もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 第3次世界大戦

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これまで何度か紹介しているVUCA社の仮想戦シミュレーション・ウォーゲーム「Red Strike」(以下、本作)のシナリオをプレイしてみた。
今回プレイしたシナリオは、シナリオB3「North German Plains」。北ドイツ平原を巡るWP軍とNATO軍の対決である。登場ユニット数356個で、キャンペーンシナリオを除けば本作で最大規模のシナリオである。
圧倒的兵力で北ドイツ平原を席捲するWP軍戦車部隊に対し、NATO軍はいかにして対抗するのか・・・。

シナリオの勝利条件は、第3Turn終了時点でWP軍がウェザー川西岸に橋頭保を築くことと、ハンブルクの港湾施設を占拠することである。
今回筆者はNATO軍を担当した。

前回までの展開は --> こちら

3Turn


WG_4D3PzDiv_41_808事実上の最終Turnである。WP軍も勝利条件を理解しているので、ウェザー川への突進を試みる。
NATO側のスタックは見かけ上「武蔵小杉のタワマン」状態だが、実質はボロボロ。WP軍の蹂躙攻撃に対抗できずに次々と強制後退を強いられる。

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すると後方でスタック制限超過の「超高層タワマン」状態となる。こうなるとスタックの中身を見るのも一苦労。「もうどうでも良いや」という状態になる。「こんなクソゲー、やってられるか」という気持ちにも、ならなかったと言えば嘘になる。

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そんなNATO軍の状況を無視してWP軍はウェザー川防衛ラインに全力攻撃を仕掛けてくる。かくいうWP軍もこれまでの大盤振る舞いが祟り、補給ポイントが残り少なくなってくる。シナリオの初期配置では350ポイントもの補給ポイントを保有していたWP軍だが、1回の全力攻撃で最低でも16ポイント、下手をすれば30ポイント近く消費しているので、残りが少なくなってきたのだ。
WP軍はなけなしの補給ポイントを全振りしてウェザー川渡河攻撃を行う。NATO軍もHasty Defense(急速防御)に補給ポイントを注ぎ込んで防衛ラインを死守を図る。WP軍はNATO軍防御部隊に化学兵器を集中投入し、一気に11戦力を失わしめた。WP軍は化学兵器を投入して戦闘比を最高の10-1まで上げて、さらに砲兵支援でDRM+3。出目が5以上ならNATO側は強制後退になるので、ウェザー川の西岸にWP軍は橋頭保を確保する。逆に出目が4以下なら、NATO側が死守に成功し、WP側の勝利はなくなる。ちなみにこのゲームのダイスはD10なので、出目5以上が出る可能性は60%だ。

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WP側プレイヤーが振ったダイス目は、"2"。WP軍のウェザー川渡河作戦に失敗し、NATO側の勝利が決定した。

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感想

SO_Mi-24_20GCAA_487OVP本作最大規模のシナリオをほぼ2日間かけてプレイした。プレイ時間は実質15時間程度(セットアップ含む)。1Turnの平均所要時間は4~5時間になる。実際の所、初日はセットアップと第1Turnのプレイだけで終わってしまい、2日目は第2~3Turnを約6時間かけてプレイした。

作戦レベルでの反省点だが、部隊編成をバラバラにしたのはやはり失敗であった。最初の段階で部隊編成やヒエラルヒーをちゃんと理解し、可能な限り建制を崩さないように配備すべきであった。また地形効果の読み間違いも痛かった。前回のプレイでも誤解していたのだが、森の地形効果を防御力2倍と見誤っていた。しかし防御力2倍になるのは非機械化部隊のみ。初期配置されているNATO軍部隊のほぼ全てが機械化部隊なので、森の防御力恩恵の効果は得られないことがプレイ中に判明した。それなら無理に森で守らず、その前の川のラインで守った方が良かったかもしれない。
さらに言えば、WP軍の化学兵器効果が強力なので、生半可な戦闘比なら簡単に最高比にまで持っていかれてしまう。だから序盤は無理に拠点に集中防御するのではなく、ZOCを張れる程度の部隊を縦深配置し、前方の部隊は戦術的撤退によって兵力を温存するのが得策だったかもしれない。シナリオの本番は第2Turn以降の戦いになるのだから、そこまでは可能な限りNATOとしては兵力を温存しておくのが正しい戦術であったように思う。あと、プレイ中にも触れたが、ユトランド半島入口は可能な限り死守すべきであった。その結果、リューベックを守る部隊(西ドイツ第6装甲擲弾兵師団又は第3装甲師団)が包囲されたとしても、港湾補給によって飢えることはない。よしんば包囲殲滅されたとしても、その分時間稼ぎができたのならヨシとすべきだろう。

