もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 太平洋戦争

CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGだ。テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

「え、マリアナ沖海戦?、バランス悪そう」

その通り。そこでこのゲームは一捻りしていて、米軍の立場によるソロプレイゲームだ。なるほど、米軍なら勝って当然だし、ソロプレイゲームで「ちょっと苦戦したかな?」と思うぐらい苦戦して、最後は圧勝、というパターンは気持ちいいかもしれない。

という訳で早速プレイしてみた。

前回までの展開は-->こちら

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Carrier Battle - Philippine Sea USN_SB2C第2波攻撃隊が日本艦隊を捉えた。対空砲火でTBF12機を失うも、爆弾2発以上を「翔鶴」に命中させてこれを撃沈。改造空母「飛鷹」にも爆弾3発を命中させて発着能力を奪ったが、大破させるには至らなかった。

その間、TF58本隊はマリアナ諸島に向けて突っ込んできた日本の巡洋艦部隊を叩く。戦爆連合180機(15ポイント)を2波に分けて送り込み、重巡1隻撃沈、1隻を撃破したが、日本艦隊を壊滅させるには至らなかった。
下の写真で「3」と書かれているのが撃破された日本空母部隊、「5」が爆撃された巡洋艦隊である。

写真11


1850

最終Turnである。薄暮の中、攻撃隊は続々と母艦に帰ってきた。日没後の着艦となるので事故の発生が懸念されたが、幸い全機無事着艦できた。同じ頃、友軍潜水艦が日本空母1隻を撃沈したという報告が入った。これは後の分析により改造空母「千歳」であることが判明した。これにより、今回の戦いで撃沈した日本空母は、正規空母3隻、改造空母4隻の計7隻となった。

SB2C_in_landing_USS_YORKTOWN


結果

米軍の戦果

撃沈:正規空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」、改造空母「瑞鳳」「龍鳳」「千代田」「千歳」
中破:改造空母「隼鷹」
撃墜:424機(53ポイント)
その他:巡洋艦2ユニットに合計16ヒット(3隻撃沈ぐらいか?)

米軍の損害

沈没:潜水艦「フィンバック」
航空機損失:F6F:120機(10ポイント)、SB2C/SBD:24機(2ポイント)、TBF/TBM:48機(4ポイント)

140VP獲得で、「米軍の圧倒的勝利」となった。ルール間違っていないか、少し不安

感想

本文では触れなかった日本水上部隊について。このゲーム、日本軍の水上部隊に与えた損害はVP計上の対象とならない。ただし、サイパン近海に突入し、盤外突破した日本艦についてはマイナスVPの対象となる。
今回のプレイでは、Turn数の関係上日本戦艦が絶対に盤外まで届かないことが判明した時点で、攻撃の重点を日本空母に指向した。だからゲーム終了時には戦艦「武蔵」「金剛」「榛名」がサイパン島のHexに到達していた。ゲームの勝敗には関係ないが、突如サイパン近海に姿を見せた日本戦艦の姿を見て、サイパン守備隊の日本兵や南雲中将たちは狂喜したかもしれない。

写真12


別のシナリオでは、2日間に渡る大海戦を再現するので、その場合はサイパンを目指す日本艦隊を無視できなくなる。そうなると、4ヶ月後にハルゼーを悩ますことになった自体がマリアナ近海で現出するかも・・・。あーあ、これは2日間シナリオもプレイしなければ・・・。

ゲーム自体は非常に面白かった。ソロプレイ専用の空母戦ゲームということでルールはお世辞にも簡単とは言えず、航空機の運用や空中戦、対艦攻撃、索敵、日本軍の行動など、個々のルールをステップバイステップで覚えていく必要がある。筆者もルールを読み始めてから実際にこのシナリオをプレイするのに漕ぎ着けるまでに10日間を要した。時間は有り余っている早期退職者なのにね・・・。

