連合艦隊:サイパン・レイテ海戦記
福田幸弘 時事通信社
1981年に出版された著作なので今から40年以上前になるが、それでもサイパン・レイテ海戦の海戦記として一流の作品である。本書の筆者は、両海戦に重巡「羽黒」乗組員として参加し、両海戦における戦闘詳報作成を担当した。「羽黒」は特にレイテ海戦で米護衛空母群に最も近づいた艦として知られており、同海戦における日本側の殊勲艦ともいえる艦であった。本書は実戦に参加した筆者ならではの視点と、両軍の戦史を広く深く調査した結果を総合的に駆使し、サイパン、レイテ海戦における日米両軍の動きを立体的に再現することに成功している。本書は旧軍人にありがちな「身びいき」が殆ど見られず、日米両軍の作戦や戦闘力を冷静な筆致で記している。栗田艦隊のいわゆる「謎の反転」についても、筆者は栗田長官を一方的に断罪するようなことはせず、さらに栗田長官の弁護に終始することもなく、あくまでも中立的な視点で「謎の反転」を論じている。
現在でもサイパン、レイテ海戦を調査する際には是非一読しておきたい作品である。
お奨め度★★★★
連合艦隊: サイパン・レイテ海戦記
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