もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 第3次世界大戦

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背景

時に1990年、ソ連の支援を受けた共産ゲリラがジャマイカ、エルサルバドル、コスタリカ、ハイチ、ドミニカ共和国で権力を掌握した。キューバ陸軍の大部隊がこれらの諸国における反革命勢力を一掃すべくソ連の輸送船に乗って現地へ向かう。対する米軍も緊急展開部隊(RDF)をホンデュラスとパナマに展開。さらに大統領命令で戦闘部隊がフロリダ南部に集結した。

斜陽のソ連共産党書記長は米国に対し「キューバ・ニカラグアへの侵攻はソ連本土への侵攻とみなす」と声明を発表。実際、数千名のソ連地上部隊及び航空機数個中隊が既にキューバ各地に展開していた。

さらに最近になって2つの大規模なソ連輸送船団がキューバに到着していた。CIAは、それらの船団には通常の軍事物資に加えてSS-20及びスカッドB弾道ミサイルが搭載していたことを大統領に報告。スパイの報告によれば、これらの船団はニカラグアとコスタリカを目指しており、そこからパナマ運河に対して弾道ミサイルによる狙いをつけるという。

米統合幕僚本部(JCS)は南方軍司令長官(CINCSOUTH)に対してこれらの船団を目的地に到達する前に撃破することを命令した。さらにJCSはCINCSOUTHに対して艦隊海兵部隊をカリブ海の主要部に派遣し、反革命勢力を支援することも求めていた。

SetUp

という感じで開始されたフリートシリーズ最終作「3rd Fleet」のシナリオ11「キューバミサイル危機(1990年代バージョン)」だ。空母、戦艦、ミサイル巡洋艦、原子力潜水艦といった現代海戦の花形が、カリブ海で激しく戦う派手目のシナリオである。

両軍の兵力をざっと見てみると、まずソ連軍。
トビリシ級(現アドミラル・クズネツォフ級)の空母が1隻、キエフ級軽空母1隻を主力とし、キーロフ級、スラヴァ級、ソブレメヌイ級、ウダロイ級といった水上艦艇が登場する。水上部隊の戦力は、空母2、ミサイル巡洋艦5、駆逐艦5、フリゲート艦2、コルベット艦数隻となる。水上部隊は4個群に分かれており、その内訳は輸送船団2個、空母「スベルドルフスク」を主力とするグループ(以下、スベルドルフスク機動群)、軽空母「キエフ」を主力とするグループ(以下、キエフ機動群)となっている。
他にはオスカー型巡航ミサイル搭載原潜が1隻、攻撃型原潜が2隻(アクラ型、ヴィクター1型)が登場。そして基地航空部隊としてSu24フェンサー、Su27フランカー、Tu26バックファイア各1個中隊と偵察機や電子戦機が登場する。他にキューバ軍が基地航空部隊(MiG-19、MiG-21、MiG-23)、ディーゼル潜水艦、ミサイル艇を率いて登場する 。

対する米軍は、ニミッツ級の原子力空母「ジョージワシントン」と通常動力の大型空母「アメリカ」が登場。戦艦「ニュージャージー」も老骨に鞭打って登場する。それを護衛する水上部隊は、ミサイル巡洋艦5(内イージス艦3)、ミサイル駆逐艦6(内イージス艦1)、フリゲート艦5といった陣容。他に強襲揚陸艦が11隻登場し、その中で最新鋭のワスプ級LHD「キアサージ」には、VMA-232所属のAV-8Bハリアーが搭載され、防空の傘を提供している。水上部隊は4群に分かれ、「ジョージワシントン」の空母機動部隊(以下、ワシントン機動群)、「アメリカ」と揚陸艦5隻を含む空母機動部隊(以下、アメリカ機動群)、「ニュージャージ」と「キアサージ」以下6隻の揚陸艦からなる水上打撃部隊(以下、ニュージャージ機動群)、そして海兵遠征部隊を輸送する輸送船団からなる。
基地航空部隊は、パナマ運河を防衛するF-15Cイーグル1個中隊、フロリダ州ホームステッド空軍基地に展開するF-16Cファルコン2個中隊、バミューダとキーウェストに展開するP-3Cオライオン2個中隊、海兵隊のF/A-18C/Dホーネット2個中隊とEA-6Bプラウラー1個中隊、そして旧式のA-7Eコルセア1個中隊がカリブ海各地に展開する。さらにエグリン空軍基地からは当時漸く正体が知られるようになった最新鋭ステルス攻撃機F-117Aナイトホーク1個中隊が登場する。
最後に原潜部隊は最新鋭のシーウルフ級「シードラゴン」とベテランのスタージョン級「ホークヴィル」、そしてさらに古いパーミット級の「グリーンリング」が登場する。

