もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > 作戦級ゲーム

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「Littoral Commander - INDO-PAIFIC」(以下、本作)は、The Dietz Foundationが2023年に出版したシミュレーション・ウォーゲームである。テーマは現代及び近未来に予想される沿岸作戦。沖縄近海、台湾、北部フィリピン及びシンガポール周辺を舞台とする米国と中国の局地的戦闘を扱っている。

Hex、Turn制のゲームシステムを採用しており、1Hexは実際の約17km、1Turnのスケールは不明だが、半日~1日程度と推測する。1ユニットは小隊規模の地上部隊又は1隻の水上戦闘艦を表している。ゲームシステムは全般的にシンプルなものになっているが、地上部隊同士の戦闘だけではなく、ミサイル等を使用した長距離打撃とミサイル迎撃、航空偵察や航空支援、潜水艦攻撃等もシステムに盛り込まれている。

1Turnは複数のインパウスよりなり、米中両陣営が交互にインパルスを繰り返す。各インパルスでは1つのタスクフォースが活性化し、全てのタスクフォースが1回活性化し終えるとTurnが終了する。
各インパルスでは3アクションポイント(AP)を使用でき、1APで1スタックの活性化か1枚のカードプレイができる。スタック制限は特にないのでAPを有効活用したい場合はハイスタックの方が有利だが、サイバー攻撃でまとめて無力化するリスクがあるので、過剰なハイスタックはハイリスクである。

そしてこのゲームを特徴づけているのは仮想空間における戦い、いわゆるサイバー戦である。サイバー戦はカードによって表現されているが、その威力は強力で、敵のスタックを一時的に無力化したり、敵長距離兵器の性能を一斉に低下させたりとやりたい放題。特に中国軍のサイバー戦能力は強力であり、米軍はその対策に頭を痛めることになるだろう。

サイバー戦の所でも触れたが、本作では大量のカードを使用する点に特徴がある。サイバー戦だけではなく、ドローンの使用や無人戦闘車両による支援、古典的な航空爆撃(B-52やB-2等)、戦闘機による戦闘空中哨戒等もカードで表現されている。ゲーム開始時にプレイヤーは与えられたポイントの中からカードを「購入」することになるのだが、これが結構難しい。なんせ100枚以上のカードから自身に最適なカードを選ばなければならない。このゲーム、サイバー戦以外でも敵を発見するための索敵系カードや特殊兵器カードが重要な場合がある。慣れればカード選びが楽しくなってくるのだろうが、正直、そこまでの域には到達できなかった。

今回、本作をプレイしてみたので、その概要を紹介する。ちなみに全てのシナリオで筆者は米軍を担当した。

シナリオ1.Meeting Ebgagement

このシナリオは、米海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regiment)のタスクフォースと人民解放軍海兵隊のタスクフォースが、ルソン島北部で遭遇戦を行う場面を想定したシナリオである。両軍ともタスクフォース規模の地上部隊と駆逐艦各1隻が登場する。
このシナリオは陸上戦闘と長距離打撃戦の進め方を理解するには最適のシナリオである。登場するユニット数も少なく、ターン数も短いので、本作のシステムを学ぶには最適のシナリオと言える。

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シナリオ2.Luzon Pass

このシナリオはルソン海峡を巡るシナリオで、中国軍は歩兵を中心とした地上部隊と戦闘艦4隻、揚陸艦1隻からが登場し、米軍はHIMARSを装備した海兵沿岸連隊タスクフォースが登場する。ちなみに本作では、対地ミサイルと対艦ミサイルの区別はなく、ATACMSで艦船攻撃が可能だし、Tomahawkは対地対艦両用になっている。中国軍もまた同じ。確かに時代はそういった方向に向かいつつあるとは思うが、現時点で対地/対艦ミサイルが完全にコンパチブルというは、ちょっとやり過ぎのように思えてくるのだが…。

写真02_ATACMS


このシナリオは、中国側が水上部隊によるルソン海峡突破を目指し、米側はその阻止を図る。米海兵隊は水上部隊を持たず、地上部隊で中国側水上部隊を阻止しなければならない。米側は海峡を挟む形で海兵隊を配置し、HIMARS装備の砲兵部隊で中国艦隊の撃破を狙った。

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しかしこの配置は失敗だった。ルソン島北部に配置した米海兵隊は、優勢な中国軍歩兵部隊の攻撃を受けてその威力を発揮する間もなく一掃されてしまう。

