カテゴリ: 戦史
Clash of Carriers(AtO#58)をプレイしてみた【1】

本作は、2023年に米国LPS社のゲーム付雑誌Against the odds誌58号の付録ゲームとして出版されたもので、デザイナーは戦史研究家としても著名なMark Stille氏である。ゲームシステムは氏の前作であるImperial Sunsetを踏襲したものとなっていて、基本的なシステムはほぼ前作と共通している。
ゲームのスケールは、1Hex=25海里、1Turn=6時間、1ユニットは巡洋艦以上が1隻1ユニット、駆逐艦は4隻1ユニット、航空機は6~20機で1ユニットとなっている。
本作には3本のシナリオが用意されている。
・Historical Scenario
・TF58 Unleashed Scenario
・The Japanese Dream Scenario
一番最初のHistorical Scenarioは、お互い史実の兵力で戦うというもの。ただし米軍には「スプルーアンスの心配事」という陰謀ルールがあり、空母戦力の半数と戦艦戦力の大半はサイパンから9Hex以内に位置していなければならない。対する日本軍も「全力攻撃」の縛りがあり、とにかく1度は空母機による全力攻撃を実施しなければらない。まあ史実に近い結果にしかならないシナリオだと思う。
2つ目のシナリオは、「スプルーアンスの心配事」がなくなり、米軍がより柔軟に運用できるようにしたシナリオである。一方の日本軍も史実よりは柔軟に展開できるが、「全力攻撃」の縛りは相変わらずだ。このシナリオは歴史的な枠組みの中で一番自由度の高いシナリオだと思う。
最後のシナリオは何か誤解を招きそうなタイトルだが、別に「信濃」や「烈風」が出てきてエセックス級をバタバタと沈めるようなオチャラケシナリオではない。史実よりも有利な点としては「山城」「扶桑」の2戦艦と1個駆逐隊が日本艦隊に加わり、基地航空隊も全ユニットが登場する。日本軍機に適用される不利なDRMは全て撤廃され、一応米艦載機と互角の戦闘が可能になる。日本にとっては一番有利なシナリオだが、それでも兵力的な劣勢は否めない。
今回は、その中から一番上のHistorical Scenarioをプレイしてみた。筆者は日本軍を担当した。なお、Clash of Carriersについては、以下の動画でも紹介しているので、よろしければご覧頂きたい。
SetUp
日本軍の強みは史実通り航続距離の優越である。日本軍艦載機は片道12Hex(300海里)の攻撃範囲を持っているが、米軍はその2/3である8Hex(200海里)だ。ただ、米軍にも延長攻撃ルールがあり、それを使うと攻撃範囲が11Hexに伸びる。だから日本軍は僅かな航続距離優越を生かして攻撃するしかない。兵力の少ない日本軍は、とにかく全力攻撃した所。9隻しかない空母を史実みたく分散配備してもCAPに食われるだけで効果は期待できない。それなら9隻の空母を1ヶ所に集めて集中攻撃を仕掛ける。それしかない。とはいっても空母をあまりに集中すると索敵効率が悪くなる。索敵はタスクグループ単位で実施されるので、集中配備し過ぎると索敵戦で負けてしまう。
そこで軽空母1隻を中核とする索敵専用艦隊を編制し、それで早期発見を図る。敵空母を発見できれば、最適距離から攻撃隊を全力発進させ、空母1隻乃至2隻の撃沈破を狙う。攻撃を終えれば、後は全力で退避する。敵空母の追跡を躱せば、なんとかVPで勝利できるだろう。
さらに今回は選択ルールの15.3 Prevailing Wind Effectsを採用することにした。このルールは攻撃隊を発進させる際には風上方向へ2Hex前進しないといけないというものである。風上方向とは、南東方向、つまり日本軍から見て前進方向、米軍から見て後退方向となる。つまり日本軍は敵に向かいながら攻撃隊を発進させることができるのに対し、米軍は敵から離れるように攻撃隊を発進させなければならない。これによって航続距離の短い米軍機は、その攻撃範囲に日本艦隊を捉えるのが益々困難になるはずだった。
1Turn(1944年6月18日未明)
最初のTurnは夜である。日本軍は当初の予定通り艦隊を分けて敵潜水艦の伏在海面を避けつつ西へ向かう。2Turn(1944年6月18日午前)
当初の予定通り3群に分かれた日本艦隊から索敵機を発進させる。索敵機が次々と敵発見を報じてくる。「敵大型空母5隻、軽空母2隻ミユ」
「敵大型空母3隻、軽空母3隻ミユ」
「敵大型空母4隻、軽空母4隻、サラニ戦艦7隻ミユ」
発見報告を合計すると敵空母21隻、戦艦7隻もの大艦隊である。事前の捕虜情報やその他の諜報により敵空母の隻数が15隻というのはわかっていたので、この段階で敵艦隊の大半を発見できたことになる。
直ちに攻撃隊を発進させたい所だが、彼我の距離が375海里(15Hex)とちと遠い。距離300海里の最適距離に到達すべくなおも前進を続ける。
3Turn(1944年6月18日午後)
分散していた機動部隊を合同させて空母9隻からなる一大機動部隊を編制した。そして東に向かって米機動部隊との距離を詰める。しかし米機動部隊もわずかに東へ向けて後退したため、いまだ敵が攻撃圏内に入らない。焦る日本艦隊つづく