シナリオの目的は、両軍とも自軍輸送船を目的地に届け、相手輸送船団を阻止すること。その過程で敵の兵力に最大限の打撃を与えることとなる。

ゲームの長さは6Turn(2日間)。今回筆者はソ連軍を担当した。

1st Turn

キューバ北東海域で米空母「アメリカ」機動部隊がソ連機動部隊を発見。攻撃隊を発進させた。しかし、ソ連空母「スベルドルフスク」を発進したSh-27B、MiG-29B等の艦載戦闘機が米攻撃隊を迎え撃つ。空中戦で勝利したのはソ連側戦闘機隊で、米空母艦載機は約10機の損失機を出して撃退された。

米艦艇はキューバ国内の航空基地に対して次々と巡航ミサイルを発射した。戦艦「ニュージャージ」、イージス巡洋艦「ゲティスバーグ」「プリンストン」、攻撃型原潜「シードラゴン」等。しかしダイス目が振るわずミサイルによる航空基地への被害はなし。

F-117_Nighthawk


業を煮やした米軍は、遂に虎の子である最新鋭のステルス攻撃機F-117Aナイトホークを投入してきた。フロリダ半島の基地を発進した第4450戦術航空群所属のナイトホーク部隊は、キューバの首都ハバナの航空基地を攻撃した。レーダー網をかいくぐって侵入したステルス攻撃機は見事に爆撃を成功させ、ハバナの航空基地を使用不能に追い込んだ。

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2nd Turn

ニカラグアのソ連軍航空基地が、米空母「ジョージ・ワシントン」を発進した空母艦載機の集中攻撃を受けて壊滅してしまった。キューバでもハバナのソ連軍基地が米空軍機の猛爆を受けて壊滅寸前になってしまう。一方的にやられる一方のソ連軍だったが、対空砲火でF-16戦闘機をステップロスしたのがせめてものの慰めである。

SA-13


3rd Turn

ハバナのソ連軍基地はついに壊滅した。その一方でキューバ東方海域で合同し空母2隻体制となったソ連艦隊に対し、米空母「アメリカ」艦載機が戦爆連合による攻撃を仕掛ける。しかしここでもソ連軍艦載機による防空戦闘が威力を発揮し、米空母艦載機は撃退されてしまう。

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4th Turn

海戦2日目。キューバ東方海域で米ソ艦隊が激突する。

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米艦隊がフリゲート艦4隻を分離し、対艦ミサイルによる攻撃を仕掛けてきた。その攻撃を受けてキューバに向けて航行中のソ連弾薬輸送艦が撃沈されてしまう。
それに対するソ連軍は、潜水艦の攻撃によって米フリゲート艦1隻が沈没。さらにソ連空母「スベルドルフスク」を発進したMiG-29Bフルクラムの編隊が、キューバを発進したSu-24フェンサーの編隊と合同で米フリゲート艦1隻を爆撃し、これを撃沈した。

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5th Turn

ソ連軍の輸送船団は損害を出しながらも目的地に到着して荷揚げを開始した。その沖合では米ソの艦隊がなおも激しく戦っている。
米軍の残存フリゲート艦2隻に対して、ソ連の主力艦隊が果敢に接近戦を挑む。原子力重巡「キーロフ」、ミサイル巡洋艦「スラヴァ」等、重装備艦多数を持つソ連艦隊に対し、僅か2隻の米フリゲート艦は対抗するべくもなかった。2隻は集中攻撃を受けて撃沈されてしまう。

写真05


6th Turn

最終Turnである。なおも執拗に攻撃してくる米潜水艦に対してソ連艦隊が反撃を実施。最新鋭のシーウルフ級攻撃型原潜「シードラゴン」はソ連艦隊の攻撃によって海の藻屑となった。

余談だが「シードラゴン」という艦名は架空のものであり、シーウルフ級に「シードラゴン」という艦名の艦はない。

USS_Jimmy_Carter_SSN_23


結果

米軍のVP

・航空機5ユニット撃破:15VP
・航空基地5ヶ所破壊:55VP
・輸送船等の入港:68VP
  合計 :137VP

ソ連軍のVP

・撃沈:攻撃型原潜1隻、フリゲート艦4隻
    掃海艇1ユニット、ミサイル艇2ユニット:23VP
・航空機1ユニット撃破:3VP
・輸送船等の入港:57VP
  合計 :83VP