これは遺憾と泣きを入れてやり直し。
今度は海兵隊を全てルソン海峡の島々に配置した。これにより中国軍歩兵部隊によって海兵隊が殲滅されることはなくなった。これで海峡突破を図る中国艦隊の阻止を図る。ドローンを使った索敵で中国艦隊を発見し、HIMARSがATACMSをぶっ放す。さらにカードでトマホークや長射程ミサイルを購入し、中国艦隊を撃ちまくり。

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水上艦4隻を撃沈して残りは揚陸艦1隻のみまで追い詰めたが、その1隻が海峡突破に成功したので、中国側の勝利となった。

シナリオ3.Red Tide

このシナリオは、沖縄方面に物資輸送を行う米海軍とその阻止を図る中国海軍の戦いを描いている。米軍の戦力はミサイル駆逐艦3隻、中国側は潜水艦3隻である。本作での潜水艦はマップ上に登場せず、水中を自由自在に走り回って水上艦を攻撃できる。そう考えると潜水艦は無敵に思えるが、攻撃を試みると発見されるし、魚雷攻撃を試みると、水上艦の反撃で返り討ちに遭う可能性もあるので、油断はできない。

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沖縄北方に配備された米艦隊に対して中国側潜水艦がミサイル攻撃を実施。駆逐艦1隻に命中を与えたものの、これを撃沈するには至らず。それに対して米軍はイベントカードで購入したP-8哨戒機で潜水艦の潜伏海域を攻撃。3隻の潜水艦を全て発見、これを撃沈した。このシナリオは、セットアップ40分、プレイ時間20分で終了した。

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シナリオ4,King of the Straits

時間がまだあったので、シナリオをもう1本プレイすることにした。このシナリオはマラッカ海峡におけるプレゼンスを争うシナリオで、米軍はミサイル駆逐艦4隻と海兵沿岸連隊タスクフォースの混成部隊。対する中国軍は水上戦闘艦8隻と揚陸艦2隻である。シナリオの勝利条件は、マラッカ海峡に多数の艦船を展開させることである。

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序盤のミサイル戦、艦対艦戦闘ではミサイル性能に勝る米艦隊が中国艦隊を圧倒し、味方の損害なしで敵駆逐艦4隻を撃沈した。

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対艦、対空ミサイルを撃ち尽くした米艦隊は中国側残存艦隊の反撃を避けるために南シナ海北部に後退していく。一方、マラッカ海峡の入口に残っていた中国中国側の残存艦隊に対しては、マレー半島南部に布陣した米海兵連隊戦闘団が、HIMARSから発射するATACMSやトマホーク巡航ミサイル、長距離ミサイル、さらにカードで購入した原子力潜水艦などで中国艦隊を攻撃する。

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一連の攻撃で計5隻の中国艦を撃沈したが、最後の1隻が損傷しながらも最終Turnにマラッカ海峡に進入したので、勝利条件的には米側の敗北に終わった。

感想

サイバー攻撃やドローン、無人車両の活用など、現代戦らしいといえば現代戦らしいゲームといえる。歩兵や戦車部隊も登場するが、それよりもミサイル部隊や防空部隊の方が主役というのも異例である。とはいえ、これが果たして現代戦の本当の姿なのかといえば、疑問なしとはしない。

先にも書いたが、本作では対艦ミサイルと対地ミサイルが完全に統合されていて、両者は自由に使い分けることができる。しかし実際の兵器体系では、まだまだミサイルの完全な統合化が実現していないのが実情と思える。さらにこの種のミサイル兵器は重要目標に対する攻撃にこそ威力を発揮するものの、歩兵部隊のように広く散開した目標を有効に攻撃できる兵器ではない。広く散開した歩兵を制圧又は破壊するための兵器は昔ながらの火砲や安価なロケット弾であり、高価な精密誘導兵器ではない。
本作ではそのあたりが区別されておらず、歩兵小隊に対して戦術トマホークを打ち込んで撃破するという運用になるが、果たしてそれが本当に「現代戦」なのだろうか?。

写真10_Tomahawk


ゲームシステムは索敵を重視したものになっており、索敵で敵を発見することが地上戦でも重視される。そして敵を先に発見した場合、攻撃側の歩兵部隊は一方的に防御側を殴ることができる。しかし実際の地上戦闘で、攻撃側が何の抵抗もなく防御側を一方的に殴り続けることができるのだろうか?。砲火力による遠戦ならとにかく、歩兵部隊同士の接近戦で攻撃側が一方的に防御側を殴り続けるという構図は正直理解に苦しむ。
さらにいえば、塹壕等の防御施設の利用や地形効果についてもほぼ完全に無視されており、ハイテク兵器に対する偏重と相まってバランスを欠いているという印象を持つ。