全般の反省として、やはりプレイの前の準備が不足していたことは否めない。少なくとも麾下の部隊編成を理解し、各部隊毎に任務を明確にしておくべきであった。それがなかったため、各地で雑多な部隊を糾合しただけのハイスタック防御となってしまい、前線部隊に余分な苦戦を強いた点は大いに反省すべき点であった。

プレイ全体の感想だが、正直な所、後半はかなりプレイが辛かった。というのもスタックが大きくなり過ぎて、スタックの中身を一々把握するのが困難になってきたということだ。本作の場合、NATO軍は連隊~旅団規模が基本なので、1Hexに戦闘部隊だけで6ユニットがスタックできてしまう(スタック制限は6個連隊相当)。さらに司令部等の支援部隊、ヘリ部隊、CAP部隊等がスタックされ、さらに損害を受けたユニットには損害マーカーが付与されるのでスタックはそれころ「これって武蔵小杉のタワマンですか?」というぐらいの状態になってしまう。このスケールのゲームならNATO側は師団規模ユニットにした方がプレイアビリティが良くなると思うのだが・・・。

ただしハイスタック問題については、プレイヤーが事前に麾下の部隊編成をちゃんと理解しておくことで回避できる問題でもある。上にも書いたが、今回のプレイでは筆者自身が準備不足だったことが混乱に拍車をかけたキライがある。だから一概に「ゲームが悪い」と決めつけることはできないとも思っている。

ゲームシステムも詳細なのは良いのだが、詳細過ぎて余計な手間が多すぎると思う。航空機がマップ上を「実際に飛行して」爆撃を行うシステムにしても、AWACSによる探知やCAP機による迎撃、BVR戦闘等、まるで「パイロットが判断すべき事項をプレイヤーが行っている」感覚すら覚える。CAS(近接航空支援)も手間がかかり過ぎる上、CASの成否が戦闘結果に与える影響が大きいだけに手抜きができないのが辛い。

本ゲームのシステムは、元々はペルシャ湾の戦いを扱ったGulf Strike(Victory Games 1983)、エーゲ海の戦いを扱ったAegean Strike(Victory Game 1986)で採用されたシステムを部分修正したものである。中東油田地帯やバルカン半島のように部隊密度が低い地域ではこのシステムが比較的問題なく機能した。しかし部隊密度が高く、航空戦力も集中配備されているヨーロッパ中央部でこのシステムを採用するのはやはり無理があると言わざるを得ない。陸戦、海戦、航空戦のいずれも高い精度で再現できるゲームシステムというのはウォーゲーマにとっては一つの夢だ。しかし実際には陸戦専用、海戦専用、航空戦専用ゲームと比べるといずれの面でもゲーム性、シミュレーション性共に劣るという結果になるのが通例だ。陸戦ゲームをやりたければ、The Third World WarやNATO(いずれもCompass Games)をプレイするれば良いし、海戦ゲームならBlue Water Navy(Compass Games)という傑作もある。空戦ゲームならRed Strike(GMT Games)もあるし、今ならネットゲームで良いものがいくつもある。

今回、このシナリオをプレイしてみて、この規模になると最早リアルな環境でプレイするのは困難だと認識せざるを得なかった。中規模シナリオであっても、以前に紹介した B1.Fulda Gap ぐらにならギリギリでプレイ可能かもしれない。
あるいは以前にプレイした B5.Miami1989 やB6.Valkyrie's Embraceのような海戦シナリオなら、ルールがシンプルで登場ユニット数も少ないのでプレイは十分に可能だろう。

実際のプレイの後、VASSAL環境を使って本シナリオを少し走らせてみた。VASSALの場合、ハイスタックが出来てもプレイに支障はないので、快適にプレイできた。本作の中規模以上のシナリオをプレイするのであれば、現時点ではVASSALによるプレイが最適解だと思った次第である。

ゲームの種類によってはリアルでの対戦よりもVASSAL対戦の方が向いてるゲームが結構多いかも。一旦は諦めかけた本作キャンペーンシナリオのプレイについても「VASSALを使えば何とかなるかも」と、お気楽に考えている今日この頃である。


