天使の囀り
貴志祐介 角川ホラー文庫
本書は、読後もしばらく心にざらつきを残す、異様な迫力を持ったホラー小説だった。精神科医・北島早苗が、恋人の不可解な自殺をきっかけに、アマゾンで起きた謎の事件と向き合っていく物語は、単なる恐怖の演出にとどまらず、人間の本能や死生観に深く切り込んでくる。
正直に言えば、物語中盤以降に描かれる大量死の場面は、あまりにもグロテスクで、読む手が止まりそうになった。死の描写があまりに生々しく、しかもそれが「快楽」と結びついているという設定には、嫌悪感すら覚えた。しかしその不快感こそが、著者の狙いだったのかもしれない。読者の倫理観や感情を揺さぶることで、「死とは何か」「生きるとは何か」という問いを突きつけてくる。
また、登場人物たちの心理描写が非常に緻密で、特に主人公の葛藤や恐怖がリアルに伝わってくる点は見事だった。科学的な知識や精神医学の描写も説得力があり、物語にリアリティを与えている。ホラーでありながら、ミステリとしての構成も巧妙で、謎が少しずつ明かされていく展開には引き込まれた。
読み終えた今でも、「天使の囀り」という言葉が耳に残っている。恐怖と快楽、理性と本能の境界を描いたこの作品は、決して万人向けではないかもしれないが、強烈な読書体験を求める人には一読の価値があると思う。
お奨め度★★★



