総じていえば、本作は冷戦時代における「現代戦」とは、全く異なる「21世紀型現在戦」の再現を目指した作品と言える。本作がその目的を達成しているか否かは各人意見が分かれる所だろう。筆者は上記に示した通り、本作について違和感を持ったが、Board Game Geek等の評価を見ると、本作が高い評価を得ていることがわかる。

あとは各人が実際にプレイしてみて、本作の意義を確かめて頂きたい。

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これまで何度か紹介しているVUCA社の仮想戦シミュレーション・ウォーゲーム「Red Strike」(以下、本作)のシナリオをプレイしてみた。
今回プレイしたシナリオは、シナリオB3「North German Plains」。北ドイツ平原を巡るWP軍とNATO軍の対決である。登場ユニット数356個で、キャンペーンシナリオを除けば本作で最大規模のシナリオである。
圧倒的兵力で北ドイツ平原を席捲するWP軍戦車部隊に対し、NATO軍はいかにして対抗するのか・・・。

シナリオの勝利条件は、第3Turn終了時点でWP軍がウェザー川西岸に橋頭保を築くことと、ハンブルクの港湾施設を占拠することである。
今回筆者はNATO軍を担当した。

前回までの展開は --> こちら

3Turn


WG_4D3PzDiv_41_808事実上の最終Turnである。WP軍も勝利条件を理解しているので、ウェザー川への突進を試みる。
NATO側のスタックは見かけ上「武蔵小杉のタワマン」状態だが、実質はボロボロ。WP軍の蹂躙攻撃に対抗できずに次々と強制後退を強いられる。

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すると後方でスタック制限超過の「超高層タワマン」状態となる。こうなるとスタックの中身を見るのも一苦労。「もうどうでも良いや」という状態になる。「こんなクソゲー、やってられるか」という気持ちにも、ならなかったと言えば嘘になる。

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そんなNATO軍の状況を無視してWP軍はウェザー川防衛ラインに全力攻撃を仕掛けてくる。かくいうWP軍もこれまでの大盤振る舞いが祟り、補給ポイントが残り少なくなってくる。シナリオの初期配置では350ポイントもの補給ポイントを保有していたWP軍だが、1回の全力攻撃で最低でも16ポイント、下手をすれば30ポイント近く消費しているので、残りが少なくなってきたのだ。
WP軍はなけなしの補給ポイントを全振りしてウェザー川渡河攻撃を行う。NATO軍もHasty Defense(急速防御)に補給ポイントを注ぎ込んで防衛ラインを死守を図る。WP軍はNATO軍防御部隊に化学兵器を集中投入し、一気に11戦力を失わしめた。WP軍は化学兵器を投入して戦闘比を最高の10-1まで上げて、さらに砲兵支援でDRM+3。出目が5以上ならNATO側は強制後退になるので、ウェザー川の西岸にWP軍は橋頭保を確保する。逆に出目が4以下なら、NATO側が死守に成功し、WP側の勝利はなくなる。ちなみにこのゲームのダイスはD10なので、出目5以上が出る可能性は60%だ。

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WP側プレイヤーが振ったダイス目は、"2"。WP軍のウェザー川渡河作戦に失敗し、NATO側の勝利が決定した。

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感想

SO_Mi-24_20GCAA_487OVP本作最大規模のシナリオをほぼ2日間かけてプレイした。プレイ時間は実質15時間程度(セットアップ含む)。1Turnの平均所要時間は4~5時間になる。実際の所、初日はセットアップと第1Turnのプレイだけで終わってしまい、2日目は第2~3Turnを約6時間かけてプレイした。

