もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

タグ:ソロモン夜襲戦

HMS_Mauritius


欧州海域戦 「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)のシナリオ作成もいよいよ大詰めになってきた。
今回取り上げるのは、1945年1月下旬にノルウェーベルゲン沖でのドイツ海軍と英海軍との遭遇戦である。ノルウェー北部からバルト海へ向けて南下を行うドイツの大型駆逐艦3隻が、英国海軍の巡洋艦2隻と中部ノルウェー近海で遭遇したのだ。駆逐艦以上の水上戦闘艦同士の水上戦闘としてはWW2で最後となった戦いでもある。

主役を演じた英独の艦艇を紹介しよう。

まず英海軍の軽巡2隻。1隻は防空軽巡「ダイアデム」。ベローナ級の防空軽巡で基準排水量約6,000トン。大きさはとにかく、主兵装は13.3cm両用砲8門と巡洋艦というよりも大型駆逐艦クラスの火力でしかない。
もう1隻は軽巡「モーリシャス」。フィジー級の軽巡で基準排水量は約8,500トン。15.2cm砲12門を装備する重武装の軽巡洋艦だ。
対するドイツ海軍は1936型の大型駆逐艦が3隻。いずれも15.2cm砲5門を装備している。搭載火砲だけを見れば軽巡クラスと同等で、防空軽巡に過ぎない「ダイアデム」等よりは一見強力な艦にも見える。が、果たして・・・。

Turn00


1Turn

SearchLight両軍とも速度を最大戦速に上げて交戦態勢に入る。英艦隊は照明弾を発射して敵艦隊の位置を確かめようとするは、照明弾は目標を大きくそれた。




Turn01


2Turn

CW_CL69a距離7Hex(約11km)で双方は敵を視認した。並行砲戦に入る。英艦隊の先頭を走る軽巡「ダイアデム」がドイツ駆逐艦3隻の集中砲火を浴びる。その主砲は15cmと、防空軽巡「ダイアデム」が搭載する13cm砲に勝る。水柱に囲まれた「ダイアデム」だが、命中弾はなかった。

Turn02


3Turn

GE_DD1a 相変わらずドイツ駆逐艦の砲火は「ダイアデム」に集中する。遂に1発の15cm砲弾が「ダイアデム」に命中した。その一方で「ダイアデム」の主砲が独駆逐艦「Z38」を夾叉する。しかし両軍通じて最大の火力を持つ英大型軽巡「モーリシャス」は、未だ夾叉を得ない。
ドイツ駆逐艦は牽制のため魚雷4本を発射する。


4Turn

CW_CL69b英艦隊の砲撃が漸くドイツ駆逐艦を捉えた。「ダイアデム」の13cm砲弾が「Z38」に1発命中。「モーリシャス」の15cm砲弾も「Z34」に命中する。
しかしドイツ駆逐艦の反撃もまた激しかった。15cm砲弾3発が次々と「ダイアデム」に命中する。そのうちの1発は「ダイアデム」の魚雷発射管に命中。
「すわ、誘爆か」
一瞬顔色が変わる英艦隊であったが、魚雷の緊急投棄が功を奏し、ギリギリで誘爆を回避した。

5Turn

GE_DD2bドイツ艦隊は勝負に出た。右一斉回頭で英艦隊に接近し、距離を5Hex(約7km)まで詰めた。英艦隊の砲撃も猛烈を極め、「Z38」に13cm砲弾1発、「Z34」に15cm砲弾2発が命中する。しかし「Z34」に命中した1弾以外は全て盲弾となり、「Z34」が小破したにとどまった。
ドイツ駆逐艦の反撃は「ダイアデム」に集中する。3発の15cm砲弾が「ダイアデム」に命中し、「ダイアデム」は中破。事実上戦闘力を喪失した。

Turn05


6Turn

CW_CL75a戦場を離脱する「ダイアデム」。残った「モーリシャス」は単艦でドイツ艦隊に立ち向かう。ドイツ駆逐艦「Z34」に15cm砲弾2発が命中したが、1発が盲弾であった。ドイツ駆逐艦は「ダイアデム」と「モーリシャス」に個別射撃を行う。それぞれ命中弾があった。さらに駆逐艦「Z31」が魚雷8本を発射する。

7Turn

駆逐艦「Z31」の放った15cm砲弾が「モーリシャス」の機関部に命中する。機関部に重大な損傷を起こした「モーリシャス」は、最大速度が10ktに低下してしまう。

Turn07


8Turn

TorpG7aAa「Z31」の放った魚雷は「モーリシャス」の左舷直角に迫ったが、ギリギリで目標を逸れた。「モーリシャス」の射撃を受けて中破した「Z34」は列外に離れていく。速度の低下した「モーリシャス」はドイツ駆逐艦の良い的だ。3発の15cm砲弾が命中して「モーリシャス」の傷を広げていく。

