もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書


幸せになる勇気

古賀史健/岸見一郎 ダイヤモンド社

幸せになる勇気 本書はアドラー心理学を論じた「嫌われる勇気」の続編で、人間の幸福や対人関係のあり方を哲学者と青年の対話形式で論じた著作である。本書は人間の生き方について多くの示唆を与える一方で、いくつかの点では理想的すぎる議論も見受けられると感じた。
本書の魅力は、人間の行動を「過去」ではなく「目的」から理解するという考え方や、他者との関係の中で幸福を見いだすという視点にある。特に、他者に貢献しているという感覚が幸福につながるという主張は、現代社会において人間関係に悩む人々にとって有益な示唆を与えるものだろう。また、「課題の分離」などの考え方は、自分と他者の問題を整理して考えるうえで、生き方の指針となりうる部分もあると感じた。 しかし一方で、本書には現実の社会や教育の現場を考えると、やや理想論に過ぎると感じられる議論も見られる。例えば教育に関する議論では、叱責や評価を避けるべきだという主張が強調されているが、実際の教育現場では安全管理や規律の維持のために一定の指導が不可欠である。こうした現実的な問題に対する考察は十分とは言えず、やや現実を無視した議論になっている印象も受けた。
また、本書はアドラー心理学を紹介する形をとっているものの、厳密な心理学の研究書というよりは、人間の生き方を考えるための哲学的な著作として読むべき本ではないかと思う。心理学的な実証や具体的な方法論よりも、人間はどのように生きるべきかという価値観や思想の提示に重点が置かれているからである。 総じて言えば、本書には人間関係や人生について考えるうえで参考になる部分が確かに存在する。しかしそれをそのまま現実の社会や教育に当てはめるのではなく、一つの思想や哲学として受け止め、必要な部分を自分なりに取り入れる姿勢が重要だろう。そうした意味で、本書は心理学の実用書というよりも、人間の生き方をめぐる哲学書として読むのが適切な作品だと感じた。

お奨め度★★★★

嫌われる勇気 幸せになる勇気 アドラー心理学を実生活に 決定版 アドラー心理学がマンガで


黒い家

貴志祐介 角川ホラー文庫

黒い家
本書を四半世紀ぶりに読み返した。結論から言えば、やはり面白い。そしてその「面白さ」は、単なる懐かしさではなく、作品そのものの強度によるものだと改めて感じた。
1990年代後半という時代背景は、さすがに今読むとやや古さを感じる。携帯電話やインターネットの扱い、保険業界の描写など、現代とは隔たりがある。しかし、それは物語の核心をまったく損なわない。むしろ、舞台装置が多少変わろうとも、人間の本質は変わらないという事実を浮き彫りにしているように思える。
本書の恐怖は幽霊や怪異ではない。理屈も良心も通じない「人間」の存在そのものだ。善悪の基準を共有しているという前提が崩れたとき、社会的な制度や常識はどれほど無力になるのか。保険制度という合理的な仕組みが、逆に悪意の温床となり得るという皮肉も、今読んでもなお鋭い。
四半世紀という時間を経て再読すると、若い頃とは違う感覚もあった。当時はただただスリリングな展開に圧倒されていたが、今回は主人公の心理の揺れや、日常が侵食されていく過程の丁寧さにより強く引き込まれた。恐怖の描写が派手なのではなく、静かに、しかし確実に追い詰めていく構成の巧みさが際立つ。
そして何より、「人間の本質は変わらない」という実感が残った。社会は変わり、技術は進歩し、価値観も移ろう。しかし、欲望や悪意、そしてそれに対する恐怖は、時代を越えて普遍なのだと気づかされる。
再読に耐えるどころか、再読によってむしろ深みが増す作品だった。四半世紀を経ても色褪せないどころか、今なお読者の神経を静かに締め上げる力を持つ一冊である。