作戦レベルでの反省点だが、部隊編成をバラバラにしたのはやはり失敗であった。最初の段階で部隊編成やヒエラルヒーをちゃんと理解し、可能な限り建制を崩さないように配備すべきであった。また地形効果の読み間違いも痛かった。前回のプレイでも誤解していたのだが、森の地形効果を防御力2倍と見誤っていた。しかし防御力2倍になるのは非機械化部隊のみ。初期配置されているNATO軍部隊のほぼ全てが機械化部隊なので、森の防御力恩恵の効果は得られないことがプレイ中に判明した。それなら無理に森で守らず、その前の川のラインで守った方が良かったかもしれない。
さらに言えば、WP軍の化学兵器効果が強力なので、生半可な戦闘比なら簡単に最高比にまで持っていかれてしまう。だから序盤は無理に拠点に集中防御するのではなく、ZOCを張れる程度の部隊を縦深配置し、前方の部隊は戦術的撤退によって兵力を温存するのが得策だったかもしれない。シナリオの本番は第2Turn以降の戦いになるのだから、そこまでは可能な限りNATOとしては兵力を温存しておくのが正しい戦術であったように思う。あと、プレイ中にも触れたが、ユトランド半島入口は可能な限り死守すべきであった。その結果、リューベックを守る部隊(西ドイツ第6装甲擲弾兵師団又は第3装甲師団)が包囲されたとしても、港湾補給によって飢えることはない。よしんば包囲殲滅されたとしても、その分時間稼ぎができたのならヨシとすべきだろう。

全般の反省として、やはりプレイの前の準備が不足していたことは否めない。少なくとも麾下の部隊編成を理解し、各部隊毎に任務を明確にしておくべきであった。それがなかったため、各地で雑多な部隊を糾合しただけのハイスタック防御となってしまい、前線部隊に余分な苦戦を強いた点は大いに反省すべき点であった。

プレイ全体の感想だが、正直な所、後半はかなりプレイが辛かった。というのもスタックが大きくなり過ぎて、スタックの中身を一々把握するのが困難になってきたということだ。本作の場合、NATO軍は連隊~旅団規模が基本なので、1Hexに戦闘部隊だけで6ユニットがスタックできてしまう(スタック制限は6個連隊相当)。さらに司令部等の支援部隊、ヘリ部隊、CAP部隊等がスタックされ、さらに損害を受けたユニットには損害マーカーが付与されるのでスタックはそれころ「これって武蔵小杉のタワマンですか?」というぐらいの状態になってしまう。このスケールのゲームならNATO側は師団規模ユニットにした方がプレイアビリティが良くなると思うのだが・・・。

ただしハイスタック問題については、プレイヤーが事前に麾下の部隊編成をちゃんと理解しておくことで回避できる問題でもある。上にも書いたが、今回のプレイでは筆者自身が準備不足だったことが混乱に拍車をかけたキライがある。だから一概に「ゲームが悪い」と決めつけることはできないとも思っている。

ゲームシステムも詳細なのは良いのだが、詳細過ぎて余計な手間が多すぎると思う。航空機がマップ上を「実際に飛行して」爆撃を行うシステムにしても、AWACSによる探知やCAP機による迎撃、BVR戦闘等、まるで「パイロットが判断すべき事項をプレイヤーが行っている」感覚すら覚える。CAS(近接航空支援)も手間がかかり過ぎる上、CASの成否が戦闘結果に与える影響が大きいだけに手抜きができないのが辛い。

本ゲームのシステムは、元々はペルシャ湾の戦いを扱ったGulf Strike(Victory Games 1983)、エーゲ海の戦いを扱ったAegean Strike(Victory Game 1986)で採用されたシステムを部分修正したものである。中東油田地帯やバルカン半島のように部隊密度が低い地域ではこのシステムが比較的問題なく機能した。しかし部隊密度が高く、航空戦力も集中配備されているヨーロッパ中央部でこのシステムを採用するのはやはり無理があると言わざるを得ない。陸戦、海戦、航空戦のいずれも高い精度で再現できるゲームシステムというのはウォーゲーマにとっては一つの夢だ。しかし実際には陸戦専用、海戦専用、航空戦専用ゲームと比べるといずれの面でもゲーム性、シミュレーション性共に劣るという結果になるのが通例だ。陸戦ゲームをやりたければ、The Third World WarやNATO(いずれもCompass Games)をプレイするれば良いし、海戦ゲームならBlue Water Navy(Compass Games)という傑作もある。空戦ゲームならRed Strike(GMT Games)もあるし、今ならネットゲームで良いものがいくつもある。

今回、このシナリオをプレイしてみて、この規模になると最早リアルな環境でプレイするのは困難だと認識せざるを得なかった。中規模シナリオであっても、以前に紹介した B1.Fulda Gap ぐらにならギリギリでプレイ可能かもしれない。
あるいは以前にプレイした B5.Miami1989 やB6.Valkyrie's Embraceのような海戦シナリオなら、ルールがシンプルで登場ユニット数も少ないのでプレイは十分に可能だろう。