実際にプレイしてみると、索敵や日本艦隊の行動に関するルールが実にシステマティックに組み込まれているのが分かる。未発見の日本空母からの航空攻撃、徐々に明らかになる敵の編制など、「まるでブラインドサーチの対戦型空母戦ゲームをプレイしているような」感覚を味わうことができる。さらにソロプレイ専用ゲームなので、対戦型ゲームでは省略されることの多い細かい航空機運用や扇形索敵が自然な形で再現できるのも良い。ルール量が多いのは確かだが、ゲームの手順が綺麗に整理されているので、Turnシークエンス表を参照しつつ該当するルールを丹念に読めば、それほど悩むことなくプレイできる。筆者の場合は英文読解力が乏しいのでルールを読むのに苦労したが(Googleレンズさん、本当にありがとう)、慣れればもっとサクサクプレイできると思う。

今回プレイしたのはヒストリカルシナリオで、これは史実通りの戦力でマリアナ沖海戦を戦うというもの。当然ながら史実通りの戦力比で戦えば米軍が大負けすることはまずない。だからある意味「ヌルイ」ゲームになる。だからもっとシビアなゲームを楽しみたい方のため、2つのバリエーションが用意されている。
1つは「日本軍の追加艦船」。これを適用すると、戦艦「扶桑」「山城」「陸奥」、航空戦艦「伊勢」「日向」、そして空母「雲龍」「天城」「葛城」「信濃」が登場してくる可能性がある。さらに日本軍の登場兵力上限も増えるので、ヒストリカルシナリオよりはやや厳しいゲームになる。「信濃」なんてヒットポイントが16もあるので、空母2~3隻分の耐久力がある。

もう1つは「太平洋大空母戦」シナリオ。これは先の「信濃」や「伊勢」だけではなく、「赤城」以下の4隻や「比叡」「霧島」等、既に沈んだはずの日本空母や戦艦が海の底から蘇ってきたというシナリオ。しかもパイロットの練度が1942年レベルということで、本作では最も難易度の高いシナリオだ。ここまで来ると最早「ファンタジー」なので、筆者としてはあまりプレイ意欲は沸かないが、「日本海軍大勝利」を夢見るプレイヤーにとってはプレイする価値のあるシナリオかもしれない。
ちなみにこのシナリオでは、米軍側にも8隻の空母としてCV-5 Yorktownが登場するのだが、それならCV-3 Saratogaか、CV-11 Intrepidにして欲しかったなぁ。だってCV-10 Yorktownが既に存在しているのに、CV-5 Yorktownってちょっと変でしょ?。先の「陸奥」(この時期「陸奥」は既に海の底)の件といい、こういう所のセンスがちょっと気になるんだよなぁ・・・。

今回は選択ルールを一切使用せず、基本ルールのみでプレイしてみた。しかしそのためにやや不自然な展開になったきらいもある。例えば日本空母が分散配備で接近してきたことだ。後のレイテ海戦では日本軍は分散配備を採ったので、米軍の立場から見ればマリアナ戦でも日本軍が分散してきた可能性はある。しかし史実を知る我々としては、やはり違和感を禁じ得ない。過度の分散配備を抑制する選択ルールがあるので、次回は採用してみたい。また水上戦闘や夜間作戦、さらに日本艦隊によるサイパン近海への突入作戦実施など、試してみたい状況もいくつかある。次回のプレイの際には、上記を加味したルールを追加してプレイしてみたい。

何はともあれ、このゲーム、空母戦ゲームとしては良く出来た作品である。空母戦に興味がある向きには是非プレイしてみてほしい1作である。

1944米空母部隊クエゼリン


Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 機動部隊 How Carrier Fought New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGだ。テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

「え、マリアナ沖海戦?、バランス悪そう」

その通り。そこでこのゲームは一捻りしていて、米軍の立場によるソロプレイゲームだ。なるほど、米軍なら勝って当然だし、ソロプレイゲームで「ちょっと苦戦したかな?」と思うぐらい苦戦して、最後は圧勝、というパターンは気持ちいいかもしれない。