9-10Turn

その後「モーリシャス」はドイツ駆逐艦の追撃を受け、危うく魚雷が命中しそうになったが、辛くも回避した。最終的に「モーリシャス」は中破どまり。しかし軽巡2隻を中破させられた英海軍に対してドイツ側の損害は駆逐艦中破1隻のみ。勝敗は自ずと明らかであった。

Turn10


結果

独軍の損害

中破:駆逐艦1隻


英軍の損害

中破:軽巡2隻

ドイツ軍の圧勝

感想

ドイツ駆逐艦の強さと英防空軽巡の弱さが表出した感じとなった。ドイツ駆逐艦は15cm砲装備で、ベローナ級防空軽巡である「ダイアデム」は13cm砲装備。砲数の違い(5門と8門)はあるが、艦のサイズ違いによる命中率の差によって相殺されてしまっている。本来ならば火器管制装置の違い等で大型駆逐艦がここまで有利にはならないと思うのだが、残念ながら「ソロモン夜襲戦」では駆逐艦と巡洋艦の火器管制装置の違いはルール化されていない。そういった意味では大型駆逐艦はやや過大評価されているともいえる。
いずれにしてもこのシナリオについては、今のままではややバランスが悪い。少し調整の必要がありそうだ。

KMS_Z38


第2回戦

指揮値と初期配置を少しだけ修正した。結果はドイツ軍が駆逐艦1隻大破。英軍は軽巡「ダイアデム」小破。損害比は史実に近い値になった。勝利条件的にも「引き分け」である。丁度いい感じである。初期配置を少しだけずらしてみよう。

HMS_Diadem


という訳で

「欧州海域戦」用のシナリオ計16本の準備が終わった(ふー)。16本の内訳は、英独戦8本(仮想戦1本含む)、英伊戦6本、英仏戦1本、独ソ戦1本(仮想戦)である。数の上では英独戦が主流となった。ただ地中海方面では、マタパン岬沖海戦、シルテ沖海戦等がシナリオ化未である。英仏戦や米独戦等でも面白そうなネタが未シナリオで残っている。このあたりは雑誌「水上戦」等でフォローしていきたい。

欧州海域戦 ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942 Atlantic Sentinels
大西洋、地中海の戦い イギリス海軍の護衛空母 Struggle For the Middle Sea The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

SRS_Lorov


欧州海域戦 「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)でソ連海軍の戦いを再現してみたい。

とはいえ、WW2においてソ連海軍の艦艇が水上戦闘で活躍した事例は殆どないのが実情だ。そんな中、最初に考えたのは、1941年6月におけるコンスタンツァ砲撃戦(コンスタンツァ沖でソ連海軍とルーマニア海軍の駆逐艦同士が交戦した)をシナリオ化することだった。しかしコンスタンツァの戦いで勝敗を決したのは機雷源である。機雷源というのは水上戦ゲームで扱うには些か厄介な代物。それに駆逐艦同士というのもちょっと地味な感じもする。そこで史実戦は諦めて仮想戦を考えてみた。

そこで目をつけたのがバルバロッサ作戦初期のバルト海作戦である。中でもタリン撤退戦。1941年8月下旬にドイツ軍に包囲されたタリンからクロンシュタット方面へ撤退するバルチック艦隊は、ドイツ陸軍及び空軍等の攻撃を受けて多大な損害を被ったそうな。
もしタリンから撤退するバルチック艦隊がドイツ海軍水上部隊の攻撃を受けていたら・・・。
そこでソ連バルチック艦隊とドイツバルト海艦隊とがタリン沖で遭遇した状況を想定してシナリオ化してみた。

まずドイツ軍の戦力だが、当時バルト海艦隊には、最新鋭の戦艦「ティルピッツ」を初め、装甲艦「シェアー」、軽巡「ニュルンベルク」以下4隻、駆逐艦7隻、掃海艇その他という兵力があった。
対するソ連バルチック艦隊は、ガングート級戦艦2隻、重巡2隻、軽巡1、駆逐艦21隻、その他という兵力である。隻数ではソ連側が上回っているが、大型艦の戦闘力では最新鋭の「ティルピッツ」を有するドイツ側に分があった。