実際のプレイの後、VASSAL環境を使って本シナリオを少し走らせてみた。VASSALの場合、ハイスタックが出来てもプレイに支障はないので、快適にプレイできた。本作の中規模以上のシナリオをプレイするのであれば、現時点ではVASSALによるプレイが最適解だと思った次第である。

ゲームの種類によってはリアルでの対戦よりもVASSAL対戦の方が向いてるゲームが結構多いかも。一旦は諦めかけた本作キャンペーンシナリオのプレイについても「VASSALを使えば何とかなるかも」と、お気楽に考えている今日この頃である。


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上はキャンペーンシナリオのセットアップをVASSAL上で見たものです。あーあ、確かにいつかキャンペーンシナリオをプレイしてみたいなぁ・・・。


Blue Water Navy The Third World War, Designer Signature Edition Next War Poland Interceptor Ace 2
世界の最強軍用機図鑑 イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊 F-15イーグル Flight Manual & Air-to-Air Weapon Delivery Manual F-15C EAFLE UNITS IN COMBAT

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これまで何度か紹介しているVUCA社の仮想戦シミュレーション・ウォーゲーム「Red Strike」(以下、本作)のシナリオをプレイしてみた。
今回プレイしたシナリオは、シナリオB3「North German Plains」。北ドイツ平原を巡るWP軍とNATO軍の対決である。登場ユニット数356個で、キャンペーンシナリオを除けば本作で最大規模のシナリオである。
圧倒的兵力で北ドイツ平原を席捲するWP軍戦車部隊に対し、NATO軍はいかにして対抗するのか・・・。

シナリオの勝利条件は、第3Turn終了時点でWP軍がウェザー川西岸に橋頭保を築くことと、ハンブルクの港湾施設を占拠することである。
今回筆者はNATO軍を担当した。

SetUp

このゲーム、全てのシナリオでセットアップは一部を除き固定化されている。筆者の持論として「SLGのセットアップは固定セットアップが良い」というのがあるが、その理由は「初心者に優しい」という理由と、「余計な事にプレイヤーの脳のリソースを使わせたくない」というのがある。その点ではこのゲームは有難い。

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UK_1AD_7_1018このシナリオでは、シナリオ開始前に一定の事前移動が認められている。NATO軍は移動力の半分まで。WP軍は移動力の2倍の範囲で移動可能である。一見するとWP軍が有利に思えるが、序盤に分散配置されているNATO軍にとっては、自軍を強化する千載一遇の好機となる。そこでNATO軍としては地形効果のある拠点に部隊を集めた拠点防御でWP軍の前進を止める方針とした。

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1Turn

SO_3CAA_12GTD_2938ソ連軍は化学兵器搭載の中短距離ミサイルを西ドイツ領内に大量に打ち込んできた。主目標は防空組織と飛行場。一連の攻撃を受けて西ドイツ領内のNATO航空基地は、その大半が機能損失するに至った。

化学兵器の威力については、 前回のプレイ で完全に失念していた部分である。化学兵器は追加効果が色々あるのでそちらに目を奪われがちになるが、敵部隊や施設に対する打撃という面でも通常兵器よりも遥かに強力である。1点目として化学兵器は通常弾頭とは異なる命中判定が不要で常に命中扱いとなること。さらに命中した場合、通常弾頭では1打撃しか与えられないが、化学兵器の場合は2打撃を与えることができる。すなわち単純計算で化学兵器の威力は、通常弾頭と比較して2~4倍程度の威力があると考えて良い。

ガスマスク


制空権を得たWP軍地上部隊は。東西国境を突破し、ハンブルグ(Hamburg 2821-2822)、ブラウンシュワイク(Braunschweig 2223)に殺到する。北ドイツ平原を守る英第1機甲師団と第4機甲師団はWP戦車部隊の攻撃を受けて壊滅的な損害を被った。

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US_EF-111A_42ECSNATO側の反撃は空から行われた。米本土からはB-52爆撃機が発進し、東ドイツ領内のWP軍航空基地に対してAGM-86空中発射型巡航ミサイルを大量に打ち込む。巡航ミサイル攻撃を受けてダメージを受けた航空基地に対しては、英本土を発進したF-111E/Fアードバーグの編隊が、護衛なしで飛来。WP軍の防空戦闘機やSAMによる妨害をEF-111Aレイブンによる強力な電子妨害で強行突破。精密誘導兵器による必殺の一撃を叩き込む。