という訳で早速プレイしてみた。

前回までの展開は-->こちら

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Carrier Battle - Philippine Sea IJN_AirRaid_3-Aレーダーが南西方向から近づいて来る新たな日本機の攻撃隊を探知した。機数は約150機(18ポイント)。北から近づく150機と合わせると、300機近い日本機が異なる方向からTF58に近づいてきている。

写真05


現在上空警戒中のヘルキャットは約200機(17ポイント)。しかしその中の一部は燃料不足をきたしており、速やかに空母へ着艦する必要がある。空母艦上でも着艦したヘルキャットに再武装して発進を急がしているが、果たして日本機の迎撃に間に合うかどうか・・・。

これまでのように全機撃墜はとても無理なので、可能な限り攻撃隊を撃ち減らし、数を減らした上で対空砲火に期待するという戦法を採ることにした。また燃料にも余裕がない状態なので、ヘルキャット隊はTF58の近くに集まって日本機を待つことにする。

USN_F6F接近してきた日本軍大編隊に対してヘルキャット隊は個別に迎撃を開始する。最初の交戦では日本機の大半が防衛ラインを突破してTF58上空に進入してくる。TF58からはTG58.3、TG58.4の軽空母4隻から約50機(4ポイント)のヘルキャットが増援として発進していく。この時点での上空援護機は200機弱(16ポイント)。しかしその半数以上は燃料欠乏状態である。さらに約50機(4ポイント)のヘルキャットが発進。これで上空援護機は240機(20ポイント)となったが、その半数以上が燃料欠乏。燃料が十分に残っているのは、緊急発進した約100機(8ポイント)だけ。しかしヘルキャット隊の奮戦によって、日本側攻撃隊の半数以上を撃墜した。
USN_BB62残った日本機は約130機(16ポイント)がヘルキャットの防衛ラインを突破し、TF58上空に迫る。しかし日本側の攻撃隊は、空母部隊前衛を守るTG58.7(バトルライン)の対空砲火を浴びて半数以上が撃墜破され、残った数機が空母群に突入したものの、空母群自身の対空砲火がその全てを撃墜又は撃退し、遂に1機の突破も許さなかった。もちろんヘルキャット隊も無傷とはいかず、36機(3ポイント)が撃墜され、さらに着艦前の燃料不足で48機(4ポイント)が海上に不時着した。

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IJN_CV_Zuikaku辛くも日本機の攻撃を切り抜けたので、各空母では燃料不足を来した戦闘機隊や、先に日本艦隊を攻撃した攻撃隊の収容を開始する。その一方で別の攻撃隊が日本艦隊の残存兵力を撃破すべく発進していく。護衛を伴わない艦爆、艦攻約100機(8ポイント)は日本艦隊を発見。改造空母「瑞鳳」「龍鳳」を撃沈した。日本艦隊にはまだ大破した「瑞鶴」が残っていたが、「瑞鶴」は損傷のため艦隊から取り残されて単独で航行している。

その間、少数の日本機がTF58に飛来したが、上空警戒中のヘルキャットは、これを難なく始末した。

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USN_TG58_2米艦隊は艦隊を2つに分離した。一方は南に向って新たな日本軍を追撃するグループ、もう一方は北に向かった攻撃隊を収容するグループである。前者はTG58.2、TG58.3の2個空母戦闘グループ。空母の隻数は計8隻。後者は残りのTF58残余で、2個空母戦闘グループと戦艦部隊(バトルライン)である。艦隊を分離すると戦闘機の集中運用に支障を来し、さらにバトルラインの対空火力を十分に活用できないなど、対空防御力が下がるのであまり望ましくはないが、新たな敵に向かう機会を失う訳にはいかない。

米軍の攻撃隊は単独行動中の「瑞鶴」を撃沈した。これで今回の海戦で撃沈した日本空母の隻数は計4隻となった。

米軍は南東から北西へ向けた広い海域に索敵機を発進させ、新たな敵艦隊を求める。

写真08


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Z_Intel_L2_4+CV索敵機が新たな日本艦隊を発見した。空母4隻を含む空母機動部隊である。位置はTG58.2/3の西方200海里(6Hex)。攻撃を行うのには手頃な位置だ。午後に入っていたが日没までにはまだ十分時間がある。TG58.2/3から直ちに攻撃隊が発進する。