差が50点で、シナリオ固有の勝利条件表に当てはめると、「ソ連軍の実質的勝利」となる。

写真06


感想

「3rd Fleet」の中では比較的規模の大きいシナリオだが、シリーズの他作品の中級シナリオぐらいの規模感であった。プレイ時間も4時間ほどで、比較的手軽にプレイできる。
今回のプレイではソ連側の勝利となったが、米軍としてはソ連艦隊に対してもっと激しくパンチを浴びせることが必要だったということだろう。兵力に勝る米軍としては、ソ連艦隊に対して艦隊決戦を挑む必要があるということだ。

いずれにしてもフリートシリーズは面白い。水上艦、潜水艦、航空機といった現代海戦で主役を演じるそれぞれの役割をゲームの中で見事に表現している。ルールも必要以上に複雑化している訳ではなく、個々のシステムが洗練されていてプレイしやすい。

「フリートシリーズはやはりおもしろい」というのが今回の感想だ。

Blue Water Navy Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編
Tu-95/142ベア ヤコヴレフYak-38 ソ連/ロシア原潜建造史 ソ連/ロシア空母建造史



Air & Armor(以下、本作)は、米国Compass Games社が2024年に発表したSLGで、テーマは1980年代における西ドイツでの地上戦だ。元々は米国West End社が1985年に発売したゲームで、今回の作品はオリジナルから約40年後に発売されたリメイク版になる。

基本システムについては、以下の動画で既に紹介済なので、ご覧頂きたい。



RU_DTB_27G_4_4今回プレイしたシナリオは、シナリオ4.The Last Reserveである。このシナリオは、開戦劈頭前線を撃破したソ連第8親衛軍がNATO第7軍団を完全に撃破すべくその後方地域へ突破しようとする状況を再現するものである。ソ連軍の主力は軍の予備兵力である第27親衛自動車化狙撃兵師団と空中機動大隊、NATOは急遽投入された西ドイツ第54郷土防衛旅団と第3Turnに登場する第27装甲旅団である。

今回の参加者は2名で筆者はソ連軍を担当した。



状況

WG_54Hsb_7_5初期配置されているのは、西ドイツ第54郷土防衛旅団で、マイン川沿いに配置されている。マップ中央の都市はヴュルツブルクである。ソ連軍はマップ東端より侵入してくる。ちなみにマイン川の橋梁はNATO軍が事前に破壊できる。恐らくヴュルツブルクの中にある橋梁を除いてすべて破壊されているだろう。そして第3Turnに西ドイツ第27装甲旅団が増援として登場してくる。

写真01

次に勝利条件を見てみよう。西ドイツ軍の増援が登場してくるマップの南西端から第27親衛自動車化狙撃兵師団を突破すればソ連軍が決定的な勝利する。まあそこまで行くのは結構大変だと思うので、それ以外の勝利条件を確認すると、まずヴュルツブルクへの補給線が残っているとNATO側が勝利得点を獲得する。さらに国道19号線の西側にソ連軍が突破するのに失敗すると、NATO側が決定的勝利となる。

写真02


この状況でソ連軍たる筆者は以下のような方針を立てた。
1)主攻勢はマイン川の南側で行う。戦車連隊を含む3個連隊を同方面に投入し、NATO防衛線の突破を図る
2)一部兵力(1個連隊)をマイン川の北側に投入し、NATO側防衛戦力の分散を図る。

写真03


さてさてどうなることやら・・・。

SetUp

NATO軍の展開はおおむね予想通りだったが、主戦力をマイン川の南岸部に集中してきたのが違っていた。第27親衛自動車化狙撃兵師団は西ドイツ郷土防衛旅団が全力展開している正面に突入することになるので、かなりの出血を強いられそうだ。

写真04


1-2Turn

RU_68G_27G_5_4当初の予定通りソ連軍は二手に分かれて進撃する。第243自動車化狙撃兵連隊がマイン川を渡河してマイン川北岸を迂回するコースをとる。一方主力の3個連隊(戦車連隊1個、自動車化狙撃兵連隊2個)が西ドイツ軍の正面から突入する構えをとる。

写真05


3Turn

正面からソ連軍3個連隊がNATO防衛ラインに対して攻撃を加える。NATO側の防御射撃によって主に歩兵戦闘車部隊に損害が出たが、兵力に勝るソ連軍はNATOの防衛ラインを突破した。

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WG_34_12_9_9一方、NATO側の増援部隊である西ドイツ第12装甲師団麾下の第34装甲旅団が登場してきた。レオパルド2戦車やマーダー歩兵戦闘車など、最新鋭の装備を誇る部隊である。彼らの前進を止めるため、ソ連第900航空突撃旅団の歩兵部隊が西ドイツ装甲部隊の前面に立ちふさがる。もとより西ドイツ軍を阻止することはできないが、少しでも彼らの前進を遅らせるのが目的だ。

