ローマ人の物語2-ハンニバル戦記
塩野七生 新潮社
ローマ人の物語全体については以前に紹介したと思うが、今回改めて第2巻を読み返してみた。こういう長編は全部を読み通そうとすると「楽しみ」というよりも「作業」に近いものとなってしまい、純粋に読書を楽しむことができない場合がある。その点、今回のように「つまみ食い」してみると、妙な義務感から解放されて純粋に読書を楽しむことができるように思える。
この第2巻はタイトル通り「ハンニバル戦争」と呼ばれる第2次ポエニ戦争がメインである。ポエニ戦争とは、ローマとカルタゴが地中海の覇権をかけて3度に渡って戦った全面戦争である。特に第2次ポエニ戦争は、「ハンニバル戦争」との呼称で分かる通り、カルタゴの生んだ伝説的戦略家であるハンニバルが共和制ローマを存亡の淵まで追いやった戦いでもあった。世界戦史上名高いカンネーの戦いは、第2次ポエニ戦争の最中に起こっている。
今回本書を改めて読んでみた理由は、名作ゲームとして名高い「ハンニバル」をプレイするに際し、当時の歴史状況を確認しておきたかったためである。そして本書はその期待に十二分に答えてくれた。本書は、ハンニバルやスピキオといった両陣営の諸将たちが戦場でどのように振舞ったかについて克明に記載さているが、それだけではない。本書はポエニ戦争を巡る全般的な動きやマケドニア、ギリシアと言った諸外国の動きにも目を向けつつ、ローマが滅亡の淵から蘇りそして遂にカルタゴを滅亡に追い込むまでの過程が立体的に描かれている。日本人にはあまり馴染みのなかったローマ史を日本でメジャーテーマ化した筆者の力量には感嘆せざるを得ない。
お奨め度★★★★
ハンニバル戦記──ローマ人の物語[電子版]II
ハンニバル戦争 (中公文庫)
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