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上はキャンペーンシナリオのセットアップをVASSAL上で見たものです。あーあ、確かにいつかキャンペーンシナリオをプレイしてみたいなぁ・・・。

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これまで何度か紹介しているVUCA社の仮想戦シミュレーション・ウォーゲーム「Red Strike」(以下、本作)のシナリオをプレイしてみた。
今回プレイしたシナリオは、シナリオB3「North German Plains」。北ドイツ平原を巡るWP軍とNATO軍の対決である。登場ユニット数356個で、キャンペーンシナリオを除けば本作で最大規模のシナリオである。
圧倒的兵力で北ドイツ平原を席捲するWP軍戦車部隊に対し、NATO軍はいかにして対抗するのか・・・。

シナリオの勝利条件は、第3Turn終了時点でWP軍がウェザー川西岸に橋頭保を築くことと、ハンブルクの港湾施設を占拠することである。
今回筆者はNATO軍を担当した。

SetUp

このゲーム、全てのシナリオでセットアップは一部を除き固定化されている。筆者の持論として「SLGのセットアップは固定セットアップが良い」というのがあるが、その理由は「初心者に優しい」という理由と、「余計な事にプレイヤーの脳のリソースを使わせたくない」というのがある。その点ではこのゲームは有難い。

0Turn

UK_1AD_7_1018このシナリオでは、シナリオ開始前に一定の事前移動が認められている。NATO軍は移動力の半分まで。WP軍は移動力の2倍の範囲で移動可能である。一見するとWP軍が有利に思えるが、序盤に分散配置されているNATO軍にとっては、自軍を強化する千載一遇の好機となる。そこでNATO軍としては地形効果のある拠点に部隊を集めた拠点防御でWP軍の前進を止める方針とした。

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1Turn

SO_3CAA_12GTD_2938ソ連軍は化学兵器搭載の中短距離ミサイルを西ドイツ領内に大量に打ち込んできた。主目標は防空組織と飛行場。一連の攻撃を受けて西ドイツ領内のNATO航空基地は、その大半が機能損失するに至った。

化学兵器の威力については、 前回のプレイ で完全に失念していた部分である。化学兵器は追加効果が色々あるのでそちらに目を奪われがちになるが、敵部隊や施設に対する打撃という面でも通常兵器よりも遥かに強力である。1点目として化学兵器は通常弾頭とは異なる命中判定が不要で常に命中扱いとなること。さらに命中した場合、通常弾頭では1打撃しか与えられないが、化学兵器の場合は2打撃を与えることができる。すなわち単純計算で化学兵器の威力は、通常弾頭と比較して2~4倍程度の威力があると考えて良い。

ガスマスク


制空権を得たWP軍地上部隊は。東西国境を突破し、ハンブルグ(Hamburg 2821-2822)、ブラウンシュワイク(Braunschweig 2223)に殺到する。北ドイツ平原を守る英第1機甲師団と第4機甲師団はWP戦車部隊の攻撃を受けて壊滅的な損害を被った。

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US_EF-111A_42ECSNATO側の反撃は空から行われた。米本土からはB-52爆撃機が発進し、東ドイツ領内のWP軍航空基地に対してAGM-86空中発射型巡航ミサイルを大量に打ち込む。巡航ミサイル攻撃を受けてダメージを受けた航空基地に対しては、英本土を発進したF-111E/Fアードバーグの編隊が、護衛なしで飛来。WP軍の防空戦闘機やSAMによる妨害をEF-111Aレイブンによる強力な電子妨害で強行突破。精密誘導兵器による必殺の一撃を叩き込む。

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一連の航空攻撃でNATO軍は東ドイツ領内にある4個の航空基地を破壊した。その過程でSu-24 3ユニット、MiG-29 3ユニット、MiG-27 3ユニット、その他2~3ユニットを撃破した。これは大きな戦果であったが、それでも東ドイツ領内に配備されたWP軍航空戦力の20パーセントに満たない数を撃破したに過ぎなかった。

2Turn

US_B-52H_410NATO軍がバルト海沿岸の港湾都市リューベック(Lubeck 2924)を放棄し、ユトランド半島への進撃路が開かれた。

後から考えると、リューベックの放棄は愚策だったと思える。NATOとしてはリューベック、ハンブルクのラインで可能な限り阻止戦闘を展開し、WP軍の進撃を遅らせるべきだっただろう。無論、最終的に両都市の陥落は避けられないとしても、WP側の戦争資源を可能な限り長期間ユトランド半島の入口で消費させるのは悪い戦略ではない。WP軍としても勝利条件の関係上、ハンブルクを無視して前進するのは難しい。