写真07


4Turn

WG_Tornado防衛ラインを突破したソ連軍主力がマイン川に沿って西進し、ビュルツブルグに向かう。西ドイツ第34装甲旅団も広く展開してソ連軍の前に立ちふさがる。西ドイツ空軍のトーネード攻撃機が飛来し、低空爆撃によってT-80戦車2ステップが失われた。

写真08


5Turn

ソ連軍の主力がビュルツブルグ市内に突入した。ビュルツブルグに向かっていたNATO軍のマーダー歩兵戦闘車2ステップが、Su-17戦闘攻撃の爆撃によって撃破されてしまう。ソ連軍はビュルツブルグの主要部を占領したが、まだ西端部分にNATO軍の一部が布陣していた。

写真09


6Turn

RU_Su17反撃を行おうとしている西ドイツ軍部隊に対し、ソ連軍の砲兵部隊が先制射撃を行った。レオパルド2戦車部隊に集中射撃を行い、1ステップを失わしめ、さらに残り部隊を足を止める。
ソ連軍BMP部隊はビュルツブルグ市の西端部に残る西ドイツ軍歩兵部隊を攻撃し、これを撃破。ビュルツブルグ市全体をソ連軍が占領した。
さらにその西方では、マイン川北側を迂回してきたソ連軍自動車化狙撃兵連隊がマイン川を再渡河してNATO軍の背後に回り込む。この時点でNATO側は勝機なしとして投了した。

写真10


感想

RU_28_27G_5_6プレイ時間は丁度5時間ぐらいだった。Air & Armorの中では小規模なシナリオだが、展開が劇的で面白い。このシナリオも序盤の兵力展開と中盤の激突。そしてソ連軍が前線を突破した後のNATO増援部隊との対決など、それぞれの場面に見せ場がある。本文を読んでいるとアッサリと終わったような印象を受けるかもしれないが、個々の戦闘場面は結構燃える。今回勝利に終わったソ連軍も決して無傷というわけではなく、歩兵戦闘車10ステップ、戦車2ステップ、その他2ステップを失うという損害を被っていて、結構激しい射撃戦を戦ったことがわかる。

Air & Armorには他にも色々なシナリオがあり、プレイするのが楽しみだ。

BMP-2


コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』 NATO Designer Signature Edition
幻の東部戦線 機動の理論 Duel Book 18-M1 Abrams vs T-72 Ural Duel Book 75-Bradley vs BMP

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Air & Armor(以下、本作)は、米国Compass Games社が2024年に発表したSLGで、テーマは1980年代における西ドイツでの地上戦だ。元々は米国West End社が1985年に発売したゲームで、今回の作品はオリジナルから約40年後に発売されたリメイク版になる。

基本システムについては、以下の動画で既に紹介済なので、ご覧頂きたい。



今回プレイしたシナリオは、シナリオ7.The Wolf's Jawsである。このシナリオは、開戦劈頭奇襲突破に成功して敵中奥深くに進出したソ連第39親衛自動車化狙撃兵師団に対し、NATO軍3個旅団が反撃を加えるというもの。NATO軍は米軍2個旅団、西ドイツ軍1個旅団が登場する。それに対してソ連軍も第39自動車化狙撃兵師団を救援すべく第57親衛自動車化狙撃兵師団が追従してきている。果たして戦いの結末は如何?

今回の参加者は計4名で筆者は米軍を担当した。


状況

先にも述べた通り、このシナリオではソ連軍が2個師団、NATO側が3個旅団が登場する。その大雑把な配置は以下の通りだ。

写真01


図に示した通り、ソ連軍第39親衛自動車化狙撃兵師団(39GMRD)は、NATO軍の3個旅団に包囲されている。それに対してソ連軍は増援の第57親衛自動車化狙撃兵師団(57GMRD)が戦場に向けて急進している。

ここで本シナリオの勝利条件を見てみよう。NATO軍は39GMRDを撃破し、ソ連軍のこれ以上の進撃を阻もうとしている。一方のソ連軍は、39GMRDを救援し、さらにマイン川南方への突破を企図している。もう少し具体的に書くと、シナリオ終了時点でアウトバーン第3号の南にソ連軍ユニットが1個でも位置していればソ連側の決定的勝利となり、アウトバーン70号と同7号よりも南に位置している39GMRDのユニットは、1Stepにつき1VPを獲得する。要するにソ連軍39GMRDが現在地を死守できれば、ソ連軍はかなり多くのVPを得る可能性がある。

