撃された巡洋艦隊である。
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最終Turnである。薄暮の中、攻撃隊は続々と母艦に帰ってきた。日没後の着艦となるので事故の発生が懸念されたが、幸い全機無事着艦できた。同じ頃、友軍潜水艦が日本空母1隻を撃沈したという報告が入った。これは後の分析により改造空母「千歳」であることが判明した。これにより、今回の戦いで撃沈した日本空母は、正規空母3隻、改造空母4隻の計7隻となった。結果
米軍の戦果
撃沈:正規空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」、改造空母「瑞鳳」「龍鳳」「千代田」「千歳」中破:改造空母「隼鷹」
撃墜:424機(53ポイント)
その他:巡洋艦2ユニットに合計16ヒット(3隻撃沈ぐらいか?)
米軍の損害
沈没:潜水艦「フィンバック」航空機損失:F6F:120機(10ポイント)、SB2C/SBD:24機(2ポイント)、TBF/TBM:48機(4ポイント)
140VP獲得で、「米軍の圧倒的勝利」となった。ルール間違っていないか、少し不安
感想
本文では触れなかった日本水上部隊について。このゲーム、日本軍の水上部隊に与えた損害はVP計上の対象とならない。ただし、サイパン近海に突入し、盤外突破した日本艦についてはマイナスVPの対象となる。今回のプレイでは、Turn数の関係上日本戦艦が絶対に盤外まで届かないことが判明した時点で、攻撃の重点を日本空母に指向した。だからゲーム終了時には戦艦「武蔵」「金剛」「榛名」がサイパン島のHexに到達していた。ゲームの勝敗には関係ないが、突如サイパン近海に姿を見せた日本戦艦の姿を見て、サイパン守備隊の日本兵や南雲中将たちは狂喜したかもしれない。
別のシナリオでは、2日間に渡る大海戦を再現するので、その場合はサイパンを目指す日本艦隊を無視できなくなる。そうなると、4ヶ月後にハルゼーを悩ますことになった自体がマリアナ近海で現出するかも・・・。あーあ、これは2日間シナリオもプレイしなければ・・・。
ゲーム自体は非常に面白かった。ソロプレイ専用の空母戦ゲームということでルールはお世辞にも簡単とは言えず、航空機の運用や空中戦、対艦攻撃、索敵、日本軍の行動など、個々のルールをステップバイステップで覚えていく必要がある。筆者もルールを読み始めてから実際にこのシナリオをプレイするのに漕ぎ着けるまでに10日間を要した。時間は有り余っている早期退職者なのにね・・・。
実際にプレイしてみると、索敵や日本艦隊の行動に関するルールが実にシステマティックに組み込まれているのが分かる。未発見の日本空母からの航空攻撃、徐々に明らかになる敵の編制など、「まるでブラインドサーチの対戦型空母戦ゲームをプレイしているような」感覚を味わうことができる。さらにソロプレイ専用ゲームなので、対戦型ゲームでは省略されることの多い細かい航空機運用や扇形索敵が自然な形で再現できるのも良い。ルール量が多いのは確かだが、ゲームの手順が綺麗に整理されているので、Turnシークエンス表を参照しつつ該当するルールを丹念に読めば、それほど悩むことなくプレイできる。筆者の場合は英文読解力が乏しいのでルールを読むのに苦労したが(Googleレンズさん、本当にありがとう)、慣れればもっとサクサクプレイできると思う。
今回プレイしたのはヒストリカルシナリオで、これは史実通りの戦力でマリアナ沖海戦を戦うというもの。当然ながら史実通りの戦力比で戦えば米軍が大負けすることはまずない。だからある意味「ヌルイ」ゲームになる。だからもっとシビアなゲームを楽しみたい方のため、2つのバリエーションが用意されている。
1つは「日本軍の追加艦船」。これを適用すると、戦艦「扶桑」「山城」「陸奥」、航空戦艦「伊勢」「日向」、そして空母「雲龍」「天城」「葛城」「信濃」が登場してくる可能性がある。さらに日本軍の登場兵力上限も増えるので、ヒストリカルシナリオよりはやや厳しいゲームになる。「信濃」なんてヒットポイントが16もあるので、空母2~3隻分の耐久力がある。
もう1つは「太平洋大空母戦」シナリオ。これは先の「信濃」や「伊勢」だけではなく、「赤城」以下の4隻や「比叡」「霧島」等、既に沈んだはずの日本空母や戦艦が海の底から蘇ってきたというシナリオ。しかもパイロットの練度が1942年レベルということで、本作では最も難易度の高いシナリオだ。ここまで来ると最早「ファンタジー」なので、筆者としてはあまりプレイ意欲は沸かないが、「日本海軍大勝利」を夢見るプレイヤーにとってはプレイする価値のあるシナリオかもしれない。
ちなみにこのシナリオでは、米軍側にも8隻の空母としてCV-5 Yorktownが登場するのだが、それならCV-3 Saratogaか、CV-11 Intrepidにして欲しかったなぁ。だってCV-10 Yorktownが既に存在しているのに、CV-5 Yorktownってちょっと変でしょ?。先の「陸奥」(この時期「陸奥」は既に海の底)の件といい、こういう所のセンスがちょっと気になるんだよなぁ・・・。
今回は選択ルールを一切使用せず、基本ルールのみでプレイしてみた。しかしそのためにやや不自然な展開になったきらいもある。例えば日本空母が分散配備で接近してきたことだ。後のレイテ海戦では日本軍は分散配備を採ったので、米軍の立場から見ればマリアナ戦でも日本軍が分散してきた可能性はある。しかし史実を知る我々としては、やはり違和感を禁じ得ない。過度の分散配備を抑制する選択ルールがあるので、次回は採用してみたい。また水上戦闘や夜間作戦、さらに日本艦隊によるサイパン近海への突入作戦実施など、試してみたい状況もいくつかある。次回のプレイの際には、上記を加味したルールを追加してプレイしてみたい。
何はともあれ、このゲーム、空母戦ゲームとしては良く出来た作品である。空母戦に興味がある向きには是非プレイしてみてほしい1作である。







