もりつちの徒然なるままに

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カテゴリ:戦史 > 第2次欧州大戦

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The Fall of the Third Reich(以下、本作)は、2016年に米国Compass Gamesから発売されたSLGだ。テーマは第2次大戦後半の欧州戦線全体で、1943年7月~45年6月までの2年間の戦いを1Turn=2ヶ月の計12Turnで再現する。

今回、本作を4人でプレイした。プレイヤーの担当は、それぞれ西側連合国、ソ連、枢軸軍西部戦線(OKW)、枢軸軍東部戦線(OKH)だ。筆者はソ連を担当した。

前回までの展開は --> こちら

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7Turn(1944年7-8月)

前のTurnに連合軍が南フランスのニース(Nice 25.26)に上陸した。同方面のドイツ軍は殆どなかったので連合軍はフランス・イタリア国境を越えてイタリア北部に進入。重要都市ミラノ(Milan 29.25)を占領した。背後に敵を受けたイタリア半島のドイツ軍は一部を除いて全面撤退し、イタリア・ドイツ国境に新たな防衛ラインを築いた。

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USSR_5GT_758西部戦線では、米英連合軍がフランス全土をほぼ解放し、ドイツ国境まで急進していく。東部戦線でもソ連軍がキエフ(Kiev 62.18)南方、チェルカッシー(Cherkassy 64.20)とジトミール(Zhitomir 59.20)の間でドイツ軍6個軍団を包囲した。これを見て

「まるで、史実のコルスン包囲戦みたいだ」

と参加者一同盛り上がったのは言うまでもない。

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8Turn(1944年9-10月)

GE_GD_A8東部戦線では、ドイツ軍は当然包囲下の友軍を救出すべく、救出作戦を発動する。これを見てまともや参加者一同が

「まるで、史実のコルスン包囲戦みたいだ」

と盛り上がったことは言うまでもない。

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ソ連軍としては、機動反撃部隊の主力を包囲網の西側に配置したのが失敗であった。ドイツ軍の逆包囲にあってリアクションを取れなかったのである。もしソ連軍機動反撃部隊の主力が包囲網の東側に布陣していれば、ドイツ軍による救出作戦に対してもっと有効に対処できたものを・・・・。と、悔やむソ連軍プレイヤーであったが、後の祭りであった。包囲下のドイツ軍を完全殲滅することには失敗し、包囲網は破られた。

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9Turn(1944年11-12月)

RU_Cav_36このTurnはルーマニアが一つの焦点となった。このゲーム、1945年開始時点でソ連軍ユニットが1つもソ連国外に出ることができないと、その時点で枢軸軍のサドンデス勝利が確定する。逆にソ連軍ユニット4個以上がルーマニアに位置していると、その時点でルーマニアが枢軸陣営から脱落する。まさにルーマニア攻防戦が今回の勝敗を決めるカギになりそうな気配であった。

枢軸軍は、しかしルーマニアに全振りするというような極端な施策は取らなかった。ルーマニアと運命を共にするのを潔しとしなかったのだろう。敵ながら天晴だ。
結果的にソ連軍はルーマニア進入に成功し、このTurn終了時点でルーマニアは枢軸軍陣営から脱落した。

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10Turn(1945年1-2月)

US_8thAF本作では戦略爆撃が含まれていることは最初に紹介した。これまでも西側連合軍はドイツ本土に対する戦略爆撃を継続実施し、相応の戦果を挙げてはいたが、決定的な要因とはなっていなかった。また1943~44年の間はまだドイツ側防空戦闘機が強力なので、それに阻まれていた面もある。

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しかしこのTurn、遂に大戦果を挙げた。3個空軍による戦略爆撃が全て成功し、ドイツ軍の補充ポイントを僅か1ポイントまで減らすことに成功したのである。しかもその過程でドイツ空軍に壊滅的な損害を与えていた。これによりドイツ側は戦線構築が困難と判断。時間的にもキリが良かったこともあって、この時点でゲーム終了とした。