写真02


1Turn

US_1_3_9_9米軍は第1機械化旅団をソ連39GMRDに向けて前進させていく。39GMRDを徐々に追い詰めて戦力を減らしていく作戦だ。旅団と師団の戦いになるので、兵力的には39GMRDの方が有利だ。米軍の強みは個々のユニットの質的優位と砲兵火力の優越である。そこで早急な攻撃は行わず、周囲を押さえつつ砲兵火力でソ連軍部隊を撃破する方針である。対砲兵射撃によって早くも39GMRDのロケット砲大隊(BM-21ロケット砲車輛x18)を撃破した。意気上がる米軍部隊。

しかし・・・、
ソ連軍は予想外の行動に出た。守りを固めて米軍を迎え撃つと思ったソ連軍は、何を思ったか道路を伝って南の方に走り始めた。国道26号線を伝ってマイン川へ進んでいく。
これはシマッタ
マイン川沿いの主な橋梁はすべて落していたので、同方面からの渡河はないものと踏んでいて守りを固めていなかったのだ。しかし彼らは自前の工兵橋梁によってマイン川を渡河する作戦に出てきたのだ。完全に裏をかかれた米軍なのであった。

写真03
写真04

2Turn

US_AH-1ソ連軍39GMRDはマイン川河畔に到達した。さらに一部のソ連軍部隊がフェリーによって川を渡ってマイン川対岸に前進する。その後方~米第1機甲旅団と西ドイツ第35走行擲弾兵旅団が追う。AH-1コブラ攻撃ヘリの部隊が対岸に渡ってきたソ連戦車部隊を攻撃する。ミサイル攻撃によってソ連戦車数両が川向うで炎上する。

写真05


3Turn

WG_Alphajetついに39GMRDはマイン川に橋梁を架けた。橋を渡って続々と川の対岸にソ連軍部隊が殺到する。一歩遅れた形のNATO軍であったが、これ以上の渡河を阻止すべく虎の子の航空戦力を橋梁攻撃に投入する。敵戦闘機とSAMの妨害を突破して飛来したNATO軍機は、西ドイツ空軍のF-4Fファントムと軽攻撃機アルファジェット。F-4Fは攻撃力が大きいので橋梁を爆破するのにあまり不安がなかったが、攻撃力の乏しいアルファジェットなら攻撃成功率はかなり低い(20~30%)。飛来した攻撃機がアルファジェットだった時点で諦めかけていたNATO軍プレイヤーだったが、アルファジェット隊は見事に橋梁爆破に成功した。

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感想

RU_15G_39G_5_4今回は時間の関係でここで終了とした。プレイ時間は約8時間である。今回プレイしたシナリオは本作の中では中規模なシナリオであったが、それでも半分も進めることができなかった(フルターンでは全7Turnである)。ちなみに今回の記事では触れなかったが、マップのもう一方の端では、増援に現れたソ連57GMRDと米第2機械化旅団との交戦が始まっていた。

今回のプレイは、ちょっとスキを突かれた形になってしまって残念な結果に終わってしまった。橋を落としていたので川のラインを絶対視したのが失敗だった。道路を使えば工兵隊が簡単に河畔にたどり着けるし、工兵隊が河畔にたどり着ければ、渡河はさほど困難ではない。今回のシナリオではそれを思い知らされる結果となってしまった。

まあ、今回の戦いは失敗したが、別のシナリオで雪辱を果たしたいと思っている。

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コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』 NATO Designer Signature Edition
幻の東部戦線 機動の理論 Duel Book 18-M1 Abrams vs T-72 Ural Duel Book 75-Bradley vs BMP

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コマンドマガジン Vol.181『北海道侵攻』 「北海道侵攻」は、2025年に発売されたコマンドマガジン181号の付録ゲームで、1990年代にソ連軍が北海道に侵攻したケースを扱った仮想戦ゲームだ。元々は1988年に翔企画からSSシリーズの1作品として発売された同名作品のリメイク版である。今回のコマンドマガジン版には、SSゲームに含まれていた北海道の地上戦ゲーム以外に、北海道周辺での海上戦闘を描いた「パシフィックヒート」も含まれている。
今回は、その中から地上戦ゲームをソロプレイしてみた。なお、「北海道侵攻」の地上戦ゲームを以後「本作」と呼称する。

前回までの展開は--> こちら

5Turn

RU_79_DTR_1085天候は荒天。航空支援がないのはどちらにとって益があったか・・・?
それはとにかくソ連軍3個師団が北海道中枢部に向けて突進していく。激しい戦いでソ連側機甲部隊もかなりの損害が出たが、SDFもソ連軍の圧力に耐えられず、防衛ラインを一歩後退せざるを得ない。もう石狩平野は目前だ