WP軍はユトランド半島を席捲・・・、せず。ユトランド半島の付け根をそのまま西へ進んでハンブルクの西半分を攻撃する。これはNATO側にとってはラッキーだった。というのも、ユトランド半島に残っていた航空基地の一部はまだ機能しており、そこには第3Turnに米軍のF-15イーグルを含む戦闘機隊が登場することになっていたらからだ。

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何はともあれ、WP軍戦車部隊はハンブルク西半分に殺到する。さらに南ではハンブルクとハノーバーの間に広がるリューネブルガーハイデ(Luneburger Heide)自然保護区で遅退戦闘を行うNATO軍に対してWP軍が猛攻撃を加える。これらを守るNATO軍は雑多な編制の数個師団。スタックの内容が建制を無視したバラバラな内容になっているため、Deliberate Defense(計画防御)を選択できないのが辛い。Deliberate Defenseなら強制後退の結果を食らっても追加の損害により後退結果を無視できるのだが・・・。

WP軍の猛攻によりハンブルクは遂に陥落。さらにリューネブルガーハイデでもNATO軍部隊は後退を余儀なくされていく。
NATO軍は航空攻撃の目標を航空基地から地上部隊に変更する。B-52部隊も巡航ミサイル攻撃から通常爆弾に兵装を切り替え、F-111E/Fアードバーグの編隊と共同でWP軍戦車部隊に爆弾の雨を降り注ぐ。この攻撃でソ連軍戦車2個師団を事実上半身不随状態とした。

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NATO軍はハンブルクから後退し、エルベ川西岸からリューネブルガーハイデ西部に沿って戦線を形成する。勝利条件は第3Turn終了時にWP軍がウェザー川西岸に進入するのを阻止することなので、逐次後退しつつなんとかウェザー川の防衛ラインを阻止したp。

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つづく

RedStrike表紙


Red Strike(以下、本作)は、2023年にドイツのVUCA Simulationが発売したSLGである。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決で、ゲームスケールは1Hex=28km(戦略マップは280km)、1Turn=2日間で、1ユニット=大隊~師団、航空機は1ユニット=10~60機程度、艦船は主力艦1隻又はその他の艦艇数隻を表す。
今回プレイするのが、海空戦シナリオの1つである「B5.Miami 1989」。これは北大西洋における米ソ両海空軍の戦いを描いたシナリオで、ソ連側はSSBN4ユニットを「聖域」と呼ばれる北極海に送り込むことを目指し、NATO側はその阻止を目指す。
今回、このシナリオをVASSALで対戦プレイすることになった。筆者はNATO側を担当する。

前号までは --> こちら

2Turn

第1アクションステージ

SO_SSBN1_Typhoonソ連側がSSBNによる聖域への突破を行ってきた。聖域の入口では、NATOの「無敵艦隊」が居座っていたが、ソ連SSBNはNATO艦隊を無視して強引に聖域への突破を実施。NATO側も「目標撃沈の算なし」としてSSBNを放置(特にタイフーン型は対艦・対潜能力も強力なので、下手に手を出すと、反撃食らって酷い目に遭う可能性があった)。結果としてソ連SSBN3ユニットが聖域への突破に成功した。

写真06


NATO側は、前Turnに使わなかった航空偵察を使うことにした。狙いはソ連北部のNorthern Fleet航空基地である。航空偵察ポイントは2ポイントあるので2回偵察を試みることができ、なおかつ各々の成功率は60%と決して低い値ではなかった。しかしこの時はNATO側のダイス目が悪く、航空偵察は悉く失敗してしまう。

次にNATOが持ち出してきたのは巡航ミサイル。イージス艦や潜水艦、原子力巡洋艦が搭載している巡航ミサイルを次々とソ連本土の航空基地に撃ち込んだ。こちらは一定の成果を発揮し、ソ連航空基地に若干の損害を与えた。

写真07_Tomahawk_Block_IV_cruise_missile_-crop


US_CVN71_F-14A_VF84次にNATO側は空母機動部隊をソ連本土に接近させて、戦爆連合の攻撃隊を発進させた。F-14Aトムキャット1個中隊、F/A-18ホーネット2個中隊、A-6Eイントルーダー2個中隊、そしてEA-6Bプラウター1個部隊からなるアルファストライクチームである。米空母艦載機のほぼ全力出撃であった。

