もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書

4

第二次大戦 世界の空母 完全ガイド

本吉隆 イカロス出版

WW2世界の空母-完全ガイド
本吉隆氏による『第二次大戦 世界の空母 完全ガイド』は、タイトルにある「完全ガイド」という表現から一見して、各国空母のスペック解説に終始した資料集のように思える。実際、各空母の艦歴や性能についての記述は充実しているものの、やや平板で、既存の艦船図鑑や戦史資料と比べて特筆すべき新情報は少ない。しかし、本書の真価は、豊富に盛り込まれたコラム記事にこそあると感じた。
とくに興味深かったのは、戦後の米英空母の発展過程を追った記述である。冷戦の開始とともに急速に発展した米英の空母技術と、それを取り入れて進化したアメリカ海軍の空母部隊。一方で新技術を編み出したパイオニアながら、予算不足その他で空母の整備が進まず、遂にCTOL型空母の廃止を余儀なくされたイギリス海軍空母部隊。これら一連の流れが、簡潔ながら要点を押さえて描かれており、通読するうちに現代空母への技術的系譜が理解できる。
また、第二次大戦中にはついに実戦に投入されることのなかった仏独伊の空母整備計画についての分析も読み応えがあった。政治的・技術的な障壁が各国でどのように空母建造を阻んだのか、歴史の「if」に触れる内容として興味深く、資料性にも富む。
さらに、各国の空母搭載機の編成や、空母艦隊における防空戦術の進化についての記述は、空母を「艦」としてではなく「システム」として捉える視点を提示してくれる。艦上機の種類・配置、CAP(戦闘空中哨戒)の運用思想、レーダーと対空砲火の協調といった細かい戦術的要素が、時代とともにどのように進化したかをコンパクトにまとめており、軍事的な視点からも十分に楽しめた。
全体として、空母という艦種の歴史と技術的発展に関する幅広い情報を提供してくれる一冊であり、とりわけ本文に付随するコラム群は、単なるデータ集に終わらない「読み物」としての価値を持っていた。個々の艦艇解説を超えて、空母という存在の変遷を立体的に捉えたい読者にとって、本書は良質な入門書であるとともに、再考のきっかけを与えてくれる資料でもあると感じた。

お奨め度★★★★


WW2世界の空母-完全ガイド US Navy Aircraft Carrier 1942-45 空母戦 帝国海軍搭載機総ざらい(1) 2017年 06 月号
海空戦南太平洋1942 Carrier Battle - Philippine Sea ソロモン夜襲戦 欧州海域戦

3

世界の艦船5月増刊-イタリア海軍史

海人者

イタリア海軍史-2025年5月増刊
本増刊号は、近年の『世界の艦船』誌においても珍しい、イタリア海軍をテーマとした特集号である。冒頭に配されたカラーグラビアでは、現代イタリア海軍の艦艇を豊富な写真で紹介しており、視覚的にも非常に充実している。写真の構成は単なる艦影の紹介にとどまらず、艦上のディテールや艦隊運用の様子にも触れられており、読者の興味を強く引きつける。

本文の内容は、主に過去に『世界の艦船』誌に掲載された特集記事を再編集・再録したものであり、書き下ろしの新規原稿は限定的である。そのため、既に同誌を長年購読している読者にとっては、既視感のある記事も少なくない。しかしながら、それらの記事を一冊に集約することで、19世紀後半のイタリア統一に始まる近代イタリア海軍の歩みを、体系的に追うことができる点は評価に値する。

内容は、旧王国海軍から第一次・第二次世界大戦期の活動、そして戦後の再建とNATO加盟、冷戦期を経て現代の多国間協力体制に至るまで、約150年にわたる海軍の変遷を多角的に描いている。特に第二次世界大戦期における戦艦の整備方針や迷彩塗装の解説、戦後フリゲートや空母の配備経緯に関する技術的分析などは、軍事史に興味のある読者にとっては読みごたえがある。

一方で、構成全体としては再録記事に依拠する比重が高いため、内容面において新鮮味を欠くことは否めない。情報としては精緻であるが、最新の研究成果や近年の艦艇動向についての記述が少なく、現代海軍の展望に関する記述も限定的である。そのため、既存の知識に上乗せされる新情報を求める読者にはやや物足りなさが残るであろう。

総じて、イタリア海軍というややマイナーなテーマを、これだけの分量と質で総覧できる意義は大きく、資料的価値は高い一冊である。歴史的俯瞰を得たい読者や、艦艇写真を楽しみたい読者にとっては、有用な増刊号であるといえる。

お奨め度★★★


イタリア海軍史-2025年5月増刊 第2次大戦のイギリス軍艦 大西洋、地中海の戦い 北アフリカと地中海戦線のJu 87シュトゥ-カ: 部隊と戦歴
ソロモン夜襲戦 欧州海域戦 決戦連合艦隊・改