写真09


6Turn

天候は晴天。SDFが制空権を握った。ソ連軍はなおも石狩平野に向けた猛攻を加える。一部では虎の子のスペツナズまで投入して突破を図った。SDFは現戦線から半歩後退し、ついに虎の子第7師団を前線に投入した。

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7Turn

JP_7_71CT_765天候は曇天。SDFが制空権を握った。地上戦は明らかに力押しの様相を見せている。兵力に勝るソ連軍であったが、異なる師団で共同攻撃できないルールのため、その兵力優位を生かし切れていない。それでもSDFの損害は徐々に嵩んでいく。今までは少しずつ下がりながら損害の回復を図っていたSDFであったが、戦場が石狩平野に入ってきて、最早下がる余地はない。ようやく増援で現れた米軍部隊と、本土から青函トンネル経由で北海道に上陸した第9師団の部隊と共に、最終防衛ラインを整える。

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8Turn

JP_3TFS_3AW_540標準ゲームの最終Turnである。もはやソ連側に勝機は乏しいが、それでも全力攻撃を加える。札幌前面では、ソ連軍第45親衛自動車化狙撃兵師団とSDF第7師団が激しい戦車戦を繰り広げる。双方とも2ステップずつを失ったが、ソ連側は唯一の戦車連隊が壊滅、第7師団は保有する3個連隊が全てステップロスするという大損害を被った。その他の戦線でもソ連軍は激しく攻撃をし続けるが、SDFの防衛線を破ることができなかった。そうこうしている間に日米の航空部隊が空を覆い、前線で戦うソ連軍部隊の上に爆弾の雨を降らせた。これらの航空攻撃で、ソ連軍第79自動車化狙撃兵師団、同第343師団、同194師団がいずれも大損害を被り、さらに先にSDFと激しい戦車戦を戦った第45親衛自動車化狙撃兵師団はさらなる損害を被って事実上攻撃能力を失った。

SDFは第9師団に続いて増援で到着した第10師団、さらに米第25師団等で戦線を立て直し、その間、損害を被った第7師団を札幌付近に後退させて兵力の回復を図った。

この時点で札幌、千歳、苫小牧に接敵できなかったソ連軍の敗北が確定した。

写真12


9Turn

最後まで結果を見届けたいので、もう少しゲームを続けよう。
このTurn天候は晴れ。SDFは第11師団と第5師団が日高方面で反撃を行い、損害を被りつつも第11師団が日勝峠まで進出した。

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10Turn

JP_1Abn_122第1空挺団が旭川北方に降下した。ただちに深川~旭川間の国道40号線に布陣し、ソ連軍の連絡線を遮断する。そして岩見沢東方ではSDF乾坤一擲の大反撃が開始されていた。大規模な航空爆撃の後、SDF第7師団が突破展伸を測る。しかしソ連軍決死の防御によって突破はならず。岩見沢付近で攻勢を止められていた。

写真14


11Turn

US_3MAF_1_10125旭川付近に降下したSDF第1空挺団は、ソ連戦車部隊の猛攻を受けて壊滅してしまう。しかし彼らの活躍によって前線のソ連軍の大半が補給切れとなってしまう。その隙をついてSDFが猛反撃を実施。岩見沢~深川間の国道12号沿いに前進を開始した第7師団は、砂川付近でソ連軍歩兵連隊を撃破し、一気に深川の南まで食い込んだ。
南では日勝峠を降りてきたSDFと米軍の合同部隊が帯広市を守るソ連軍2個連隊を包囲し、これを撃破して帯広市を解放した。
さらにその東では、米第3海兵師団が釧路市の東西に上陸し、釧路市を包囲。同地を守るソ連軍2個連隊に対して激しい攻撃を行っていた。

写真15


12Turn

US_25TFS_51TFW_050ここで天候が荒天となってしまった。航空戦力で一気に大勢を決したかったSDFだが、その意気は殺がれた。それでも包囲下の釧路はこのTurnに解放。第7機甲師団は深川~旭川間の国道40号線のラインにまで進出していた。

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ちなみにこのTurnに勝利判定がある。ソ連が釧路、富良野、深川、留萌の全部を保持していればソ連側の勝利。2~3か所なら引き分け、0~1ヶ所ならSDFの勝利となっている。今回は富良野、釧路をSDFが奪回していたので、引き分けということになった。

13-15Turn

一応最後までプレイしたので結果を記す。
SDFは旭川と紋別を奪回した。ソ連軍の大半は撃破され、残余の部隊が包囲されて残っているだけの状況。ソ連軍による日本侵攻は失敗に終わったことになる。

