第二次大戦 世界の空母 完全ガイド
本吉隆 イカロス出版
本吉隆氏による『第二次大戦 世界の空母 完全ガイド』は、タイトルにある「完全ガイド」という表現から一見して、各国空母のスペック解説に終始した資料集のように思える。実際、各空母の艦歴や性能についての記述は充実しているものの、やや平板で、既存の艦船図鑑や戦史資料と比べて特筆すべき新情報は少ない。しかし、本書の真価は、豊富に盛り込まれたコラム記事にこそあると感じた。
とくに興味深かったのは、戦後の米英空母の発展過程を追った記述である。冷戦の開始とともに急速に発展した米英の空母技術と、それを取り入れて進化したアメリカ海軍の空母部隊。一方で新技術を編み出したパイオニアながら、予算不足その他で空母の整備が進まず、遂にCTOL型空母の廃止を余儀なくされたイギリス海軍空母部隊。これら一連の流れが、簡潔ながら要点を押さえて描かれており、通読するうちに現代空母への技術的系譜が理解できる。
また、第二次大戦中にはついに実戦に投入されることのなかった仏独伊の空母整備計画についての分析も読み応えがあった。政治的・技術的な障壁が各国でどのように空母建造を阻んだのか、歴史の「if」に触れる内容として興味深く、資料性にも富む。
さらに、各国の空母搭載機の編成や、空母艦隊における防空戦術の進化についての記述は、空母を「艦」としてではなく「システム」として捉える視点を提示してくれる。艦上機の種類・配置、CAP(戦闘空中哨戒)の運用思想、レーダーと対空砲火の協調といった細かい戦術的要素が、時代とともにどのように進化したかをコンパクトにまとめており、軍事的な視点からも十分に楽しめた。
全体として、空母という艦種の歴史と技術的発展に関する幅広い情報を提供してくれる一冊であり、とりわけ本文に付随するコラム群は、単なるデータ集に終わらない「読み物」としての価値を持っていた。個々の艦艇解説を超えて、空母という存在の変遷を立体的に捉えたい読者にとって、本書は良質な入門書であるとともに、再考のきっかけを与えてくれる資料でもあると感じた。
お奨め度★★★★


























