Next War Poland(GMT)は、GMT社から発売されているNext Warシリーズの第4作である。Next Warシリーズは、近未来に予想される正規軍同士の戦いを1Hex=12km、1Turn=0.5週間のスケールで描く作品群だ。Next War Polandは、ロシア軍によるポーランド及びバルト三国への侵攻と、それに対抗するNATO軍の戦いを描いた作品である。
今回、Next War Polandの上級シナリオをソロプレイで試してみた。シナリオは"Tactical Surprise"(戦術奇襲)。3段階の状況設定のうち、丁度中間の設定である。なお選択ルールは16.3避難民を採用する。また17.2.1「トランペット第5条のDRM」は固定値+1とした。季節は夏、第1Turnの天候は晴天とする。
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11Turn
天候は曇り。米第1騎兵師団、第4歩兵師団、ドイツ第10装甲擲弾兵師団、さらにフランス軍、デンマーク軍、オランダ軍、ポーランド軍等がカリーニングラードとリトアニア南部に進攻する。空からは圧倒的なNATO航空部隊が爆弾の雨を降らせる。最前線でも戦線後方でもロシア軍部隊は空から叩かれ、地上からもNATO地上部隊の猛攻を受ける。Suduvaがまず解放された。続いてリトアニア東部のAukstaitijaにも米第1騎兵師団と第82空中機動師団等が進攻。同地を占領した。ロシア領カリーニングラード方面では、米第101空中機動師団を主力とする部隊がNATO連合軍と共にロシア軍と激戦を交えたが、激戦の末これを撃退し、カリーニングラード一帯はNATO軍の占領する所となった。
Turn終了時におけるNATOのVPは288、ロシア軍のVPは154である。NATO軍のVPが初めてサドンデスラインを超えた。ダイス判定の結果、NATO軍の勝利にはならない。戦いはなおも続く。
12Turn
最終Turnである。天候チェックで雨になった。この時点でゲームを続ける必要がないと判断し、ゲーム終了とした。仮にこのTurnプレイしたとして、リトアニアを解放できるかどうかは微妙な所。その北にあるラトビア、エストニアまでNATOが奪回するのは、少なくともこのTurnだけなら難しいと思う。ただし無限にゲームを続けた場合、ロシア・ベラルーシ軍は完全に壊滅し、NATOの圧倒的な勝利で終わるだろう。既にVPでもNATOはロシア軍よりも100点以上リードしているのだから。
感想
基本的には移動・戦闘を繰り返すタイプの陸戦ゲームである。メイアタック、戦闘比、ZOCあり。このあたりだけなら普通の陸戦ゲームと大差がないようにも思える。事実、上級ルールを入れない標準ゲームなら、普通の陸戦とそれほど変わらないプレイ感覚でプレイできるだろう。本作を本作たらしめている最大の特徴は上級ルールにある。特に航空機の存在は本作の最大の特徴といえる。長距離ミサイル戦、中距離ミサイル戦、ドッグファイトに分かれて再現される空中戦ルール。早期警戒レーダーと長距離SAMをワイルドウィーゼル機で叩く。敵後方にはステルス爆撃機や巡航ミサイルで攻撃を仕掛ける。航空優勢を握った後は圧倒的な航空兵力で後方阻止任務た近接航空支援を行う。これら現在戦における航空機の重要性が「これでもか、これでもか」とばかりに表現されている。航空機ファンにとってはたまらない場面だが、その分ルールが多く、しかも手間がかかる。航空戦だけでも優に通常のゲーム1個分の重みはある。他にも特殊部隊、水両用戦、空中機動戦、空挺降下、都市制圧戦、NBC兵器等、現在戦を代表する様々な戦闘シーンがルール化されているので、現在戦ファンにとっては十分満足できる内容だと思う。
シナリオのバランスは必ずしも一方的ではないと思う。ただ、これは問題と言って良いと思うが、NATOのトランペット第5条ルールの影響が大きい過ぎるのではないかと思う。NATOの全面介入が早ければ早いほどNATOは勝利に近づき、ロシア軍の勝利は困難になる。逆にNATO軍の全面介入が遅れれば、それだけロシア軍の勝利は容易になる。ヴィスラ川東部一帯のポーランド領全域をロシア軍が占領すれば、VPの関係上ロシア軍によるサドンデス勝利の可能性は高くなる。とはいえ弱体なポーランド軍だけでロシア・ベラルーシ連合軍を食い止めるのは困難だ。CRTが全般的に攻撃側有利なので、一度勢いのついた優勢軍の進撃を止めるのは困難だ。結局の所
「NATOがいつ登場するかで勝敗が決するゲーム」
といえるかもしれない。
まあ細かいシナリオのバランスを云々しても仕方がないかもしれない。元々勝敗を争うタイプのゲームというよりは、その状況にハマって状況を楽しむスタイルのゲームなのだから。だから本作は所謂「競技派」のプレイヤーには不向きである。それよりも近未来における東ヨーロッパを舞台にした大規模正規戦について、まるで「SF小説を読むように」楽しむのが本作の正しいスタイルと思われる。そういう楽しみ方ができるプレイヤーにとっては、本作は無限の価値を持つだろう。