米軍機の接近を察知したソ連軍は迎撃機を発進させた。MiG-25フォックスバット2個中隊である。しかしフォックスバットは米艦載機のミサイル攻撃を受けて撃退され、米側攻撃隊に何ら損害を与えることができなかった。それでも爆装状態であったF/A-18の爆装を投棄させる効果はあった。

US_CVN71_A-6E_VA35なおもソ連本土上空に向って行く米軍機の編隊に対して、ソ連本土防空軍の地対空ミサイルが次々と発射された。米軍はEA-6Bプラウラーの電子妨害で対抗したものの、ついにその1発がプラウラーに命中。プラウラーの編隊は編隊離脱を余儀なくされてしまう。

生き残った米軍機編隊は、ソ連側の対空火器を掻い潜って爆撃を敢行する。しかし事前偵察を欠いた爆撃は正確さを欠き、僅かに飛行場に1打撃を与えたのみ。巡航ミサイル攻撃に比べても明らかに劣った戦果しか挙げられなかった。こうして米空母部隊による乾坤一擲のソ連本土空襲作戦は、甚だ中途半端な結果に終わったのである。

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第2アクションステージ

SO_Su-27_941IAP驕り高ぶった帝国主義者共に正義の鉄槌を下すべく、ソ連軍は猛烈な反撃を開始した。ソ連本土攻撃のためにノルウェー近海に接近してきた米空母部隊は、ソ連自慢の新鋭戦闘機Su-27フランカーの戦闘行動半径内に位置していたからである。

ただちにSu-27フランカー2個中隊に援護されたTu-22Mバックファイア2個中隊が発進していく。なお、本作のSu-27フランカーは、オリジナル版からエラッタにより能力が見違える程改善されているので、本作をプレイする際にはエラッタに注意して頂きたい。

閑話休題。
US_CVN71護衛戦闘機随伴してきたソ連側攻撃隊に対し、米空母を守るCAP隊も手出しができない。護衛戦闘機に挑戦した所で護衛を突破することはかなり困難だし、逆に数的優位に立っているソ連側護衛戦闘機に返り討ちに遭う可能性が高い。それならば下手に手出しはせず、ここは見送った方が良い。
無傷で米空母部隊を対艦ミサイルの射程内に捉えたバックファイアの編隊は、次々と対艦ミサイルを発射する。
再び米機動部隊の強力な防空システムが対艦ミサイルに対抗する。しかし今回はノルウェー近海へ進出する際に全艦を随伴させることができなかったため、防御の要となるSAGは僅か2ユニットしか存在していなかった。それでも米空母自体が強力なECM値を持っているため、これに対艦ミサイルを命中させるのは、ソ連側にとっても結構難事となる。
結局ソ連側爆撃隊は辛うじて米機動部隊に1発の命中を与えたものの、肝心の米空母には命中を与えることができず、護衛艦艇の一部に被害を与えたに留まった。

SO_CV_Kievソ連軍はなおも諦めない。今度は軽空母「キエフ」を使って攻撃を行ってきたのだ。「キエフ」は比較的長い射程の対艦ミサイルを装備しているので、NATO艦隊をアウトレンジできるためだ。しかしアウトレンジ攻撃を狙うのであれば、「キエフ」ではなくより攻撃力の大きい打撃巡洋艦である「キーロフ」を使った方は良かったように思うのだが・・・。まあ、良いか。
案の定、「キエフ」のミサイル値は僅かに4しかなく、そのミサイルは米機動部隊によって容易に排除されてしまった。

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第3アクションステージ

SO_Tu-22M3_194MRAP再びソ連側は大規模な攻撃隊を発進させて米機動部隊を襲った。今度は、Su-27フランカー2個中隊に護衛された、Tu-22MバックファイアとTu-16Kバジャー各2個中隊からなる計6個中隊の大攻撃隊である。米軍の迎撃戦闘機は、今回も反撃を見送った。
再び大量の対艦ミサイルが大空を覆った。米艦隊は強化されたECM値でこれを迎え撃つ。激しい戦い。しかし今回も米機動部隊の鉄壁の防御が威力を発揮し、ソ連側の対艦ミサイルは1発の命中を得ることもできなかった。

