最新版第三次世界大戦
ジョン・ハケット 青木栄一訳 講談社文庫
元大英帝国軍人であるハケット将軍が記した「第三次世界大戦」と言えば、日本では1970年末に二見書房から出版された作品を思い浮かべる人が多いと思う。かく言う私もその1人だった。今回紹介する「最新版第三次世界大戦」は、同じテーマを題材としながらも前作では描かれなかった部分を補足したいわば「追加本」である。こんな本が出ていたなんて、正直全然知らなかったが、先日友人に教えてもらい、その存在を知った。内容的には前作を下敷きにしながらも前作では描き切れなかった部分を突っ込んだ内容になっている。具体的には航空戦闘、海上戦闘、欧州地域以外での戦争との関わり等だ。日本も登場してきて、北方領土に逆進攻したりもする。
本書は極めて「真面目に」未来戦争を描いた言わば「硬派」な作品である。この作品から数年後に登場したトムクランシーの「レッド・ストーム・ライジング」が同じテーマを娯楽性たっぷりに描いたのに比べると、その違いが顕著になってくる。
もう1点、本書を読んでみると、本書が予想した未来が実際にはどうだったか。いわば「未来予想図」と「本当の未来」を比較してみるのも面白い。例えば我々の世界ではソ連邦が崩壊し、冷戦構造は終わりを告げた。また東西ドイツは統一ドイツとなり、欧州の中心国家の1つとなっている。そして中国の台頭。果たして現実の姿をハケット将軍はどこまで予見し得たのか。それは本書を読んでみてのお楽しみである。
お奨め度★★★