お奨め度★★★

黒い家 天使の囀り クリムゾンの迷宮 新世界より1~3
たかが殺人じゃないか 落日 火車 理由


J-Wings 2026年4月

イカロス出版

J-Wings 2026年4月:ベネゼエラ強襲と米軍特殊航空部隊 少し軽めの航空雑誌J-Wings。今回の特集は、ベネズエラ強襲と米軍特殊航空部隊。2026年新年早々に実施された米軍によるベネズエラ侵攻をテーマとしつつも、作戦そのものよりも作戦遂行を支えた米特殊航空部隊に焦点を当てた特集となっている。取り上げられている航空機は、MH-47GチヌークやMH-60Mブラックホーク、MH-6Mリトルバード等。いずれも原型機は20世紀から運用され続けているベテラン機材だが、最新の電子装備で武装しているので、内装は一新されてより「凄み」を増している。MC-130JやAC-130Jなど、オールドファンにとっても嬉しい機材が紹介されている。

お奨め度★★★

J-Wings 2026年5月:F/A-18E/F生産終了へ 最終型『ブロックⅢ』の実力 J-Wings 2026年4月:ベネゼエラ強襲と米軍特殊航空部隊 J-Wings 2026年3月:日本で見られる軍用機2026 J-Wings 2026年2月:A-10という伝説
J-Ships:2026年4月-世界の大型水上戦闘艦 J-Ships:2026年2月-フリゲート入門 J-Wings 2026年1月:異機種大編隊と飛行開発実験団 J-Wings 2025年12月:進化する国際共同訓練


嫌われる勇気

古賀史健/岸見一郎 ダイヤモンド社

嫌われる勇気 まさに"人生を変える"という言葉が大げさではない一冊だった。哲学者と青年の対話形式で進む本書は、難解になりがちなアドラー心理学を驚くほど平易に、そして鋭く読者の胸に突き刺してくる。読み進めるほどに、これまで自分が当然だと思い込んでいた価値観が静かに揺さぶられていく感覚を覚えた。
特に印象に残ったのは、「自由とは他人から嫌われることである」という一節だ。他者の期待に応えようとするあまり、自分の行動や選択を縛っていたことに気づかされる。誰かに嫌われる可能性を恐れず、自分の人生を自分の責任で選び取ること。それが自由の本質だという指摘は、耳が痛いほど真実味を帯びていた。
また、「幸福とは他者貢献である」という考え方も深く心に残った。幸福を"得るもの"ではなく"与えることで感じるもの"と捉える視点は、これまでの自己啓発書にはない力強さがある。自分の存在が誰かの役に立っているという感覚こそが、人を前向きにし、人生に意味を与えるのだと気づかされる。
本書は、過去の出来事やトラウマに縛られがちな私たちに、「いま、この瞬間をどう生きるか」という視点を与えてくれる。読み終えた後、世界が劇的に変わるわけではない。しかし、自分の見ている世界の"焦点"が変わる。その変化こそが、人生を変える第一歩なのだと思う。
本書は単なる自己啓発書ではない。生き方そのものを問い直すための哲学書であり、読者に静かな勇気を手渡してくれる一冊だった。

お奨め度★★★★

嫌われる勇気 幸せになる勇気 アドラー心理学を実生活に取り入れてみた 決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本

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傀儡政権

広中一成 角川新書

傀儡政権
広中一成氏の後期日中戦争三部作の1作で、「日中戦争、対日協力政権史」というサブタイトル通りの内容となっている。日中戦争下での傀儡政権と言えば汪兆銘の中華民国国民政府が有名だが、それ以外にも様々な対日協力政権があったことを本書は示している。本書で取り上げられているのは、汪兆銘政権以外にも冀東防共自治政府や中華民国臨時政府、中華民国維新政府など、様々な政権が取り上げられている。結果的に彼らは全て「傀儡政権」とされているが、違った歴史を歩めば、彼らが正当な中国政府となった可能性もないわけはなさそう。
知らざれる日中戦争の一面を知ることができる著作と言える。

お奨め度★★★

傀儡政権 後期日中戦争 後期日中戦争 華北戦線 七三一部隊の日中戦争
日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ 決定版 日中戦争 中国的天空(上) 中国的天空(下)

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