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一連の航空攻撃でNATO軍は東ドイツ領内にある4個の航空基地を破壊した。その過程でSu-24 3ユニット、MiG-29 3ユニット、MiG-27 3ユニット、その他2~3ユニットを撃破した。これは大きな戦果であったが、それでも東ドイツ領内に配備されたWP軍航空戦力の20パーセントに満たない数を撃破したに過ぎなかった。

2Turn

US_B-52H_410NATO軍がバルト海沿岸の港湾都市リューベック(Lubeck 2924)を放棄し、ユトランド半島への進撃路が開かれた。

後から考えると、リューベックの放棄は愚策だったと思える。NATOとしてはリューベック、ハンブルクのラインで可能な限り阻止戦闘を展開し、WP軍の進撃を遅らせるべきだっただろう。無論、最終的に両都市の陥落は避けられないとしても、WP側の戦争資源を可能な限り長期間ユトランド半島の入口で消費させるのは悪い戦略ではない。WP軍としても勝利条件の関係上、ハンブルクを無視して前進するのは難しい。

WP軍はユトランド半島を席捲・・・、せず。ユトランド半島の付け根をそのまま西へ進んでハンブルクの西半分を攻撃する。これはNATO側にとってはラッキーだった。というのも、ユトランド半島に残っていた航空基地の一部はまだ機能しており、そこには第3Turnに米軍のF-15イーグルを含む戦闘機隊が登場することになっていたらからだ。

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何はともあれ、WP軍戦車部隊はハンブルク西半分に殺到する。さらに南ではハンブルクとハノーバーの間に広がるリューネブルガーハイデ(Luneburger Heide)自然保護区で遅退戦闘を行うNATO軍に対してWP軍が猛攻撃を加える。これらを守るNATO軍は雑多な編制の数個師団。スタックの内容が建制を無視したバラバラな内容になっているため、Deliberate Defense(計画防御)を選択できないのが辛い。Deliberate Defenseなら強制後退の結果を食らっても追加の損害により後退結果を無視できるのだが・・・。

WP軍の猛攻によりハンブルクは遂に陥落。さらにリューネブルガーハイデでもNATO軍部隊は後退を余儀なくされていく。
NATO軍は航空攻撃の目標を航空基地から地上部隊に変更する。B-52部隊も巡航ミサイル攻撃から通常爆弾に兵装を切り替え、F-111E/Fアードバーグの編隊と共同でWP軍戦車部隊に爆弾の雨を降り注ぐ。この攻撃でソ連軍戦車2個師団を事実上半身不随状態とした。

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NATO軍はハンブルクから後退し、エルベ川西岸からリューネブルガーハイデ西部に沿って戦線を形成する。勝利条件は第3Turn終了時にWP軍がウェザー川西岸に進入するのを阻止することなので、逐次後退しつつなんとかウェザー川の防衛ラインを阻止したp。

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つづく


NATO Designer Signature Edition Blue Water Navy
幻の東部戦線 機動の理論 The Art of Maneuver: Maneuver Warfare Theory and Airland Battle アメリカの航空母艦資料写真集

240320c_ハリコフ対戦動画

「ハリコフ」は、1982年に日本のエポック社から発売された「ドイツ戦車軍団」の含まれる1ゲームです。テーマは1943年冬季の第3次ハリコフ戦で、1943年1月19日から3月15日までの約2ヶ月の戦いを、1Turn=1週間、1ユニット=ドイツ軍:連隊~師団、ソ連軍:軍団規模で描いてます。

今回「ハリコフ」をプレイしたので、その記録を動画化してみました。




ドイツ戦車軍団(ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス第3号)
WWS第9号『ドイツ装甲軍団1』
バルジ大作戦 (ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス第4号 第2版)

240320b_エルアラメイン対戦動画

「エルアラメイン」は、1982年に日本のエポック社から発売された「ドイツ戦車軍団」の含まれる1ゲームです。テーマは1942年夏の第1次エルアラメイン戦で、1941年8月31日から9月1日の2日間の戦いを、1Turn=12時間、1Hex=3km、1ユニット=連隊~師団規模で描いてます。

今回「エルアラメイン」をプレイしたので、その記録を動画化してみました。



ドイツ戦車軍団(ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス第3号) North Africa '41 NO RETREAT2

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