今回シナリオ化するに当たっては、両軍とも巡洋艦以下の艦艇同士の撃ち合いを想定した。ドイツの「ティルピッツ」は最新鋭艦故に就役直後で戦闘力を発揮できたかどうか疑問だし、ソ連側のガングード級戦艦は低速なので撤退作戦では足手まといだろう。その点を考慮して巡洋艦同士の撃ち合いとしたのである。

ドイツ側の戦力は軽巡4隻を基幹とした。対するソ連軍はキーロフ級重巡2隻である。随伴駆逐艦はドイツ側が15cm砲装備の大型駆逐艦3隻。対するソ連軍は駆逐艦8隻とした。隻数ではソ連軍有利だが、艦の性能を加味して両者ほぼ互角の戦力と考えた。そして指揮能力でドイツ軍を有利にすることで、全体戦力ではドイツ軍をやや有利とした。そしてドイツ側に敵輸送船団撃沈の重荷を背負わせることにし、全体としてのバランス確保を図った。

ゲーム開始時点では、船団を護衛中のバルチック艦隊に対し、ドイツ軍艦隊が斜め後方から接近しつつある状況とする。果たしてバルト海海戦の結末や、如何に・・・。

Turn0


1Turn

SO_CA1a距離17Hex(約26km)の大遠距離からバルチック艦隊の主力である「キーロフ」「マキシム・ゴーリキ」が主砲を発射した。「キーロフ」の放った18cm砲弾がドイツ軽巡「ライプチヒ」に見事命中。それが「ライプチヒ」の弾薬庫を貫いて爆発。「ライプチヒ」は沈没こそ免れたが、中破して戦闘力を失う。

Turn1


2Turn

GE_CL4aまるで「先頭打者ホームラン」のような損害で唖然とするドイツ艦隊であったが、距離15Hex(約22km)でバルチック艦隊と並行砲戦に入る。ドイツ側の軽巡3隻とバルチック艦隊の重巡2隻が激しく撃ちあう。ドイツ側で最も古い軽巡「エムデン」がソ連駆逐艦「グネフヌイ」を捉えた。15cm砲弾1発は「グネフヌイ」の艦橋に命中。方位盤を撃ち抜かれる。

Turn2


3Turn

GE_DD1aドイツ側は後続の駆逐艦も砲戦に加わる。所謂「超駆逐艦」と呼ばれる15cm砲装備の大型駆逐艦だ。駆逐艦というよりも小型巡洋艦とも言うべき艦である。しかし火力で圧倒せんとするドイツ側の砲撃は有効打とはならず。一方のバルチック艦隊はまたもや「キーロフ」が命中弾を得ていた。18cm砲弾1発がドイツの軽巡「ニュルンベルク」に命中する。

Turn3


4Turn

SO_CA3aドイツ艦隊はサルヴォーチェージングで回避を行う。しかしバルチック艦隊はこれを逃がさない。「キーロフ」は「ニュルンベルク」にさらに2発の命中弾を与えて小破に追い込んだ。また、これまで命中弾のなかった「マキシム・ゴーリキ」も独軽巡「ケルン」に2発の命中弾を与えた。小さな誘爆を起こした「ケルン」はやはり小破に追い込まれる。

Turn4


5Turn

ドイツ艦隊は麾下の軽巡1隻が中破、2隻小破と苦しい状況に追い込まれた。このTurn、ドイツ駆逐艦がバルチック艦隊の饗導駆逐艦「レニングラード」に命中弾1を与えてこれを小破せしめた。

6Turn

バルチック艦隊はドイツ艦隊の距離を詰めて一気に勝負に出る。両者の距離は10~11Hex(15~17km)まで近づいたが、共に有効弾はなし。

7Turn

GE_CL4aドイツ艦隊はなおも接近戦に持ち込む。距離10Hex(15km)で射撃戦。軽巡「ケルン」の15cm主砲弾2発が重巡「マキシム・ゴーリキ」に命中した。1発が「ゴーリキ」の方位盤に命中して砲戦能力が殺がれる。
しかしドイツ軍の抵抗もそれまでだった。もう1隻の重巡「キーロフ」がまたもや腕の冴えを見せて軽巡「ニュルンベルク」に2発の主砲弾を命中させた。「ニュルンベルク」の累積損害は6に達して中破相当。この時点でドイツ側は作戦失敗を認めて戦場離脱していった。

Turn7


結果

ドイツ軍の損害

中破:軽巡「ニュルンベルク」「ライプチヒ」
小破:軽巡「ケルン」


ソ連軍の損害

小破:駆逐艦3隻
軽微な損傷:重巡2隻


KMS_Nurunberg


感想

予想外に一方的な展開になってしまった。「プレイボールホームラン」がアンラッキーだった面があるが、ドイツ側の戦術にやや工夫がなかったかもしれない。もう少し調整して、ドイツ側が不利なようであれば、初期兵力を少し変更しようと思う。

