銀河英雄伝説-外伝5
田中芳樹 創元SF文庫
『銀河英雄伝説 外伝5』は、銀河帝国と自由惑星同盟の若き時代を描いた作品であり、歴史の転換点として語られる「ダゴン星域会戦」がとりわけ印象的であった。
この戦いは、自由惑星同盟が帝国に対して初めて大規模な軍事的勝利を収めた記録として位置づけられている。物語では、その勝利がいかにして達成されたか、同盟軍の若き指揮官たちの奮闘と、帝国側の慢心や組織の硬直ぶりが対照的に描かれており、後の銀河規模の戦乱を予感させる導入として非常に力強い。ラインハルトやキルヒアイスはこの時点では登場しないが、だからこそ作品世界の広がりと深みを感じさせる。
一方で、その後のエピソード群はラインハルトとキルヒアイスの若き日の出世譚が中心となる。貴族社会の中で理不尽な扱いを受けながらも、彼らが才覚と信念でのし上がっていく様子は、見ていてそれなりに面白い。しかし、予想の範囲内の展開が多く、読後に強く印象に残るような劇的な出来事は少ない。全体として「優等生の成長記録」といった感が強く、登場人物の感情や葛藤も比較的あっさりと処理されていた印象がある。
総じて言えば、「ダゴン星域会戦」で提示された歴史的重みとスケール感に比べると、その後の話はやや小粒に感じられる。ただし、ラインハルトという稀代の天才が、いかにして帝国の頂点に向かう道を歩み始めたのか、そのプロローグとして読む価値は十分にあるだろう。
お奨め度★★★








