幸せになる勇気
古賀史健/岸見一郎 ダイヤモンド社
本書はアドラー心理学を論じた「嫌われる勇気」の続編で、人間の幸福や対人関係のあり方を哲学者と青年の対話形式で論じた著作である。本書は人間の生き方について多くの示唆を与える一方で、いくつかの点では理想的すぎる議論も見受けられると感じた。
本書の魅力は、人間の行動を「過去」ではなく「目的」から理解するという考え方や、他者との関係の中で幸福を見いだすという視点にある。特に、他者に貢献しているという感覚が幸福につながるという主張は、現代社会において人間関係に悩む人々にとって有益な示唆を与えるものだろう。また、「課題の分離」などの考え方は、自分と他者の問題を整理して考えるうえで、生き方の指針となりうる部分もあると感じた。 しかし一方で、本書には現実の社会や教育の現場を考えると、やや理想論に過ぎると感じられる議論も見られる。例えば教育に関する議論では、叱責や評価を避けるべきだという主張が強調されているが、実際の教育現場では安全管理や規律の維持のために一定の指導が不可欠である。こうした現実的な問題に対する考察は十分とは言えず、やや現実を無視した議論になっている印象も受けた。
また、本書はアドラー心理学を紹介する形をとっているものの、厳密な心理学の研究書というよりは、人間の生き方を考えるための哲学的な著作として読むべき本ではないかと思う。心理学的な実証や具体的な方法論よりも、人間はどのように生きるべきかという価値観や思想の提示に重点が置かれているからである。 総じて言えば、本書には人間関係や人生について考えるうえで参考になる部分が確かに存在する。しかしそれをそのまま現実の社会や教育に当てはめるのではなく、一つの思想や哲学として受け止め、必要な部分を自分なりに取り入れる姿勢が重要だろう。そうした意味で、本書は心理学の実用書というよりも、人間の生き方をめぐる哲学書として読むのが適切な作品だと感じた。
お奨め度★★★★