ちなみにこの時点でゲーム終了とした場合、VP的には連合国側の勝利で、特に西側連合国の勝利という結果となった。

感想

CW_30_568うわー、面白い
ルールは比較的シンプルなので、1度プレイすれば容易に理解できる。欧州全域の戦いを描いた作品なので戦略爆撃や上陸作戦などの特殊なルールが多く見えるが、決して難しいものではない。極端に言えば、当日確認しても十分に対応可能だ。陸上戦闘部分も基本的なルールの組み合わせなので難しいことはなく、その場のインストでも十分にプレイ可能だろう。

このようにシンプルなルールの本作だが、その史実再現性の高さには唸らされた。シシリー戦やイタリア半島の戦い、1944年のノルマンディ上陸戦やその後のフランス国内大突破など、まるで史実通りの展開なのは驚いた。
東部戦線については史実よりも約半年遅れの進撃となったが、それは序盤にソ連軍プレイヤーがSTAVKAマーカーの使い方を間違えていたのが大きいだろう。それでもコルスン包囲戦がちゃんと再現できるなど、こちらも史実再現性が高い。基本的なルールを組み合わせただけなのにこれほど高い史実再現性を実現するとは、まるで魔法のようである。さすがは名デザイナーTed Raicerだ。パスグロを生み出したそのデザイン手腕は、全く衰えていなかった。

2016年発売の作品ということで現時点ではやや入手困難な作品となってしまったが、機会があればプレイしてみてほしい作品である。



Fortress Europa Game Journal 70-第三帝国の盛衰
図解 第二次世界大戦1939.9~1943.9 独ソ戦全史: 「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 Sicily 1943 遠すぎた橋

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The Fall of the Third Reich(以下、本作)は、2016年に米国Compass Gamesから発売されたSLGだ。テーマは第2次大戦後半の欧州戦線全体で、デザイナーはTed Raicer。Ted Raicerといえば、WW1を扱った超人気ゲームPaths of Gloryのデザイナーとして知られており、近年ではノルマンディ上陸戦を扱ったThe Dark Summerが高い評価を得ている。

本作は、1943年7月~45年6月までの2年間の戦いを1Turn=2ヶ月の計12Turnで再現する。1Hexは約30マイル、1ユニットは軍団(枢軸軍、西側連合軍)~軍(ソ連軍)だが、ドイツ軍の装甲師団と西側連合軍空挺師団は別ユニットになっている。マップはフルマップ2枚で、西はフランス全域から東はミウス川まで、欧州大陸が描かれている。シシリー島も含めたイタリア半島もマップに含まれるが、北アフリカや英国本土、スターリングラード方面やコーカサス地方はマップに含まれていない。1943年以降テーマのゲームならではの処置だろう。

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Z_Marker_Allied_Reactionゲーム手順は、移動・戦闘・機械化移動をプレイヤー別に繰り返す方式で、戦闘と機械化移動の間に相手プレイヤーのリアクションフェイズが挟まる。このリアクションフェイズが秀逸で、他のゲームのように「予備マーカー」のようなものは必要なく、特定の1スタック又は1Hexを指定し、スタックを指定した場合にはそのスタックが自由に移動戦闘でき、Hexを指定した場合にはそのHexにやって来ることができるユニットが移動戦闘できる。このシステムのため、予備ルールがあるにも関わらずプレイアビリティはすごぶる良い。ちなみにスタック制限は3ユニット+師団ユニット(装甲師団1個、空挺師団2個)となっている。

戦闘結果表は通常の戦闘比方式だが、戦闘比が1:1と2:1の間は戦力差方式となっている。戦闘結果は攻撃側全滅、防御側全滅等の極端なものもあるが、結構多いのが「1ステップを残して全滅」というパターン。ということは、元々1ステップしかない場合、「1ステップを残して全滅」という結果であっても事実上損害を受けないことになる。またドイツ軍ユニットの多くが可変戦闘力方式を採用しており、予め戦闘比を計算しておくことが難しいようになっている(そうはいっても戦闘比の予想は立てるけどね)。また戦闘システムは基本的にはMay Attack(攻撃実施は任意)だが、複数Hexから1Hexを攻撃する場合には攻撃側は自身のZOC内にいる全ての敵ユニットに対する攻撃義務が発生する(Must Attack)。

