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書籍紹介「半沢直樹1」

半沢直樹1
池井戸潤 講談社文庫

TVドラマが大ヒットしたのが10年以上も前だというのが信じられない。かくいう私はTVドラマの方は見ていなかったし、あまりに有名な小説なので、これまであえて手を出さなかったが、一連の池井戸潤小説がいずれも面白かったので、ついに「本丸」に手を出した。
読んで(聴いて)みると確かに面白い。これまで読んだ池井戸小説では、主人公が周囲に「虐められ」ながらも耐えに耐え、最後に大逆転というパターンが多かった。しかし本作では主人公の性格がかなり「強気」に設定されており、「虐め」を仕掛けてくる相手を次々と返り討ちにしている。しかも「虐められ」シーンよりも「虐め」シーンの方が多い。主人公の立場も社長ではなくただの平課長。つまり組織の歯車に過ぎない。そんな主人公が、会社の「クソ上司」を完膚なきまでに叩きのめす。このような展開が、実生活で「クソ上司」に反感を募らせている一般読者にウケたのは想像に難くない。かくいう私も会社員時代の事を思い出し、大いに留飲を下げたものである。
池井戸小説の中でも傑作と思えるシリーズで、早く続きを読んでみたい作品だ。
お奨め度★★★★








書籍紹介「不毛地帯3」
書籍紹介「落日」

落日

湊かなえ ハルキ文庫

湊かなえという作家の名前を知ったのは登山雑誌だったと思う。確か趣味が登山という小説家ということで紹介されていた。それ以来氏の著書を読んだことはなかったが、Amazon Audibleで紹介に上がっていたので聞いてみた。本書には2人の主人公が登場する。1人は長谷部香、新進気鋭の女性映画監督。もう1人が甲斐千尋。映像作品の脚本家で、年齢は香より少しだけ下という設定。2人とも30前後の設定だったと思う。ストーリーは、15年前に起こった一家殺人事件を軸に進められる。引きこもりの高校生が妹を殺害し、さらに自宅に放火して両親を殺害したというのが事件の概要だ。2人の女性は過去の事件を追う中で、中高生の複雑な心理描写、大人たちの歪んだ愛情表現などが生々しく描かれている。そして次第に明らかになっていく事件の概要と共に、登場人物が複雑に絡み合ってきて、ラストにつながってくる。
とまあ、こんな感じの本。
読んでいてそこそこ面白く、またドロドロした心理描写は興味深かった。
お奨め度★★★