書籍紹介「いっきに読める三国志」

いっきに読める三国志
島崎晉 PHP研究所

黄巾の乱から晋の成立による三国時代終焉までの約100年弱の三国時代を年代別に整理した著作である。ベースは正史三国志で、「三国志演義」の方ではない。従って桃園の誓い、美女連環の計などの話は出てこない。それでも曹操、劉備、呂布、関羽、孫権、諸葛亮といった三国志を彩る様々な人物が登場して舞台を盛り上げている。
「いっきに読める」と書かれているが、三国志の歴史全体を全て触れているので、情報量はかなり多く、さらに五丈原より後の話になると、それこそ馴染みのない人物が色々と登場してくるので、全体を追うのは難儀する。かくいう私も、五丈原以降の話は流し読みしていたので、全体の流れがなんとなく追いかけられたというのが実情である。
三国志については様々な書籍が出版されており、本書もその中の1冊として読む分には適切なのではないだろうか。
お奨め度★★★







GJ73「沖縄の落日」をプレイする

(改めて調べなおして6年間という時間の経過を改めて驚く)
思えば、本作の発売した時期に丁度首里城の火災があり、そのためにかなり自粛した形で発売を余儀なくされたという経緯もあった。さらに思えば、今年2025年は沖縄戦から丁度80年目の節目になる。
そんな機会に本作を改めてプレイしてみた。
本作のテーマは沖縄本島における地上戦である。一応菊水作戦や大和の特攻などの海空戦も含まれているが、あくまでも「オマケ」的な扱いであり、メインは地上戦闘だ。
スケールは、1ユニットは大隊規模、TurnやHexのスケールは明記されていないが、1Turn=約4日、1Hex=1km弱程度と思われる。
地上戦闘の基本システムはいわゆる「I Go You Go」システムである。May Attack、ZOC進入即停止、スタック2枚まで、米軍は同一連隊のみスタック化である。
戦闘システムで特徴的なのは戦闘解決の方法で、戦闘比ではなく、防御射撃、攻勢射撃、白兵戦という手順を踏んで解決する。このあたり、作戦級ゲームながらも戦術級ゲームの色彩を色濃く持った作品といえる。戦闘システムが射撃と白兵戦に分かれているのも特徴的で、予想通り米軍は射撃力で優位に立ち、一方で日本軍は白兵戦で優位に立っている。尤も陣地に籠っている日本軍は敵の射撃力を反撃できるし、防御側に回ることが多い日本軍は敵に先に立って射撃できる。さらに機関銃や砲兵部隊等日本側の射撃力を強化できるアイテムもあるので、その射撃力は決して侮れない。対する米軍には火炎放射器など白兵戦力を強化するアイテムがある。
さらに本作の特徴的なのはチットシステム。これは「激闘!キエフ奪回作戦」や「激闘!バルジ突破作戦」等で採用されていたシステムで、砲兵支援や戦車支援、さらには優秀な指揮官や煙幕弾などをチットにて再現している。沖縄戦では、戦車や砲兵の他、日本軍の夜襲や擲弾筒などを表現している。
さらに本作ではチットはイベントチットとしても機能しており、例えば「大和特攻」や「日本軍の総攻撃」などはイベントとして表現されている。
という訳だが、早速プレイしてみよう。今回はソロプレイでプレイしてみた。
1Turn
米軍の初期戦力は、第96歩兵師団と第7歩兵師団の計3個連隊である。米軍はまず賀谷支隊が守る島袋地区を攻撃する。米軍は毎Turn1ヶ所以上のVPヘクスを支配していく必要がある。95高地がVPヘクスになっているので、米96師団の383連隊が砲兵支援を受けて攻撃を実施し、同地を占領。無事VPヘクスを確保した。日本軍は最初の3Turnは賀谷支隊のみが移動できる。日本軍は防御力が高くなる陣地まで後退せず、敢えて前線に布陣した。VPヘクスの支配を遅らせることでVP面で優位に立つのが狙いだ。
2Turn
米軍はさらなる南下攻撃を行うが、日本軍の前進防御に阻まれてVPヘクスを奪取できなかった。日本軍の基本戦術としては陣地防御に固執せずにVPヘクスの前面で防御するのが正しい戦術と思われる。米軍にVPヘクスを取らせなければ日本軍の勝ちなのだから。日本軍はイベントチットで「攻勢命令」を引いた。八原参謀の反対により攻勢作戦は中止となったが、八原参謀は牛島軍司令官の叱責を受け、以後幕僚会議で反対意見を述べることができなくなってしまう(「八原参謀失脚」)。
さらに日本軍は菊水特攻を仕掛けるものの、米艦載機の妨害を受けて攻撃は失敗に終わってしまう。
3Turn
米軍に戦闘爆撃機が登場した。このチットは隣接Hexにいる敵ユニットを2火力で事前攻撃できる。この攻撃が成功すれば突破口が形成できる所だったが、出目悪く攻撃に失敗した。このTurnも米軍はVPチット獲得に失敗し、日本軍は次々とVPチットを獲得していく。
4Turn
日本軍は戦艦「大和」を中核とする第2遊撃部隊を出撃させた。降り悪く悪天候によって米艦載機は出撃できず、「大和」は見事に沖縄近海に突入に成功し、最終的には米艦隊の集中砲火を浴びて撃沈されるも、米戦艦2隻を大破して有終の美を飾った(2VP獲得)。
地上でも米軍の前進は遅々として進まず、このTurnも米軍はVP獲得に失敗した。
5~7Turn
米軍はジリジリと前進し、普天間を占領して嘉數高地に迫る。しかし日本軍の巧みな遅退戦術の前にVPマーカーを全く取れない。さらに悪天候が追い打ちをかけて。このままではVPで勝てないと焦る米軍。一方で日本軍も徐々に兵力を失っていく。
8~9Turn
日本軍の菊水特攻作戦が成功し、日本軍が1VPを獲得した。一方米軍が大山付近の制高点を連続して2ヶ所制圧し、ついにVPチットを獲得した。
10~12Turn
その後米軍の進撃は相変わらず遅々として進まず、最終的に米軍が確保したVPマーカーは5個に過ぎなかった。獲得したVPマーカーは、米軍が4個、日本軍が12個。VP値は米軍が6VP、日本軍は32VPで、日本軍の圧勝に終わった。感想
今回は日本軍の圧勝に終わったが、チットの出方に依存する部分が多く、現時点でバランス云々するのは難しい。今回日本軍は制高点で守らず、あえてその前の平地で米軍の攻撃を迎え撃つ戦術を採用したが、この戦術が強力で米軍はVPマーカ―をなかなか取れない。VPマーカ―は16個なので理論上少なくとも8個以上VPマーカーを取れば50%以上の勝率になるが、日本軍が上記の戦術を採用するとVPマーカーを8個以上取るのは至難の業だと思う。そもそも日本軍が防御に有利な地形を捨てて平地に犠牲部隊を置くという戦術自体が現実離れしているように思えてくる。チットを使った戦闘システムも上記の理由であまり生かされず、単に手間が増えて面倒なだけ。まあそのあたりはソロプレイではなく対人戦の場合は変わってくるのかもしれないが・・・。
というわけでテーマは興味があったものの、実際にプレイしてみると「何だかなぁ」という感想のゲームだった。








