ゴッドドクター徳田虎雄
山岡淳一郎 小学館文庫
徳田虎雄と言えば、一代で医療法人徳洲会を築き上げ、離島も含めた日本全国に70以上の病院打ち立てた「病院王」とでもいうべき存在である。1983年には政界への進出を志し、1990年に衆議院議員に初当選を果たす。2002年に難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、その後政界を引退したが、その後も徳洲会の実力者として君臨した。本書は、徳田虎雄の半生を描いたノンフィクションである。
本書はノンフィクションであるが、まるで小説を読むような面白さがある。高い志を抱いて医師になった徳田虎雄。彼の医療界に残した業績は大きなものがあった。今では信じられないことだが、虎雄が医師になった頃、休日夜間は救急医療が受けられず、そのために命を落とす人が沢山いたという。この状況を打破しようと徳洲会を起こした虎雄は、地元の医師会の激しい抵抗と戦わなければならなかった。現在の我々が得られている医療サービスは、虎雄の功績に依る所が大きい。そんな虎雄が政治家を志したのは、自らの理想を実現するためには政治力が必要と考え、政治家を志したのは自然な流れと言えよう。
とはいえ、虎雄はまた深い闇を抱えていた。自動車を運転させて赤信号を無視されるといった遵法意識の低さは序の口で、反社会的勢力との癒着、数々の選挙違反行為、政治と金の問題等。一般的な価値観から見たら、とても許容できないレベルのものである。一言で言えば、毀誉褒貶の激しい人物であったと言えよう。
私事で恐縮だが、徳洲会事件が佳境を迎えていた2014年に、私は徳洲会の旗艦病院ともいうべき湘南鎌倉総合病院で蓄膿症の手術を受けていた。また2022年1月の日曜日に右足を骨折したが、休日にも拘らずその日のうちに入院し応急処置を受けることができた。そういった意味で私の人生にも徳田虎雄という人物が大きく関わっていることは否定できない。
★お奨め度★★★