F6F攻撃隊発進


USN_AS8第1波は戦爆連合120機(10ポイント)。護衛戦闘機が僅か12機(1ポイント)というのが些か寂しいが、艦隊防空を疎かにはできないので仕方がない。朝からの戦闘で既に120機(10ポイント)のヘルキャットを失っており、全保有戦闘機の25%以上が失われているのだ(望楼作戦時のフレッチャーのような心境?)。

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USN_AS7TG58.2/3からは第2波攻撃隊が発進する。戦爆連合96機(8ポイント)で、護衛戦闘機は24機(2ポイント)だ。相変わらず護衛が手薄だが、度重なる戦闘で日本側の消耗も激しいので、CAP機自体が少ないと想定している。なんせこれまで報じた戦果を集計・分析すると、撃墜した日本機の総数は400機以上(51ポイント)にも達するという(今までは触れていなかったが、小規模な日本軍の攻撃隊が五月雨式に米空母攻撃に飛来していた)。

IJN_CV_Shokaku先に発進した第1波攻撃隊が西に向けて航行中の日本空母部隊を捉えた。正規空母「翔鶴」、改造空母「隼鷹」「飛鷹」「千代田」、戦艦「大和」「長門」、その他からなる部隊である。日本軍は空母部隊を2つに分けて、米空母を挟み撃ちにする戦術だったのだろうか?

折しも、日本空母の艦上では、攻撃から帰還していた攻撃隊が爆装して準備中であった。まさに絶好のタイミングだ。

改造空母「千代田」に1000ポンド爆弾2発が命中。大爆発を起こした「千代田」は瞬く間に沈没する。最後の正規空母「翔鶴」には数発の爆弾と魚雷1本が命中。「翔鶴」は航行不能となり、その場に停止する。攻撃隊の損害は、対空砲火により12機を失う。

写真10


つづく

Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 機動部隊 How Carrier Fought New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



CarrierBattle表紙


Carrier Battle - Philippine Sea(以下、本作)は、2023年に米国Compass Games社から発売されたSLGだ。テーマは1944年6月のマリアナ沖海戦だ。

「え、マリアナ沖海戦?、バランス悪そう」

その通り。そこでこのゲームは一捻りしていて、米軍の立場によるソロプレイゲームだ。なるほど、米軍なら勝って当然だし、ソロプレイゲームで「ちょっと苦戦したかな?」と思うぐらい苦戦して、最後は圧勝、というパターンは気持ちいいかもしれない。

今回プレイしたシナリオは、シナリオ6「The Battle of 19 June」。1944年6月19日の戦いを再現したシナリオだ。オーダーオブバトルは史実通り。ただし史実通りの戦果だと「不完全な勝利」と判定され、ちょっと寂しい。しかも史実の戦果は潜水艦による「ラッキーパンチ」がヒットしたという言わば「幸運な結果」に過ぎない。従ってこのシナリオで勝利を目指すためには、史実の如く守っているだけでは不十分で、積極的な航空攻撃を仕掛けて日本空母を叩く必要がある。とはいえ、日本軍もなかなか巧みだ。彼らはアウトレンジ戦法を取っているので、なかなか間合いを詰める事が難しい。また攻撃だけにかまけていると、日本機の反撃によって味方空母に思わぬ損害が出る可能性もある。このゲーム、日本機の攻撃力はなかなか侮れないのだ。

という訳でどうなるかわからないが、とにかく始めてみようと思う。

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Carrier Battle - Philippine Sea USN_TF58このシナリオでは、米軍の戦力は第58任務部隊(以下、TF58)の全戦力で、4個空母群(TG58.1~TG58.4)とバトルラインと呼ばれる戦艦部隊(TG58.7)の5個グループよりなる。このバトルラインが結構有難い存在で、日本機の多くはこのバトルラインから対空射撃を浴びた上で空母群に迫ってくるか、あるいはバトルラインに目を奪われて空母群ではなく戦艦群を攻撃してきたりする。とはいえ、日本機の中には狡猾な奴らもいて、彼らはバトルラインを避けて一直線に空母群に迫ってくることもある。

