「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)のシナリオ作成もいよいよ大詰めになってきた。
今回取り上げるのは、1945年1月下旬にノルウェーベルゲン沖でのドイツ海軍と英海軍との遭遇戦である。ノルウェー北部からバルト海へ向けて南下を行うドイツの大型駆逐艦3隻が、英国海軍の巡洋艦2隻と中部ノルウェー近海で遭遇したのだ。駆逐艦以上の水上戦闘艦同士の水上戦闘としてはWW2で最後となった戦いでもある。
主役を演じた英独の艦艇を紹介しよう。
まず英海軍の軽巡2隻。1隻は防空軽巡「ダイアデム」。ベローナ級の防空軽巡で基準排水量約6,000トン。大きさはとにかく、主兵装は13.3cm両用砲8門と巡洋艦というよりも大型駆逐艦クラスの火力でしかない。
もう1隻は軽巡「モーリシャス」。フィジー級の軽巡で基準排水量は約8,500トン。15.2cm砲12門を装備する重武装の軽巡洋艦だ。
対するドイツ海軍は1936型の大型駆逐艦が3隻。いずれも15.2cm砲5門を装備している。搭載火砲だけを見れば軽巡クラスと同等で、防空軽巡に過ぎない「ダイアデム」等よりは一見強力な艦にも見える。が、果たして・・・。
1Turn
両軍とも速度を最大戦速に上げて交戦態勢に入る。英艦隊は照明弾を発射して敵艦隊の位置を確かめようとするは、照明弾は目標を大きくそれた。2Turn
距離7Hex(約11km)で双方は敵を視認した。並行砲戦に入る。英艦隊の先頭を走る軽巡「ダイアデム」がドイツ駆逐艦3隻の集中砲火を浴びる。その主砲は15cmと、防空軽巡「ダイアデム」が搭載する13cm砲に勝る。水柱に囲まれた「ダイアデム」だが、命中弾はなかった。3Turn
相変わらずドイツ駆逐艦の砲火は「ダイアデム」に集中する。遂に1発の15cm砲弾が「ダイアデム」に命中した。その一方で「ダイアデム」の主砲が独駆逐艦「Z38」を夾叉する。しかし両軍通じて最大の火力を持つ英大型軽巡「モーリシャス」は、未だ夾叉を得ない。ドイツ駆逐艦は牽制のため魚雷4本を発射する。
4Turn
英艦隊の砲撃が漸くドイツ駆逐艦を捉えた。「ダイアデム」の13cm砲弾が「Z38」に1発命中。「モーリシャス」の15cm砲弾も「Z34」に命中する。しかしドイツ駆逐艦の反撃もまた激しかった。15cm砲弾3発が次々と「ダイアデム」に命中する。そのうちの1発は「ダイアデム」の魚雷発射管に命中。
「すわ、誘爆か」
一瞬顔色が変わる英艦隊であったが、魚雷の緊急投棄が功を奏し、ギリギリで誘爆を回避した。
5Turn
ドイツ艦隊は勝負に出た。右一斉回頭で英艦隊に接近し、距離を5Hex(約7km)まで詰めた。英艦隊の砲撃も猛烈を極め、「Z38」に13cm砲弾1発、「Z34」に15cm砲弾2発が命中する。しかし「Z34」に命中した1弾以外は全て盲弾となり、「Z34」が小破したにとどまった。ドイツ駆逐艦の反撃は「ダイアデム」に集中する。3発の15cm砲弾が「ダイアデム」に命中し、「ダイアデム」は中破。事実上戦闘力を喪失した。
6Turn
戦場を離脱する「ダイアデム」。残った「モーリシャス」は単艦でドイツ艦隊に立ち向かう。ドイツ駆逐艦「Z34」に15cm砲弾2発が命中したが、1発が盲弾であった。ドイツ駆逐艦は「ダイアデム」と「モーリシャス」に個別射撃を行う。それぞれ命中弾があった。さらに駆逐艦「Z31」が魚雷8本を発射する。7Turn
駆逐艦「Z31」の放った15cm砲弾が「モーリシャス」の機関部に命中する。機関部に重大な損傷を起こした「モーリシャス」は、最大速度が10ktに低下してしまう。8Turn
「Z31」の放った魚雷は「モーリシャス」の左舷直角に迫ったが、ギリギリで目標を逸れた。「モーリシャス」の射撃を受けて中破した「Z34」は列外に離れていく。速度の低下した「モーリシャス」はドイツ駆逐艦の良い的だ。3発の15cm砲弾が命中して「モーリシャス」の傷を広げていく。9-10Turn
その後「モーリシャス」はドイツ駆逐艦の追撃を受け、危うく魚雷が命中しそうになったが、辛くも回避した。最終的に「モーリシャス」は中破どまり。しかし軽巡2隻を中破させられた英海軍に対してドイツ側の損害は駆逐艦中破1隻のみ。勝敗は自ずと明らかであった。結果
独軍の損害
中破:駆逐艦1隻英軍の損害
中破:軽巡2隻ドイツ軍の圧勝
感想
ドイツ駆逐艦の強さと英防空軽巡の弱さが表出した感じとなった。ドイツ駆逐艦は15cm砲装備で、ベローナ級防空軽巡である「ダイアデム」は13cm砲装備。砲数の違い(5門と8門)はあるが、艦のサイズ違いによる命中率の差によって相殺されてしまっている。本来ならば火器管制装置の違い等で大型駆逐艦がここまで有利にはならないと思うのだが、残念ながら「ソロモン夜襲戦」では駆逐艦と巡洋艦の火器管制装置の違いはルール化されていない。そういった意味では大型駆逐艦はやや過大評価されているともいえる。いずれにしてもこのシナリオについては、今のままではややバランスが悪い。少し調整の必要がありそうだ。