鋸山は、千葉県富津市と鋸南町にまたがる標高329mの山で、東京湾に面した房総半島を代表する名山である。山の稜線が鋸の歯のように見えることから、この名が付いたとされる。山は凝灰岩質の「房州石」で構成され、切り立った岩壁や人工的な断崖が特徴的だ。標高は低いが、山頂や展望地からは東京湾や三浦半島、天候が良ければ富士山まで望める。照葉樹林を主体とした自然環境は、四季を通じて変化に富んでいる。
鋸山は、江戸時代から昭和初期にかけて、鋸山は房州石の一大産地として栄えた。房州石は加工しやすく耐火性に優れ、江戸や横浜の建築・土木に広く用いられた。山中に残る巨大な石切場跡や「通道」と呼ばれる運搬路は、石材産業の痕跡を今に伝えている。
山中には、725年(神亀2年)に行基によって開かれたと伝わる日本寺がある。境内には岩壁に刻まれた百尺観音、日本最大級の磨崖仏である大仏(薬師瑠璃光如来坐像)などが点在し、鋸山は古くから信仰の山としても知られてきた。
2025年12月23日、冬晴れの朝に鋸山を目指した。起点は内房線の小さな駅、浜金谷駅。木製の駅舎に冬の青空がよく映え、旅の始まりにふさわしい静けさがあった。
駅前から集落を抜け、やがて登山口へ。最初に現れるのは、等間隔に積まれた石段だ。人工物でありながら周囲の雑木林に溶け込み、一段一段が過去の営みを伝えてくる。息を整えながら登ると、足元の土と石の感触が次第に山へと切り替わっていく。
やがて道は「通道」と呼ばれる石切場跡へ続く。房州石を運び下ろすために刻まれた道は、削り出された岩肌と露出した木の根が絡み合い、鋸山らしい荒々しさを見せる。案内板に目を通すと、この山が単なる観光地ではなく、産業の歴史を背負った場所であることを実感する。
切り立った岩壁の下を進むと、巨大な石切場が現れる。垂直に近い壁面は圧倒的で、自然と人の力が拮抗したまま時間が止まったかのようだ。足を止めて見上げると、冬の光が岩肌を淡く照らしていた。
さらに高度を上げると、木々の間から海が見え始める。内房の青い海と点在する船、そして眼下に延びる道路。視界が一気に開け、ここまでの汗が報われる瞬間だ。最後に「山頂」を示す素朴な標識に導かれ、前半の行程は静かに締めくくられた。
ここまでの所要時間は1時間半弱。ほぼコースタイム通りだ。
山頂でひと息入れたのち、道標に従って東京湾を望む展望台へ向かう。尾根道は明るく、冬の低い陽射しが笹や照葉樹の葉を透かす。分岐をいくつか越えると視界が一気に開け、東京湾を望む展望台に到着した。重なり合う房総の稜線の向こう、青い水面に白い航跡がいくつも伸びている
展望台を後にすると、道は岩壁の縁をなぞるように続く。切り立った石切場の断面は、直線と陰影が強烈で、自然の造形と人の手の痕跡が同居する鋸山らしい景だ。手すり付きの急な階段を慎重に降りていく。
目の前に日本寺の入口が見えてきた。拝観料700円はチト高いが、この先に進むには寺に入るしかない。あるいは諦めて元来た道を引き返すこともできるが、ちょっと勿体ない。折角なので700円を支払って中に入る。
境内に入ると空気が変わる。石仏が点在する参道の先、岩窟に立つ百尺観音が現れ、その大きさに思わず足が止まった。
さらに進めば東京湾を見下ろす展望台があり、そこから歩きやすい境内を下っていく。20分ほど下ると、大仏広場という場所に出る。穏やかな表情の日本寺大仏。切り立つ岩と対照的な静謐さが、ここまでの行程を静かに受け止めてくれる。晩秋から初冬へ移る紅葉が境内を彩り、石段に落ちる影もやわらかい。
さらに参道を進んでいくと薬師本殿がある。薬師本殿は鋸山における信仰の中心となる堂宇で、本尊として薬師瑠璃光如来を祀っている。現在の薬師本殿は近世以降に再建・整備されたもので、山中にありながら落ち着いた端正な佇まいを見せる。石切場の荒々しい岩壁や断崖とは対照的に、本殿周辺は静謐な空気に包まれ、参拝者はここで旅の安全や健康、平癒を祈る。
その奥にある仏舎利塔は、釈迦の遺骨を安置するために建立された塔で、日本寺境内でもひときわ目を引く建造物である。多層構造の塔は、伝統的な仏教建築の意匠を踏まえつつ、近代以降に再興されたもので、鋸山の山腹という立地と相まって、空へ伸びる象徴的な存在感を放つ。
仏舎利塔は、特定の願いを祈るというよりも、仏教そのものへの帰依や世界平和、万物の安寧を祈念する場として位置づけられている。東京湾を望む開けた場所に建てられている点も象徴的で、海と空、山と人とをつなぐ精神的な軸として機能している。
日本寺を出て山道を歩いていく。15分ほどで海岸を走る国道127号線に出る。目の前には東京湾が広がっている。
さらに15分ほど歩いて保田駅に到着した。ここからJRで1駅進んで、安房勝山駅で下車。駅近くの寿司屋で遅めの昼食を食べて今回の山行きは終了である。
鋸山に登ったのは今回初めてだったけど、予想以上に面白い山だった。
登山としては比較的難易度の低い山だったけど、ちょこちょこアップダウンがあって面白い山だった。特に山中に広がる石切場の景観は圧巻の一言。東京湾の景観も見事だし、日本寺も良かった。
実はこの山行きでは動画を撮っていたのだが、カメラがボロで手振れが酷いので、とても動画には使えないと思ってあきらめた。次回この山に登るときは、ちゃんと動画を撮っておきたいと思う。


























































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