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3Turn

このTurnソ連側は唯一マップ上に残っていたSSBNであるデルタ型を聖域に向けて前進させてきた。これに対してNATO側も様々な手段で反撃を行い、ダメージを与えることには成功した。しかし最終的にはソ連SSBNがNATO対潜部隊の妨害を排除し、聖域に逃げ込むことに成功した。

ソ連基地航空部隊は、またもや米機動部隊を襲った。今度もSu-27フランカー2個中隊に護衛された、Tu-22MバックファイアとTu-16Kバジャー各2個中隊からなる計6個中隊の大攻撃隊である。
一方の米空母も今度は要撃戦闘機を発進させてソ連側攻撃隊を迎え撃つ。
Su-27フランカーとF-14トムキャット、F/A-18ホーネットとの戦い。年式ではフランカーの方が「若い」機体であったが、米軍機はより洗練された視認距離外ミサイルを搭載していたため、まず視認距離外戦闘で米軍が先手を取った。フランカーの半数が米軍機による視認距離外ミサイル攻撃によって撃墜又は強制帰還を余儀なくされた。
引き続いて接近戦を戦う両者であったが、さすがに接近戦ではSu-27は米軍機相手に互角以上の戦いを見せ、数的劣勢にも関わらず米軍機相手に自機とほぼ同等の被害を与えた。そしてSu-27の奮戦があったため、ソ連側爆撃編隊は無傷で米空母部隊をその対艦ミサイルの射程内に捉えた。

再び大量のミサイルが大空を覆った。米艦隊は強化されたECM値でこれを迎え撃つ。激しい戦い。今回はソ連側も2発に命中を得ることに成功した。しかし被弾したのはいずれも空母の護衛艦隊であり、空母自体に対する命中弾はなかった。
結局ソ連軍は、彼ら自身が渇望していた米空母に対するミサイル命中を遂に達成できなかった。

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結果

最終的なVPは以下の通りである。

 ・ソ連SSBN計4ユニットによる聖域到達 :+28VP
 ・NATO側のダメージが合計16ヒット :+32VP
 ・ソ連側のダメージが合計26ヒット :-26VP
  合計:34VP

 ソ連側決定的勝利



感想

得点的には完敗であった。ただ、個人的には、このシナリオでNATO側が勝利するのはかなり困難だと思える。ソ連側SSBN4ユニットのうち半数が聖域に突破できれば、それだけでソ連側の勝利条件ラインを超えられる。NATO側が損害覚悟で阻止戦を行っても、1損害当たりのVPがNATOの方が不利なので、消耗戦はNATOにとって不利である。

ただし反省点も多い。例えば巡航ミサイルの使い方とか、空母の守り方については、もう少し工夫の余地があっただろう。特に米艦隊が1ヶ所に集結するとほぼ無敵状態になるので、米艦隊は下手に動き回るよりも拠点防御に徹した方が良いのかもしれない。

いずれにしても今回のプレイで海戦ルールも概ね分かってきたので、別のシナリオも試してみたいと思う。

写真12_CVN-71





幻の東部戦線: 第二次大戦後のドイツ再軍備と冷戦

RedStrike表紙


Red Strike(以下、本作)は、2023年にドイツのVUCA Simulationが発売したSLGである。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決で、ゲームスケールは1Hex=28km(戦略マップは280km)、1Turn=2日間で、1ユニット=大隊~師団、航空機は1ユニット=10~60機程度、艦船は主力艦1隻又はその他の艦艇数隻を表す。
このゲームはこれまでにも何度か紹介してきたが、今回は初めて海戦シナリオに挑戦してみた。本作には多数のシナリオが含まれているが、そのうちいくつかは海空戦専用シナリオになっている。これらのシナリオには陸戦部隊が一切登場せず、専ら艦船と航空機のみが登場する(航空基地は別)。
今回プレイするのが、海空戦シナリオの1つである「B5.Miami 1989」。これは中級向けシナリオの1つだが、戦略マップしか使用せず、戦術マップは一切使用しない。
この「マイアミ1989」は、北大西洋における米ソ両海空軍の戦いを描いたシナリオで、ソ連側はSSBN4ユニットを「聖域」と呼ばれる北極海に送り込むことを目指し、NATO側はその阻止を目指す。
NATO側は空母「セオドラ・ルーズベルト」とその空母航空団、そして支援水上部隊、潜水艦部隊と若干の航空兵力が登場する・ソ連側は4ユニットのSSBNの他、攻撃型原潜5ユニット、水上打撃部隊、基地航空部隊が登場する。いわば「役者がそろった」訳だ。