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感想

RU_45G_176_885少なくとも序盤は面白かった。通常ゲームの第8Turnまでは緊迫した展開を楽しむことができた。プレイした感じではSDF側が計算しながら後退するとギリギリで勝利できるのではないかと思う。そういった意味ではSDF側が有利なゲームかもしれない。とはいっても天候や空戦といった不確定要素があるので、必ずしもSDF側が必勝ではないとは思うが・・・。

JP_FTB_565第9Turn以降はややダレた展開になった。特にソ連側への補給制限が厳しいので、効果的な防衛ラインを引くことが困難になる。帯広平野ではソ連軍が補給ルール上側面展開できないので、SDF側の側面迂回に対応するのが困難になる。旭川方面でもSDF側の突破を一旦許せば、ソ連全軍はまとめて補給切れになる危険があり、一気に対応できなくなる。このあたりは守り方に工夫が必要かもしれない。まあ長期戦では勝利条件的にソ連軍がSDF側に勝利できる可能性があるかもしれないが、日米の爆撃隊によってボロボロにされ、側面に回り込むSDF地上部隊に翻弄されている状況では、ゲーム上での勝敗などどうでもよくなるかもしれない。そういった意味で対戦ゲームとして意味があるのは第8Turnまでの通常ゲームで、延長ゲームはあくまでもオマケ程度に考えておいたほうが良い。

いくつか気になる点もあったが、少なくとも悪名高き「SDFシリーズ」に比べれば、まだちゃんとしたゲームになっている分、良いゲームだと思う。航空戦ルールを導入しても半日あれば十分にプレイできる作品なので、機会をみつけて再戦したいと思う。

89式歩兵戦闘車




コマンドマガジン Vol.181『北海道侵攻』 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』
幻の東部戦線 ソ連・ロシア軍 装甲戦闘車両クロニクル 提督が解説する海上自衛隊艦隊と軍艦のすべて 2024年 09 月号 [雑誌]: 軍事研究 別冊 海上自衛隊 護衛艦メカニズム図鑑 イカロスMOOK

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コマンドマガジン Vol.181『北海道侵攻』 「北海道侵攻」は、2025年に発売されたコマンドマガジン181号の付録ゲームで、1990年代にソ連軍が北海道に侵攻したケースを扱った仮想戦ゲームだ。元々は1988年に翔企画からSSシリーズの1作品として発売された同名作品のリメイク版である。今回のコマンドマガジン版には、SSゲームに含まれていた北海道の地上戦ゲーム以外に、北海道周辺での海上戦闘を描いた「パシフィックヒート」も含まれている。

今回は、その中から地上戦ゲームをソロプレイしてみた。なお、「北海道侵攻」の地上戦ゲームを以後「本作」と呼称する。

まず本作の基本システムを説明する。
RU_342_DTR_765本作は北海道での日ソ両軍の地上戦闘を扱っていて、1Hex=約30km、1Turnは実際の1日に相当し、1ユニットは1個連隊または旅団相当である(一部大隊または師団規模あり)。基本システムは移動と戦闘の繰り返しで、ZOCは侵入即停止、ZOCtoZOCは1Hex移動のみ可。注意点としてZOCから離脱したユニットは、そのTurn中にZOCへ再侵入できない(これは実際のプレイで結構忘れていたかも・・・)。

JP_2_3CT_555地上戦闘は比率方式のMay Attack。要注意点としてソ連軍は複数の師団が同じ攻撃に参加できない。これが兵力でSDFを圧倒しているハズのソ連軍の足を引っ張ることになる。また地形効果はダイス修正だが、特に荒れ地の防御効果が結構デカイ。戦闘結果は攻撃側と防御側への損害ステップ数として与えられるが、後退を選択すれば損害ステップ数はチャラにできる。とはいえ戦闘後前進が2Hex認められるので、損害を嫌って後退ばかりしていると、他の友軍部隊が包囲されてしまうことにもなりかねない。さらに先にも述べた通り荒れ地の防御効果が大きいので、防御地積に限りのあるSDF側は泣く泣くステップロスで土地を死守するような展開になる。対するソ連軍も、相手を後退させないために自身の損害を耐えつつ現時点に踏みとどまる必要がある(攻撃側が後退してくれたら、防御側が後退しても戦闘後前進を食らわないので安心)。なお敵ZOCを通過する後退は、たとえそのHexに友軍ユニットが存在していても禁止である。

注:ルールブックを読めば、攻撃側が退却した場合でも戦闘後前進できるようにも読めるが、常識的に考えて攻撃側が退却しなかった場合のみ戦闘後前進を認めるとすべきだろう。