3

銀河英雄伝説-外伝5

田中芳樹 創元SF文庫

銀河英雄伝説-外伝5
『銀河英雄伝説 外伝5』は、銀河帝国と自由惑星同盟の若き時代を描いた作品であり、歴史の転換点として語られる「ダゴン星域会戦」がとりわけ印象的であった。
この戦いは、自由惑星同盟が帝国に対して初めて大規模な軍事的勝利を収めた記録として位置づけられている。物語では、その勝利がいかにして達成されたか、同盟軍の若き指揮官たちの奮闘と、帝国側の慢心や組織の硬直ぶりが対照的に描かれており、後の銀河規模の戦乱を予感させる導入として非常に力強い。ラインハルトやキルヒアイスはこの時点では登場しないが、だからこそ作品世界の広がりと深みを感じさせる。
一方で、その後のエピソード群はラインハルトとキルヒアイスの若き日の出世譚が中心となる。貴族社会の中で理不尽な扱いを受けながらも、彼らが才覚と信念でのし上がっていく様子は、見ていてそれなりに面白い。しかし、予想の範囲内の展開が多く、読後に強く印象に残るような劇的な出来事は少ない。全体として「優等生の成長記録」といった感が強く、登場人物の感情や葛藤も比較的あっさりと処理されていた印象がある。
総じて言えば、「ダゴン星域会戦」で提示された歴史的重みとスケール感に比べると、その後の話はやや小粒に感じられる。ただし、ラインハルトという稀代の天才が、いかにして帝国の頂点に向かう道を歩み始めたのか、そのプロローグとして読む価値は十分にあるだろう。

お奨め度★★★

銀河英雄伝説-外伝5 銀河英雄伝説1 銀河英雄伝説公式設定集 銀河英雄伝説コンプリートガイド
海空戦南太平洋1942 ソロモン夜襲戦 欧州海域戦 FOX TWO!!

3

戦争は女の顔をしていない

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/三浦みどり訳 岩波現代文庫

戦争は女の顔をしていない
本書を読んでこれまであまり意識してこなかった「もうひとつの戦争の姿」に気づかされた。これまで戦争を描いた本や映画では、主に男性兵士が前線で戦う姿が語られてきたが、この本では女性たちの視点から、戦争の現実が淡々と、しかし深く語られている。
銃を持って戦った女性兵士、負傷者の血を拭き続けた看護兵、爆撃の中で通信をつなごうとした通信兵。彼女たちの声は、これまでほとんど記録されることがなかった。それだけに、ひとつひとつの証言が新鮮で、強く心に残った。
印象的だったのは、彼女たちが戦争を語るとき、必ずしも「勇ましさ」や「栄光」を語らないということだ。むしろ、泥と血のにおい、死体を運んだときの感触、仲間が死んだときの気持ち――そうした、これまで語られてこなかった「小さな戦争の断片」が丁寧に描かれている。
また、戦後になってから女性兵士たちが受けた差別や偏見にも胸が痛んだ。命をかけて戦ったにもかかわらず、「戦争に行った女は普通ではない」と見られ、沈黙を強いられた。その現実は、戦場とは別のかたちの「戦い」だったようにも感じた。
この本は、今まで描かれてこなかった戦争のもう一つの側面を、静かに、しかし確かに私たちに伝えてくれる。戦争を知るとは、勝ち負けや戦略だけでなく、そこにいた人々の感情や記憶に耳を傾けることだと気づかされた。
本書は、戦争文学に新たな視点を加えるとともに、これからの時代にこそ読まれるべき一冊だと感じた。

お奨め度★★★

戦争は女の顔をしていない 同士少女よ、敵を撃て 同志少女よ、敵を撃て 1 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
燃える東部戦線 スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 NO RETREAT!
海空戦南太平洋1942 ソロモン夜襲戦 欧州海域戦 FOX TWO!!

3

20250615_グランドパワー11月号別冊-ドイツ軍装甲部隊の戦闘車両

グランドパワー1995年11月号別冊

デルタ出版

WW2期にドイツ軍が導入した装甲戦闘車両を網羅した著作である。主な収録車輛はドイツ軍の戦車だが、純粋な戦車だけではなく戦車をベースとした自走砲やハーフトラック、捕獲車輛、詩作戦車などにもページを割いている。やや古い本だが、ドイツ軍戦闘車両を網羅的に捉えた著作としては有益な内容だと思う。

お奨め度★★★

ドイツ重戦車 戦場写真集 クルスクの戦い ティーガー戦車 戦場写真集 38式軽駆逐戦車ヘッツァー1944-1945
DVG Tiger Leader (2nd Edition) Panzer Tanks+

↑このページのトップヘ