第三次世界大戦
ジョン・ハケット 青木栄一訳 講談社文庫
久しぶりにハケット将軍の「第三次世界大戦」を読んでみた。二見書房のオリジナル版である。エンタメ要素は少ないが、極めて硬派で描かれた「未来戦争」は、今読んでみても説得力がある。戦闘シーンは地味だが説得力があり、西ドイツにおける地上戦や大西洋上での海上戦、さらには西ドイツ上空や英本土上空での航空戦は、さすがにプロの軍人が書いただけのことはある、と思わせる内容であった。兵器名や個艦名を出さないあたりはストイックで、逆に兵器や個艦を前面に出している「レッドストームライジング」とは対極をなす。
全般的にはハッピーエンドで終わるのだが、ソ連という超大国が実在していた1970年代後半に本書を読んだ時には、やや「出来すぎ」ではないかと思った。現在読み返してみると、本書が示した未来史と実際の歴史を対比してみるのも興味深いだろう。