Z_Empty補給ルールは補給線を引く方式で、自身の支配する港湾が補給源となる。SDFは地形や距離に関わらず補給線を引けるが、ソ連軍は道路沿いにしか補給線を引けず、補給下の道路に隣接している場合のみ補給下となる。逆にいえば道路から2Hex以上離れたら補給切れになる。これが結構厳しい。また敵ZOCによって補給線は遮断されるが、友軍ユニットの存在によって敵ZOCを中和することはできない(このあたりは古いゲームっぽい)。
補給切れのユニットはZOCを失い、攻撃禁止、移動は1Hexのみ可能だが、味方補給源に近づくように移動しなければならない。なお、第6Turnまでのソ連軍は補給切れを無視できる。

JP_201TFS_2AW_710ここまでが地上戦ルールだが、本作には航空戦ルールもある。航空戦は制空戦闘と対地攻撃の2種類がある(他に対船団攻撃も可能だが、攻撃成功率を考えると対地攻撃の方が明らかに「美味しい」)。制空戦闘は相応の航空ユニットが1対1で空中戦を行い、空戦結果表で相手の空戦値以上の結果が得られればステップロスできる。制空戦闘に投入できるユニット数は両軍とも最大6ユニットで、戦闘の組み合わせはSDF側が決めることができる(この点でSDF側はほんの少しだが有利と言える)。空戦自体は無制限ラウンド制なので、どちらかが撤退を宣言するか全滅するまで続くことになる。

RU_11FBR_140対地攻撃は目標Hexを指定し、出目が対地攻撃値以下なら目標が1ステップする。対地攻撃のダイス目は制空権の有無や天候によって増減し、修正前または修正後のダイス目が6以上なら攻撃を行った航空機がステップロスする。なお対地攻撃に投入できる航空ユニットは最大6ユニットなので、特にゲーム終盤の西側陣営は仕事にあぶれた航空機が溢れてくることになる。

とまあ、こんな感じだが、取りあえずゲームを始めてみよう。

写真00


1Turn

RU_1FR_1FD_700まず航空戦である。ソ連軍は6ユニット、SDFも6ユニットを制空戦闘に投入した。結果は両方とも3ステップずつを失う。SDFが空戦を切り上げたので、ソ連空軍が制空権を獲得した。SDFが空戦を切り上げた理由は、第1Turn特別ルールでソ連空軍に有利なDRMが適用されるためである。

写真01
写真02

ソ連軍の第1波が上陸を開始した。第342自動車化狙撃兵師団は稚内からオホーツク海岸の浜頓別、枝幸付近に上陸し、海軍陸戦隊は北方領土を発して斜里と根室に上陸した。
紋別ではソ連第342師団の第1146連隊と空中機動旅団が、SDF第2師団25CTを包囲し、これを殲滅した。しかし名寄ではSDF第2師団の精鋭3CTがソ連軍の攻撃を撃退した。

写真03


注:ソ連の空挺部隊は音威子府の隣接Hexにしか降下できないので、紋別付近への空挺部隊投入はルール違反である。

SDFは名寄を放棄し、旭川に第2師団を集結させる。

写真04


2Turn

天候は荒天。これによりソ連軍の増援が1Turn遅れる。悪天はソ連軍にとっては痛い。
ソ連軍はSDF第11師団を活性化させないように旭川盆地の北端まで出て止まっている。

写真05


注:SDFの各師団は、麾下の師団のいずれかのユニットの4Hex以内にソ連軍ユニットが侵入しない限り、移動できない

SDFは旭川~深川の線で防衛ラインを組む。

3Turn

Z_Weather天候は曇天。SDFには増援部隊が到着する。小松駐在第6航空団の第205飛行隊と築城基地の第8航空団第207飛行隊だ。いずれもF-15Jイーグルを装備している。
しかし航空戦はソ連軍のダイスが冴えわたり、最初の交戦でSDFの戦闘機4ステップを失ってしまう。ソ連軍の損害は2ステップのみ。SDFは損害を回避するために引き上げたので、ソ連側が制空権を確保した。

写真06


制空権を握ったソ連軍は空中機動によって旭川を守るSDF第2師団を包囲した。ソ連第342師団がSDF第2師団を攻撃するも、SDF師団はギリギリで生き残った。

SDFは新たに活性化した第11師団を中心に留萌~日高山脈のラインで防衛ラインを組む。

写真07


4Turn

JP_2_3CT_555天候は晴天。両軍の戦闘機が激しい制空戦闘を繰り広げた。SDFの損害は5ステップ、ソ連空軍はその2倍にあたる10ステップを失う。そしてSDFは遂に制空権を確保した。

ソ連軍は旭川を守備していたSDF第2師団を遂に壊滅に追い込んだ。SDFの残存部隊は、岩見沢~夕張のライン迄後退する。

写真08


つづく



コマンドマガジン Vol.181『北海道侵攻』 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』
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