今回、このシナリオをVASSALで対戦プレイすることになった。筆者はNATO側を担当する。


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1Turn

第1アクションステージ

まずは両プレイヤーがダイスを振って活性化できる海軍ユニット数を決める。本作では、各アクションステージに両プレイヤーがダイス(D10)を振り、出目の半分(切り上げ)が当該アクションステージに活性化できる艦船ユニット数になる。今回、ソ連側の出目は4、NATO(筆者)側は9であった。従ってこのアクションステージにはソ連側は2ユニット、NATOは5ユニットまでの海軍ユニットを活性化できる。

SO_SSN1_Alfaソ連軍は、まずアルファ型原潜を活性化させた。最大速力40ノット以上の超高速原潜として有名だが、本作でもアルファ型の高速性能は表現されており、その移動力は110に達する。ちなみに戦略マップでは1Hex移動する際に10MPを消費する。とはいっても戦略マップ上であってもアルファ型の移動力は11に達し、他艦の追随を許さない。

余談だが、本作ではソ連艦の移動力はNATOのそれよりも大きくなっており、例えばNATOの空母は移動力40が一般的なのに対し、ソ連のキエフ級空母、キーロフ級巡洋戦艦は移動力100。つまり米空母の2.5倍である。カタログスペックでは両者の最大速力に大きな差は示されていない(共に30kt前後)なので、なぜソ連艦の移動力が極端に大きな値になっているかは不明である。

閑話休題。アルファ型潜水艦は米機動部隊を求めて索敵を実施したが、運悪く米空母を発見できなかった。その後もオスカー型巡航ミサイル原潜、Il-38哨戒機、Tu-142哨戒機等もNATO側水上部隊を求めて索敵を行ったが、いずれも索敵に失敗した。

SO_Tu-16K_574MRAP_1業を煮やしたソ連側は、索敵攻撃隊を発進させた。対艦ミサイル装備のTu-16Kバジャー2個中隊を発進させたのである。これで敵艦を発見できなければ、ミサイルを抱えたまま帰投しなければならない。あるいは危険を避けるためにミサイルを投棄するのか・・・?
ソ連軍にとっては幸いなことに、バジャーの編隊は遂にレーダーによってNATOの対潜水上部隊を発見した。即座に対艦ミサイルが発射された。本作の戦闘システムは、まず攻撃側がダイス(D10)を振り、攻撃力以下の出目を出す必要がある。続いて防御側はECM判定のためのダイス(D10)を振る。その時の出目がECM値未満の場合、ECM値とダイス目の差分だけ命中マーカーを左にシフトさせる。と、言葉に書くと面倒だが、実際の概念はそれほど難解なものではない。

US_SAG6_Ticonderogaここで問題になるのが、SAGの存在である。SAGとはSurface Action Group(水上戦闘グループ)のことで、本作では広域防御能力を持った水上部隊のことを指す。このSAGが同一Hexに存在していると、SAGが1ユニットあたりECM判定時にDRM-1が適用される。言い方を変えれば、SAG 1ユニットにつきECM値が+1されると考えるとわかりやすい。
今回、攻撃目標となったNATOの対潜部隊にはSAGが3ユニット含まれていた。これはNATO部隊のECM値が+3されることと同義になる。しかも、この時のNATO対潜部隊にはECM値6を持つタイコンデロガ級イージス巡洋艦が含まれていた。つまり事実上ECM値が9に相当することになる。
結果、バジャー2ユニットの攻撃がいずれもECM判定で無効化され、ミサイル攻撃は効果なしとなった。

SO_Tu-22M3_194MRAPソ連軍は、引き続いてTu-22Mバックファイア2個中隊からなる攻撃隊を発進させた。こちらは先ほどのバジャーとは違って対艦ミサイル値9を誇る精鋭である。
しかしこの時もNATO側のECM判定が功を奏し、バックファイアの放った対艦ミサイルは全て無効化された。まさに

「イージス艦、恐るべし」

である。

写真01


続いてNATO側の移動である。NATO側では移動可能なユニット数が5ユニットなので、先ほどからソ連爆撃機によるミサイル攻撃を受けていた対潜部隊を一旦後退させることにした。そして勝利条件となるSSBNの突破を防ぐ位置に移動する。その際、目標地点に位置していたエコー型巡航ミサイル原潜に集中攻撃を加えてこれを撃沈した。