USN_SB2CこのTurn、まだ日本艦隊の出方がわからないので、まずは北方に索敵機を発進させる。西や南にはまだ日本艦隊の情報(Forceマーカーのこと)が近くにいないので、索敵は行わない。また日本機の来襲に備えて約200機の戦闘機を上空警戒(CAP)に上げた。そのうちTG58.3を発進した約50機は近くのグアム島に向かい、グアム島に対する制圧任務につく。

写真01


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Z_AC_Guam事態はいきなり目まぐるしく動いてきた。
まずグアム島から約40機の日本機が発進してこちらに向かってきたのである。グアム島上空で警戒していた約50機のヘルキャット隊が発進直後の日本機を襲い、半数以上を撃ち落としたが、生き残った20機弱の日本機は、TF58に向けて向かってきた。

さらにTF58のレーダーが、北方から近づく国籍不明機の編隊を捉えた。機数は約40機(5ポイント)である。ちなみにこのゲーム、日本機は1ポイントが約8機、米軍機が1ポイントが約12機を表す。上空警戒に当たっていたヘルキャット約100機が迎撃に向かう。

さらに索敵機からも報告が入る。

「敵空母艦隊らしきものみゆ、兵力不明」
「敵の位置、TF58の北方約130海里(4Hex)」
「130海里?、近い、近いじゃないか」

参謀達の声が飛ぶ。

USN_TBF飛来してきた日本機も気になるが、敵空母への攻撃も躊躇している暇はない。攻撃第一陣として戦爆連合約70機(6ポイント)からなる攻撃隊が「バンカーヒル」「レキシントン」「エンタープライズ」の各空母から発進して日本艦隊に向かう。上空援護用としてさらに約150機(13ポイント)のヘルキャットが増援としてCAPに上がっていく。これで上空警戒の戦闘機は、TF58付近に約300機、さらにグアム島警戒中の約50機の計約350機となった。

Curtiss_SB2C_take_off


TF58の北方約67海里では、米戦闘機と日本側攻撃隊との交戦が始まっている。日本機はどうやら護衛を伴っていなかったらしく、米戦闘機は「七面鳥撃ち」よろしく日本機を弄ぶが、撃墜したのは約15機(2ポイント)のみで、半数以上がなおもTF58に向ってくる。

南方グアム島方面では、グアム島を発進してきた日本機に対して追撃を行った米戦闘機が、残存機を全て撃墜した。しかし度重なる空戦により燃料残量が乏しくなった戦闘機隊がトボトボと帰路についてくる。

写真02


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USN_AS5攻撃隊の本命、戦爆連合約300機(25ポイント)が空母を発進し、2つのグループに分かれて日本艦隊に向かう。
日本側の第1波攻撃隊はTF58上空にまで到達していたが、そこで米戦闘機隊の袋叩きにあって壊滅する。

潜水艦「フィンバック」が、別の方向から「敵空母らしきものを雷撃、魚雷1本命中」との報告を送ってきた。慶事である。

レーダーが北西から接近してくる日本軍の第2波攻撃隊を捉えた。機数は60機弱(7ポイント)。ただちに上空警戒中のヘルキャット約100機が迎撃に向かう。

IJN_CV_Taiho攻撃隊の方は早くも日本艦隊上空に到達した。日本艦隊は、正規空母「大鳳」「瑞鶴」、改造空母「瑞鳳」「龍鳳」、戦艦「金剛」「榛名」「武蔵」、その他からなる有力な部隊だ。日本空母部隊の主力と言って良い。

写真03


良い敵、ござんなるかな

最初に突入した戦爆連合約70機は、日本機の迎撃と対空砲火によって半数以上を撃墜されて戦果なし。引き続いて約300機の米艦載機が2グループに分かれて日本艦隊に殺到する。

