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「武田騎馬軍団」(以下、本作)は、1988年にエポック社から発売されたシミュレーションゲームである。テーマは武田騎馬軍団が戦った個々の合戦で、上田原、戸石、川中島、三方ヶ原等、計7つの合戦がシナリオ化されている。

本作は少し変わった手順を採用している。いわゆる「アイゴー、ユーゴー」システムではない。まずダイスで主導権判定を行い、主導権を取った側が移動順(先か後か)を決定する。そして両軍が順番に麾下のユニットを移動させる。両軍の移動が終わった時点で隣接したユニット同士で射撃戦、白兵戦が行われるので、一般的には後で動いた方が有利である。主導権はダイス(D6)を振り合って大きい側の勝ち。主将の軍略値によって有利・不利がある(例えば「上田原の合戦」では、軍略値で村上勢が1有利になっている)。

移動ルールには少し捻りが加えてある。それは追撃の概念だ。移動中の敵が友軍ユニットのZOCから離脱した場合、その友軍ユニットは離脱したユニットを追撃する。追撃というのは敵の移動経路を追う形で移動すること。この追撃は原則として強制なので、わざとZOCから抜け出して敵の追撃を誘い、敵を罠にはめることもできる。しかし武将が存在するスタックは、武将が戦術力チェックに成功すると、追撃を止めることができる。この追撃ルールが本作を面白く、また難しくしている。

射撃戦闘は1ユニット単位で隣接ヘクスの敵ユニットを射撃する。命中が得られると目標に混乱レベルが加算される。命中のし易さや命中時の効果は鉄砲かそれ以外かで異なっている(当然鉄砲の方が当たりやすい)。
白兵戦闘はいわゆる「マストアタック」で、隣接するユニット同士で「戦闘組」を作り、突撃力の差によって個別に白兵戦を解決する。白兵戦の結果はどちらか一方が混乱して後退する(稀にEX=両方混乱の結果あり)。白兵戦に勝った側は、移動の場合と同じく追撃を強制される。

上記以外に士気に関するルールがある。士気はそれぞれの陣営で一律に与えられており、自軍ユニットが後退、壊滅する毎、あるいは自軍武将が討死、負傷する毎に低下する。逆に時々士気が上昇することもあるが、多くの場合は士気は下がっていく。自軍の士気はまた麾下のユニットがどれだけの混乱を耐えられるかをも決める指標となっており、例えば士気値が31~40の場合、麾下のユニットは混乱レベル4まで耐えられる(混乱レベル5以上で壊滅)。これが例えば士気値が10~19になると、混乱レベル2までしか耐えられない。

基本システムは以上(他に本陣に関するルールもあるが、ルール自体はシンプル)である。ルール自体はシンプルであり、理解し易いが、ルールブックの書き方が一部曖昧で判断に迷う所がある。その事については、後にまとめて記載したい。

今回、本作のシナリオ2「上田原の戦い」をソロプレイしてみた。戦国時代について「一般人」程度の知識しかない私のとって、「上田原の戦い」といっても「なんか聞いたことがあるかも」程度の理解でしかない。Wikipediaによると、上田原というのは今の上田市あたりのことで、武田信玄はライバル村上義清に手痛い敗北を喫したそうな。はてさて・・・。

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1Turn

武田方が川沿いに向けて前進。川(浦野川?)を挟んで武田と村上勢が対峙する。赤が武田勢、青が村上勢である。

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2Turn

主導権は村上方が獲得した。しかし両軍とも川沿いに沿ったまま様子を見る。

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3Turn

村上勢が川の上流(写真上の方)を渡河して武田勢に襲い掛かる。村上勢の武将西条義忠が川を渡って武田勢を攻める。武田勢は川向うに後退して態勢を立て直す。

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4Turn

武田勢が主導権を握った。上流部に対しては、武田勢は板垣信方、飯富虎昌らを派遣するが、村上勢も屋代政国、屋代道斉、西条義忠らで攻勢を強める。
下流部では武田勢が村上本陣へ攻勢を開始。武田晴信が本陣を構え、小山田信有、甘利虎康らが川を渡って村上義清の本隊を目指す。

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5Turn

村上勢が主導権を取り返した。後攻を取った村上勢は武田勢を自らの懐に引きずり込んで殲滅を図る。しかし兵力に勝る武田勢は、合戦のダイスにも恵まれた。村上方の武将である森村清秀、西条義忠が相次いで負傷。戦線を離れる。このTurn、武田勢の士気値は32まで低下したが(元々は40)、村上勢はそれを下回る士気値30まで落ち込んだ。

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6Turn

主導権を取ったのは武田勢である。兵力に勝る武田勢は、先攻を取って一気に攻め込む。村上勢は何とか対抗しようとするが、部隊の多くが混乱状態にあり、武田勢をまともに戦える状態ではなかった。次々と討ち取られる村上の雑兵達。このTurn、村上勢は、屋代道斉が負傷退場し、合計7ユニットが討ち取られた。村上勢に残ったのは、主将である村上義清、屋代政国、そして雑兵6ユニットのみである。

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7Turn

武田勢が弓矢の一斉射撃で村上勢を猛攻。既に大きな損害を受けていた村上勢はそれに耐えられなかった。屋代政国討死。村上義清も負傷退場。ここに上田原の戦いは終了した。武田勢の完全勝利である。

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感想

ゲームとしては面白いと思う。エポックのゲームらしく、やや演出過剰な雰囲気もあるが、当時の合戦に詳しくない私のような人物にとっては「それっぽさ」を感じた。
基本システムはシンプルだが、追撃ルールの使い方が難しい。慣れたプレイヤーなら後退戦術を上手く使って敵を引きずり込んで分断・撃破という技が使えるかもしれない。私にはまだまだムリだが・・・。
あと士気が少しずつ落ちてきて、ある時突然「ががー」っと士気が崩れて全軍崩壊していく雰囲気が楽しい。今回のゲームでは、第5~6Turnの村上勢が正にそれである。

冒頭で書いたが、ルールに一部解釈に迷う所がある。それについて書いておく。
 (1)白兵戦で上限を上回る混乱を受けた時、後退の結果を受けて後退した後壊滅するのか、それとも即座に壊滅するのか。--> 即座に壊滅すると解釈した。
 (2)白兵戦で敵が壊滅した場合、追撃はどこまで行うのか。--> 壊滅した敵ユニットがいたヘクスまでと解釈した。
 (3)2ユニットで追撃する場合、追撃中の味方を乗り越えて追撃を強制されるのか。--> 味方の乗り越え追撃はないと解釈した。
 (4)主導権ダイスが同じ目の場合はどうするのか。--> 振り直しと解釈した。

なお、対人戦の場合、最初の陣形は両軍とも秘密裏に配置することになる。このことにより陣形を考える楽しみがあるが、今回はソロプレイなのでその楽しさは味わえなかった。少し残念である。
あともう1つ。これも旧エポックゲームの特徴なのだが、ユニットのデザインが少し寂しい。20世紀のゲームだから仕方がない面もあるが、もし再販される場合にはユニットデザインは一新して欲しい所だ。

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