もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 架空戦史

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最新版第三次世界大戦

ジョン・ハケット 青木栄一訳 講談社文庫

元大英帝国軍人であるハケット将軍が記した「第三次世界大戦」と言えば、日本では1970年末に二見書房から出版された作品を思い浮かべる人が多いと思う。かく言う私もその1人だった。今回紹介する「最新版第三次世界大戦」は、同じテーマを題材としながらも前作では描かれなかった部分を補足したいわば「追加本」である。こんな本が出ていたなんて、正直全然知らなかったが、先日友人に教えてもらい、その存在を知った。
内容的には前作を下敷きにしながらも前作では描き切れなかった部分を突っ込んだ内容になっている。具体的には航空戦闘、海上戦闘、欧州地域以外での戦争との関わり等だ。日本も登場してきて、北方領土に逆進攻したりもする。
本書は極めて「真面目に」未来戦争を描いた言わば「硬派」な作品である。この作品から数年後に登場したトムクランシーの「レッド・ストーム・ライジング」が同じテーマを娯楽性たっぷりに描いたのに比べると、その違いが顕著になってくる。
もう1点、本書を読んでみると、本書が予想した未来が実際にはどうだったか。いわば「未来予想図」と「本当の未来」を比較してみるのも面白い。例えば我々の世界ではソ連邦が崩壊し、冷戦構造は終わりを告げた。また東西ドイツは統一ドイツとなり、欧州の中心国家の1つとなっている。そして中国の台頭。果たして現実の姿をハケット将軍はどこまで予見し得たのか。それは本書を読んでみてのお楽しみである。

お奨め度★★★

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先任士官物語

渡邉直 光人社NF文庫

架空の護衛艦「しののめ」を舞台にした新任砲雷長、結城武。本書は結城武と「しののめ」を主人公とした小説である。小説という形態を取っているが、本書で描かれているのは生の海上自衛官の姿で、遠洋航海、未知の人々との出会い、戦闘訓練、事故、司令との確執、同僚との絆、そして海上自衛官達を背後で支えている家族達が描かれている。
護衛艦「しののめ」は「くも」クラスの護衛艦とされているが、これは1960年代から2000年前後まで活躍した「やまぐも」「みねぐも」クラスの護衛艦である。主兵装はアスロックとボフォース対潜ロケットで、現在の汎用護衛艦のようにSSMやCIWS、短SAM等は装備していない。あくまでも対潜戦に特化した護衛艦である。ちなみに「くも」クラスが遠洋航海に出たのは1970年~85年なので、本書の扱っている時期は1970年代であろう。ただし本書では「しののめ」が「くも」クラスだろうが、「ゆき」クラスだろうが、あまり関係ない。護衛艦は脇役で主役は海上自衛官達である。従ってメカニックな側面に期待する向きにとっては期待を裏切られるかもしれない。しかしその一方で海上自衛官達の生の生活を「わかったような気にさせてくれる」作品である。

お奨め度★★★

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レッドアーミー侵攻作戦

ラルフ・ピーターズ 小関哲哉訳 二見書房

いわゆる第3次世界大戦モノだが、本書は主人公が西側陣営ではなくソ連側だという点が他の作品と一線を画している。ソ連側から見た西側陣営の優れている点や劣っている点についての評価が面白い。また本書は、所謂近未来モノにも関わらず、「兵器」が殆ど出てこないのが特徴である。もちろん戦争モノなので「兵器」そのものは登場するが、それは「戦車」であり「攻撃ヘリ」であり「戦闘機」であり「歩兵戦闘車」なのであって、決して「T-72戦車」や「Mi24ハインド」や「Su-27フランカー」や「BMP歩兵戦闘車」ではないのだ。本書で兵器の固有名詞が登場するのはたったの2箇所。それ以外は徹底的に兵器の個性を殺して描いている。その代わり本書では登場人物の人物描写を丹念に描いており、いわゆるステロタイプのソ連軍兵士、ソ連軍将校を思い描いていると、モノの見事に裏切られる。
一風変わったWW3モノを読みたい方にはお奨めしたい作品である。

お奨め度★★★

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レッドストームライジング(上下)

トム・クランシー 井坂清訳 文芸春秋

トムクランシーの初期作品。現代戦を扱ったフィクション作品は数々あるが、本作よりも面白い作品を私は知らない。メインテーマは海戦で、大西洋を巡る米ソ両軍の戦いは臨場感抜群である。特に圧巻なのが水上艦と潜水艦との戦いで、米海軍のフリゲート艦とソ連潜水艦の戦いや、米ロス級原潜とソ連ASW部隊の戦いは、読む者を飽きさせない。他にも空対空、空対艦の戦闘、地上戦闘、地対空/空対地の戦闘等もリアルに描かれている。設定年代が1980年代後半なので、登場する兵器がやや古いのが気になると言えば気になるが(湾岸戦争は1991年で、その時活躍したF-117AやF-15Eは本作にはほとんど登場せず、逆に本作の中ではファントムの登場機会が妙に多い)、別に本作の欠点ではなくその辺りは現代戦物の宿命とするべきだろう。娯楽作品としては、今でも通用する作品と言える。

お奨め度★★★★

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太平洋戦争のif

泰郁彦編 中央公論

著名な戦史家である泰郁彦氏の編纂ということで期待して読んでみたが、俗っぽいif本と何ら変わる所がなかった。読み応えがあったのは、ハワイ作戦とミッドウェー海戦の図演に関する部分のみ。残りは「ハワイ攻撃で第2次攻撃を実施していたら」とか「レイテ湾に栗田艦隊が突入していたら」といった語り尽くされたテーマばかりである。何故今更このような「手垢のついた」テーマでわざわざ書く必要があるのか、疑問に思った次第である。

お奨め度★★

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