19440620_マリアナ沖海戦


最初のグループの攻撃によって空母「瑞鶴」が大破して行き足が止まる。旗艦空母「大鳳」にも複数の命中弾により損傷する。続いて突入してきた第2グループは、大破した「瑞鶴」を無視して「大鳳」と改造空母「瑞鳳」を攻撃。「大鳳」は多数の魚雷、爆弾を受けて沈没。「瑞鳳」も被弾により小被害を被る。

正規空母1隻撃沈、同1隻大破、改造空母1隻小破

合計400機近い大攻撃隊の戦果としては些か寂しい感じもするが、それでも日本艦隊に痛打を与えたことは確かだった。

IJN_AirRaid_1-Aしかし喜んでばかりもいられない。たった今攻撃した日本艦隊を発進したと思われる約150機(18ポイント)の攻撃隊がTF58に迫ってきたのだ。今までのとはわけが違う、日本空母機の本格的な攻撃である。

先に発見していた日本軍第2波攻撃隊がTF58上空に到達した。これを130機以上(11ポイント)のヘルキャットが迎え撃つ。日本側攻撃隊の大半はヘルキャットの餌食となり、僅かに生き残った数機も、空母艦隊前衛を固めていたTG58.7(バトルライン)の対空砲火を受けて四散した。

写真04


つづく

Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942
マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 機動部隊 How Carrier Fought New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944



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Imperial Sunset(以下、本作)は、ゲーム付雑誌であるAgainst the Odds誌の付録ゲームで、2006年に発売された作品だ。テーマはレイテ沖海戦。レイテ海戦のほぼ全体を1Hex=25海里、1Turn=6時間、1ユニット=巡洋艦以上1隻、駆逐艦以下数隻、航空機は10~30機程度というスケールで再現する。



今回、本作をプレイしてみることにした。シナリオは「歴史的シナリオ」で、筆者は連合軍を担当する。

前回までの流れは --> こちらをご参照下さい。

写真06


10月25日(章前)

USN_BB_Iowa襲撃を終えた栗田艦隊は、戦果を上げたと判断してスリガオ海峡を南下していく。一方のオルデンドルフ部隊も大損害を受けてレイテ湾奥深くに下がっていく。しかし日本軍はまだ兵力が残っていた。西村部隊と志摩部隊が合同した戦艦2隻、重巡3隻、駆逐艦8隻からなる部隊だ。しかし米軍側にも新鋭の兵力があった。最新鋭戦艦「アイオワ」「ニュージャージ」を含む第34機動部隊である。その兵力は、戦艦6隻、重巡2隻、軽巡2隻、駆逐艦20隻だ。圧倒的兵力を持った米軍は、水上戦の勝利を確信していた。

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しかし・・・・

IJN_CA_Ashigaraまたもや煩わしい日本の駆逐艦が遠距離から酸素魚雷を放ってきた。誇り高き新鋭戦艦「アイオワ」そして「ニュージャージ」に魚雷が1本ずつ命中する。両艦とも戦闘能力に支障はなかったものの、最新鋭戦艦が傷物にされたことは米軍プレイヤーの自尊心を傷つけた。さらに「サウスダコタ」「ワシントン」「マサチューセッツ」にも魚雷が命中する。なんだか魚雷の命中率が良すぎないか・・・?。
怒りに燃えた米艦隊は激しい砲撃で反撃をする。さっさと逃げた旧式戦艦「山城」「扶桑」こそ逃がしたものの、3隻の重巡「最上」「那智」「足柄」と1隻の軽巡「阿武隈」を撃沈。8隻いた駆逐艦も半数の4隻を撃沈した。日本艦隊に大損害を与えて撃退したのは良かったが、それでも新鋭戦艦5隻も傷物にされたことで、勝利の美酒に酔えない米軍プレイヤーなのであった。