Air & Armor(CompassGames):シナリオ4.The Last Reserve

基本システムについては、以下の動画で既に紹介済なので、ご覧頂きたい。

今回の参加者は2名で筆者はソ連軍を担当した。
状況

次に勝利条件を見てみよう。西ドイツ軍の増援が登場してくるマップの南西端から第27親衛自動車化狙撃兵師団を突破すればソ連軍が決定的な勝利する。まあそこまで行くのは結構大変だと思うので、それ以外の勝利条件を確認すると、まずヴュルツブルクへの補給線が残っているとNATO側が勝利得点を獲得する。さらに国道19号線の西側にソ連軍が突破するのに失敗すると、NATO側が決定的勝利となる。
この状況でソ連軍たる筆者は以下のような方針を立てた。
1)主攻勢はマイン川の南側で行う。戦車連隊を含む3個連隊を同方面に投入し、NATO防衛線の突破を図る
2)一部兵力(1個連隊)をマイン川の北側に投入し、NATO側防衛戦力の分散を図る。
さてさてどうなることやら・・・。
SetUp
NATO軍の展開はおおむね予想通りだったが、主戦力をマイン川の南岸部に集中してきたのが違っていた。第27親衛自動車化狙撃兵師団は西ドイツ郷土防衛旅団が全力展開している正面に突入することになるので、かなりの出血を強いられそうだ。1-2Turn

3Turn
正面からソ連軍3個連隊がNATO防衛ラインに対して攻撃を加える。NATO側の防御射撃によって主に歩兵戦闘車部隊に損害が出たが、兵力に勝るソ連軍はNATOの防衛ラインを突破した。
4Turn

5Turn
ソ連軍の主力がビュルツブルグ市内に突入した。ビュルツブルグに向かっていたNATO軍のマーダー歩兵戦闘車2ステップが、Su-17戦闘攻撃の爆撃によって撃破されてしまう。ソ連軍はビュルツブルグの主要部を占領したが、まだ西端部分にNATO軍の一部が布陣していた。6Turn

ソ連軍BMP部隊はビュルツブルグ市の西端部に残る西ドイツ軍歩兵部隊を攻撃し、これを撃破。ビュルツブルグ市全体をソ連軍が占領した。
さらにその西方では、マイン川北側を迂回してきたソ連軍自動車化狙撃兵連隊がマイン川を再渡河してNATO軍の背後に回り込む。この時点でNATO側は勝機なしとして投了した。
感想

Air & Armorには他にも色々なシナリオがあり、プレイするのが楽しみだ。