ZOCは通常通りだが、機械化移動フェイズには機械化部隊以外はZOCを持たない。従って前線を突破した機械化部隊が機械化移動で敵を包囲する縦深突破や電撃戦が実現可能となっている。さらにそれを阻止するためにもリアクションが重要になってくる。ただ苦言を述べると、機械化部隊とその他の部隊の区別が兵科マークなので少しわかりにくい。昔のゲームならまだしも、21世紀のゲームなら例えば移動力の配色を変える等の工夫が欲しかった所だ。

他には司令部ルールと補給ルールがあり、いずれも都市や町ヘクスが基点となる。従って攻撃側は敵支配下の都市を放置するのではなく、大都市を優先的に占領していく必要がある。司令部ルールは攻勢支援をも表していて、司令部の指揮範囲内にないユニットは様々な不利益を被る。連合軍は戦略爆撃で油田地帯を破壊することで、ドイツ軍が受け取る司令部能力を下げることもできる。

他には航空戦や上陸作戦のルールがあり、戦略爆撃も実施可能だ。

勝利条件は最終Turn終了時点でのVPヘクスの支配によって決まる。連合軍が勝利するためには少なくとも史実並みの戦果を残す必要がある。さらにソ連と西側連合国は、それぞれ相手よりも大きなVPを獲得しなければならない。逆にドイツ軍としては連合軍の連携を悪さを突く作戦も考えられる(やり過ぎるとウザいだけなので、ホドホドに…)。

今回、本作を4人でプレイした。プレイヤーの担当は、それぞれ西側連合国、ソ連、枢軸軍西部戦線(OKW)、枢軸軍東部戦線(OKH)だ。筆者はソ連を担当した。

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セットアップはシンプルだ。セットアップHexがユニットに記載されているので、その通りに配置していけばよい。

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1Turn(1943年7-8月)

Z_Marker_CW_BH連合軍がシシリーに上陸し、ゲラ(Gela 33.43)とシラクサ(Syracuse 35.43)を占領した。ちなみにあと町を1つ、パレルモかメッシナを連合軍が占領すれば、イタリアが降伏する。

東部戦線ではドイツ軍はクルスク方面での攻勢を実施せず、ハリコフ正面で攻勢を仕掛けてきた。ドイツ軍はドネツ川の戦線を突破し、後方のソ連軍3個歩兵軍を包囲した。ソ連軍はそれを解囲する術がなく、包囲された3個歩兵軍は壊滅するしかなかった。

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しかし無理な反撃をしたドイツ軍の戦線は大きく割かれてソ連軍はドイツ軍背後を突破し、ウクライナ全土へ雪崩れ込む。包囲下に陥ったドイツ軍は一転して窮地に陥った。

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2Turn(1943年9-10月)

ハリコフを奪回したソ連軍はさらに進撃を続ける。しかし防衛体制を立て直したドイツ軍は強固な防衛ラインを構築し、ソ連軍による西方への突破を許さない。

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なお西部戦線では、このTurn、イタリアが降伏した。

3Turn(1943年11-12月)

Z_Marker_STAVKA4ここでソ連側は重大なミスに気付いた。STAVKAマーカーの右上の数字を登場Turnと勘違いしてしまい、本来は使えるはずのSTAVKAマーカーを使っていなかったことに気が付いた。悔やむに悔やみきれない。これがあれば、第1Turnに包囲殲滅された歩兵3個軍は助けられたのみならず、突出したドイツ軍を包囲殲滅できたはずである。本当に惜しいことをした。

5Turn(1944年3-4月)

ここまで今一つ前進が振るわなかったソ連軍だが、スミー西方でドイツ軍3個軍団を包囲した。ちなみにこのTurnから枢軸軍プレイヤー1名が抜けたので、枢軸軍全部をプレイヤー1人で担当することとなった。

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イタリア半島では連合軍が激戦地として知られているモンテカッシノを占領。ローマをその指呼に捉えた。

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6Turn(1944年5-6月)

西側連合軍は史実通りノルマンディに上陸した。上陸は大成功で、海岸地帯を守っていたドイツ軍はまとめて消滅してしまう。海岸部にフルスタックするとまとめて壊滅する危険があることに枢軸軍プレイヤーが気づいた時には、既に手遅れだった。