USN_Air_Essex_68一通り襲撃を終えた日本艦隊は、スリガオ海峡を南下して帰途につく。報復の怒りに燃える米機動部隊がそれを追撃する。大破していた戦艦「金剛」「長門」は航空攻撃に耐えられずに沈没。これまで比較的損害の小さかった「大和」にも数発の命中弾があった。が、この巨大な戦艦は、爆撃を受けて僅かに速度が低下しただけであった。

写真09


IJN_Air_Zuikaku_312一方日本軍も航空攻撃で米機動部隊を襲う。戦艦を引き抜かれて直掩兵力が弱まった米機動部隊を第2航空艦隊と小沢機動部隊の艦載機が攻撃する。米軍のCAP隊と対空砲火はこの時も碌な仕事をしなかった。

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IJN_Air_Kamikaze軽空母「インデペンデンス」が複数の魚雷・爆弾の命中を受けて撃沈された。これで米軍の損失空母は2隻目になる。さらにその後はじめてのカミカゼ特攻機が米機動部隊を襲った。空母「フランクリン」に1機が命中。「フランクリン」の損害が比較的軽微だったのが不幸中の幸いだった。

本作では3隊のカミカゼ特攻隊が登場する。カミカゼ特攻隊はCAPや対空砲火の影響を全く受けず、攻撃力9で狙った艦を攻撃できる。さらに自動的に致命的命中が得られる。その威力は防御力8の正規空母ですら一撃で撃沈できる可能性があり、防御力4の軽空母や同3の護衛空母であればかなりの確率で一撃の元に葬り去ることができる。。

結果

時間の関係でここでゲーム終了とした。全12Turn中第7Turnの途中であった。プレイ時間はセットアップを含めて約8時間である。現時点における両軍の損害は以下の通りだ。

日本軍の損害

沈没:戦艦「武蔵」「長門」「金剛」、重巡「利根」「筑摩」「熊野」「最上」「那智」「足柄」、軽巡「阿武隈」、駆逐艦6隻
大破:重巡「鈴谷」「羽黒」
中破:戦艦「山城」、軽巡「能代」「矢矧」
小破:戦艦「大和」「榛名」、重巡「妙高」「鳥海」

連合軍の損害

沈没:戦艦「ウェストバージニア」、軽空母「インデペンデンス「ラングレー」、駆逐艦2隻
大破:戦艦「メリーランド」「カリフォルニア」
中破:戦艦「テネシー」「サウスダコタ」、空母「レキシントン」
小破:戦艦「アイオワ」「ニュージャージ」「マサチューセッツ」「ワシントン」「ペンシルバニア」、空母「フランクリン」

ここで本作の勝利条件を説明しておく。本作の勝利条件は基本的には敵に与えた損害(沈没艦)の量によって決まってくる。現時点での勝利得点は、日本軍が26VP、連合軍が59VPである。このままなら連合軍がギリギリで勝利する。しかしゲーム終了時に生き残った日本艦艇は、その価値の75%(空母は100%)に相当するVPを日本軍は得ることになる。現時点で生き残った日本艦隊は、戦艦6隻、空母1隻、軽空母3隻、重巡4隻、軽巡6隻、駆逐艦26隻で、これをVP換算すると108VPに達する。これが全て生き残れば、VP的には日本側の圧勝だ。米軍としては、この後に小沢艦隊の空母群を全滅させて、さらに戦艦1隻、重巡4隻を撃沈して、やっと引き分けである。日本軍にはまだあの恐るべき「カミカゼ攻撃」が2隊も残っているので、このまま無傷という訳にもいかない。そう考えると、栗田艦隊を無視して序盤に小沢艦隊を叩き潰すことに専念した方が良かったのかもしれない。

勝利条件について少し付け加えると、栗田艦隊か西村・志摩艦隊のいずれかがレイテ湾ヘクス突入に成功すると、その時点で日本軍のサドンデス勝利となる、さらに日本軍は有力な米艦隊と交戦するまで、レイテに向けて前進しなければならない(若干の迂回移動は認められる)。だから温存によるVP狙いでフィリピン西方の安全な海に留まっていることは許されない。米軍がヘマをしなければ日本艦隊によるレイテ湾突入は相当困難なので、日本軍としてはレイテ湾突入を阻止しようとする米艦隊と一戦交えた後、全力で西方に向けて逃げるというのが常道になるだろう(史実通り)。日本軍がそのような動きを行った場合、ゲーム上でのバランスはそれなりに良好と思われる。