さらにノルウェー海軍所属のP-3C哨戒機もソ連アルファ型原潜を攻撃し、これに2ヒットを与えた。

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第2アクションステージ

SO_SSGN1_Charlie2ソ連軍のチャーリー2型巡航ミサイル原潜が米空母部隊に対する索敵を実施し、遂にこれを発見した。ちなみに本作の索敵システムでは、一旦発見された海上ユニットは、Turn終了時点で敵の探知範囲外になった時点で非発見状態に戻ることになる。だからソ連側としては、このTurnの間に発見対称となったNATO海上ユニットを攻撃するのが得策である。
チャーリー2型は即座に対艦ミサイルを発射したものの、さすがに米空母の防御は固く、ミサイルを命中させることはできなかった。

さらにソ連軍は残った移動可能ユニット容量を使ってタイフーン型SSBNを出撃させてきた。次のTurnに聖域への突破を狙っているのは明らかである。

さらにソ連軍はバックファイアとバジャー計4個中隊でNATOの対潜部隊をミサイル攻撃してきた。NATO艦隊の防御力は相変わらず強固であったが、それでも毎回攻撃を阻止することはできずに遂にタイコンデロガ級巡洋艦が被弾してしまう。防御の要であるタイコンデロガ級が被弾すると艦隊全体のECM値は大幅に減少してしまう。その隙を突いて発射されたバジャー隊の対艦ミサイルを受けて、遂にタイコンデロガ級巡洋艦が撃沈されてしまった。
ソ連側にとっては初めての大戦果である。

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ようやくNATO側の手番である。NATO側は対潜哨戒機や原潜部隊でソ連潜水艦隊を攻撃し、アルファ型原潜1ユニットとオスカー型巡航ミサイル原潜1ユニットを撃沈した。
さらに米空母「セオドラ・ルーズベルト」を含む空母部隊を前進させ、先にミサイル攻撃を受けていたNATO対潜部隊と合流した。これによってNATO水上部隊の主力が一か所に集結することになり、その防御力がまたもや強化されることとなる。

写真04


第3アクションステージ

第3アクションステージでは先攻後攻が入れ替わり、非主導権側(今回はNATO側)が先に移動することになる。今回NATO側は海軍ユニット移動判定のダイス目が良く、海軍ユニット5ユニットが活性化できるようになった。

NATO側はまず後方に残っていた水上部隊を前進させて空母部隊に合流させた。これでNATO側の水上部隊は全て同一Hexに集結することとなった。これだけ集結していれば、ソ連側としても損害を与えるのは非常に困難となる。

US_SSN1_LosAngelesそして先ほど前進してきたソ連のタイフーン型SSBNに対して集中攻撃を開始した。まずノルウェー海軍のP-3Cが攻撃を実施したが、これは外れ。続いて米海軍自慢の「688型」ロサンゼルス級攻撃型原潜2ユニットを投入してタイフーン型SSBNを攻撃する。しかしさすがにタイフーン型SSBNは強く、ロス級の攻撃はいずれも失敗。逆にタイフーン型による反撃によりロス級1ユニットが命中1を受けてしまう。そのロサンゼルス級原潜は、この後でTu-142哨戒機による攻撃を受けて、さらに1発の命中を受けてしまう。

この不幸なロサンゼルス級原潜は、この後のTurnでさらに1発の命中を受け、遂に撃沈されてしまう。

写真05


つづく



幻の東部戦線: 第二次大戦後のドイツ再軍備と冷戦

240324_RedStrike_シナリオB5

Red Strikeは、2023年にドイツのVUCA Simulationsが発売したシミュレーション・ウォーゲームです。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決で、世界中のウォーゲームメーカーから発売されてきた鉄板テーマです。
Red Stormはこのテーマをフルマップ2枚+戦略マップ、カウンター2000個以上で再現するビッグゲームとなっています。

今回、Red Stormの中ではユニークな位置づけの中規模シナリオの1つである「B5.Miami 1989」をプレイしてみたので、その内容を動画化してみました。このシナリオは、北大西洋での米ソ海軍の激突を描いた海空戦シナリオです。このシナリオでは、地上部隊が全く登場せず、両軍とも艦船と航空機ユニットのみが登場してきます。
今回、このシナリオをVASSALでプレイしてみました。うp主はNATO側を担当しました。
「Red Strike」の新たな側面を楽しめる海空戦シナリオの醍醐味をお楽しみください。



幻の東部戦線: 第二次大戦後のドイツ再軍備と冷戦

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