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東部戦線では、ソ連軍がドニエプル川を渡河し、ドニエプル川西岸地区でドイツ・ルーマニア連合軍計11個軍団を包囲した。これまでにない大包囲で意気上がるソ連軍であった。

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つづく




Fortress Europa Game Journal 70-第三帝国の盛衰
図解 第二次世界大戦1939.9~1943.9 独ソ戦全史: 「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 Sicily 1943 遠すぎた橋

241201_GJ93パンツァーカイル
Game Journal 93-パンツァーカイル
「パンツァーカイル:ハリキウ攻防戦」は、Game Journal 93号の付録ゲームで、テーマは1943年1月~3月に行われた第3次ハリコフ攻防戦です。本作はこの戦いを、1Turn=1週間、1Hex=16km、1ユニット=連隊~軍団規模で再現しています。

今回は。本作のコンポーネントを紹介する動画を作成してみました。



Game Journal 93-パンツァーカイル Game Journal 92-孤高の曹操 Game Journal 91-クロニクル・オブ・ジャパン Game Journal 90-モントゴメリーの憂鬱、孤高のアルンヘム
Game Journal 89-フランス革命 Game Journal 88-激闘ロンメル・マッカーサー Game Journal 87-新信長風雲録 Game Journal 86-戦略三国志英雄伝説
Game Journal 85-義経戦記:源平奥州六大合戦 Game Journal 84-応仁の乱 Game Journal 83-ノルマンディ強襲 Game Journal 82-孤高の信長

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名ウォーゲームデザイナー Ted S. Raicer による「The Fall of the Third Reich」── 第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の最後の2年間を再現する本格戦略級SLGです。

舞台は1943年7月、クルスクの死闘とシシリー島侵攻から戦いは始まります。連合軍は、ノルマンディー、イタリア、ギリシャと様々な侵攻ルートを選択できます。またソ連軍は独ソ戦の激戦を勝ち抜く必要があります。

戦略の鍵となる要素
・ダイナミックな前線戦術:反応移動と浸透攻撃の組み合わせが勝敗を左右!
・戦略爆撃の影響:航空戦が戦局に大きく影響!
・補給線の重要性:特に西部戦線では港の確保が勝利のカギに!
・多方面作戦のジレンマ:防衛に徹するドイツ軍は敗北必至、反撃を駆使して連合軍を叩け
・選択肢の広がる連合軍の侵攻ルート:イタリア降伏を狙うか、早期に第二戦線を開くか?

スムーズなプレイアビリティと、歴史の再現性を兼ね備えたこのゲーム。
果たしてドイツ軍は連合軍の猛攻を食い止められるのか? それともベルリン陥落が早まるのか?

このプレイ動画でその全てを確かめてみて下さい。




Fortress Europa Game Journal 70-第三帝国の盛衰
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Game Journal 90-モントゴメリーの憂鬱、孤高のアルンヘム
GJ90「モントゴメリーの憂鬱-孤高のアルンヘム」は、2024年に発売されたGame Journal90号の付録ゲームです。テーマはマーケットガーデン作戦で、同作戦を1ユニット=大隊~連隊の規模で再現します。Turnの概念はなく、マップはエリアで区切られています。

このゲームの本作の特徴は何といってもソロプレイゲームであることです。プレイヤーは連合軍の立場となり、ゲームシステムが操るドイツ軍と戦います。プレイヤー側の勝利条件は、マーケットガーデン作戦を成功させることです。

以前の動画でもプレイ風景を紹介しましたが、今度は何とかアルンヘム攻略を達成して勝利すべく、再度チャレンジしてみました。





Game Journal 90-モントゴメリーの憂鬱、孤高のアルンヘム Game Journal 93-パンツァーカイル Game Journal 92-孤高の曹操 Game Journal 91-クロニクル・オブ・ジャパン
遠すぎた橋 西部戦線 (歴史群像アーカイブVol.17) ドイツ重戦車 戦場写真集 パンタ-vsシャ-マン: バルジの戦い194

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