IJN_CV_Zuikaku小沢艦隊について説明しておくと、米艦隊が小沢艦隊を発見した場合、60~80%の確率で「ブルズラン」を強制させられる。日本艦隊としては、史実通り小沢艦隊を囮にして米機動部隊を北に引き付けて、その間に栗田艦隊でレイテ湾突入を狙う作戦も成立する。そう考えると、日本側も色々と作戦を考える楽しみがあるゲームと言えよう。

全般的な感想だが、雑誌付録ゲームということで細部の詰めが甘く、特にルールやセットアップに致命的なミスがある。エラッタを確認できればプレイに支障はないが、エラッタを見つけることができなければ致命傷になるだろう。ちなみにエラッタの在処は以下を参照して欲しい。

https://www.atomagazine.com/errata/errata_is.pdf

そういった点を除けば結構楽しめるゲームだと思った。心持ち日本の航空攻撃力や酸素魚雷の威力が史実よりも強力なように思われるフシはあるが、逆に史実の米軍がラッキー過ぎたという見方もある。逆に砲撃戦能力は米軍の方が有利になっているので、栗田艦隊がオルデンドルフ部隊を打ち破ってレイテ湾に突入するのは相当困難なように思われる。ただし勝利条件の捻りが上手く、日本側にも十分に勝機はある。決して日本軍が一方的に叩きつぶされるだけのゲームではない。航空攻撃や水上戦の解決が少し手間だが、一方で戦闘シーンはゲーム上の「華」なので、ある程度手間をかけてプレイするのも悪くないと思う。
「レイテ沖海戦なんてゲームになるのか?」と正直疑心暗鬼であったが、プレイしてみると杞憂であり、十分に再プレイに耐える内容であった。同じシステムを使ってマリアナ沖海戦を再現する Clash of Carriers も発売されたので、こちらも機会を見つけてプレイしてみたい。

Carrier Battle - Philippine Sea ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942
レイテ沖海戦 「大和」艦橋から見たレイテ海戦 Leyte: June 1944 - January 1945 The Battle of Leyte Gulf 23-26 October 1944
レイテ戦記1 レイテ戦記2 レイテ戦記3 レイテ戦記4

241217_Philippine_Sea

The Philippine Sea 1944

Mark Stille Osprey

The Philippine Sea 1944
マリアナ沖海戦について日米双方の視点から総括した著作である。筆者のMark Stille氏はゲームデザイナーとしても知られており、レイテ沖海戦のゲームやハンガリー戦、スターリングラード戦のゲーム等を手掛けている。
本書はマリアナ沖海戦について、戦闘開始から終了までを時系列に示した内容になっている。本書は両軍の指揮官、編成、作戦方針を説明する所から始まり、ビアク島攻略戦とそれに対する渾作戦、米軍のマリアナ攻撃、基地航空部隊と米機動部隊の戦い、小沢艦隊の出撃、小沢艦隊の攻撃と米機動部隊の迎撃、米軍による追撃といった一連の流れが手際よくまとめられている。この海戦はとかく「マリアナの七面鳥撃ち」といった特定の場面のみが注目される傾向にあるが、本書は海戦場面に留まらずその前の戦い(第1航空艦隊とTF58の戦い等)をキッチリ描くことで、マリアナ沖海戦の全体像を分かりやすく示すことに成功している。
写真や図表が数多く掲載されていて読みやすいので、英文だからといって敬遠せずに是非読んでいただきたい1作である。

お奨め度★★★★


The Philippine Sea 1944 マリアナ沖海戦-母艦航空隊の記録 New Guinea and the Marianas: March 1944-august 1944 帝国海軍搭載機総ざらい(1) 2017年 06 月号
Carrier Battle - Philippine Sea 海空戦南太平洋1942

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