第2回テスト

ドイツ艦隊がバルチック艦隊の後方をすり抜けてソ連船団を襲撃。これを全滅させて勝利した。
ドイツ軍の損害:軽巡「ライプチヒ」中破
ソ連軍の損害:
沈没:輸送船6隻
中破:駆逐艦4隻
小破:駆逐艦2隻

第3回テスト

初期配置をドイツ側が有利なように少し変更した。今回もドイツ艦隊がバルチック艦隊の後方をすり抜けてソ連船団を襲撃したが、ソ連軍も何とか対応する。独ソ両艦隊共に損害を被るが、輸送船団に大損害を与えたドイツ艦隊の勝利に終わった。
ドイツ軍の損害:
中破:軽巡「ニュルンベルク」、駆逐艦1隻

ソ連軍の損害:
沈没:輸送船5隻
中破:重巡「キーロフ」「マキシム・ゴーリキ」


全般にややドイツ軍が有利かな?。ただし艦の性能ではソ連側が勝っているので結構面白いシナリオになったと思う。遠距離砲戦でドイツ軽巡が致命傷を食らう可能性も無視できないので、双方とも楽しめるシナリオになったのではないだろうか・・・。

欧州海域戦 ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942 Atlantic Sentinels
大西洋、地中海の戦い イギリス海軍の護衛空母 Struggle For the Middle Sea The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

欧州海域戦_表紙


欧州海域戦 「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)のシナリオ作成である。

前回のフランス に続いて「今度はロシア」と思ってシナリオを作ってみたが、史実シナリオではロクなものがない。バルバロッサ作戦の初頭にルーマニア海軍とロシア海軍の駆逐艦同士が撃ち合った戦いがあったのでそれをシナリオ化しよう(仮想設定でロシア巡洋艦「キーロフ」も登場させよう)なんて夢を描いたが、史実のオチが「触雷でロシア駆逐艦大破」という内容だったので断念。実現できれば沿岸砲台等も登場する面白い内容に化ける可能性があったのだが・・・。

という訳で「穴埋め」という訳ではないが、「練習用として戦艦同士の撃ち合いだけのシナリオを」(シナリオ1としての利用を想定)ということで取り上げたのが「ベルリン作戦」だ。

「ベルリン作戦」は1941年初頭にドイツ戦艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の仲良しコンビが実施した通商破壊戦のこと。約2ヶ月間で22隻(約11万6千トン)を撃沈乃至捕獲したとされている。この作戦途上、ドイツ艦隊は2度に渡って戦艦を含む輸送船団を遭遇した。1回目は英戦艦「ラミリーズ」に護衛されたHX106船団。2度目が戦艦「マラーヤ」に護衛されたSL67船団である。いずれの場合もドイツ艦隊はリスク回避の観点から船団襲撃を諦めたが、もしドイツ側がより積極的だったらどのような結果に終わっただろうか。

今回のシナリオは、そのうちの第2回目の遭遇、すなわち戦艦「マラーヤ」に護衛されていたSL67船団をドイツ艦隊が襲撃した場合を想定した仮想シナリオである。

Turn00


1Turn

ドイツ艦隊は左は120度旋回。T字戦法に出る。「シャルンホルスト」が距離27kmで「マラーヤ」に向けて主砲射撃開始。しかし距離が遠いので当然外れ。

Turn01


2Turn

「マラーヤ」はなおも突進する。彼我の距離は24kmまで接近した。ドイツ側2戦艦は共同で「マラーヤ」を狙う。しかし全弾外れ。「マラーヤ」も主砲射撃開始。「シャルンホルスト」を狙うが、主砲は外れる。

3Turn

ドイツ側は接近戦を嫌って左へ120度回頭。英戦艦を斜め後方に見る。「シャルンホルスト」のみが射撃を継続。しかし外れ。
「マラーヤ」は距離の関係上後続する「グナイゼナウ」に目標を変更する。距離21kmで初めて全力射撃。しかし砲弾は無情にも逸れた。

Turn03

4Turn

GE_BB1a「シャルンホルスト」の主砲弾が「マラーヤ」を捉えた。目標を見事に夾叉した9発の28cm砲弾のうち、2発が「マラーヤ」に命中したのである。しかし「マラーヤ」の装甲部に命中した2発の28cm砲弾は、いずれも「マラーヤ」の装甲に跳ね返された。
「マラーヤ」の砲火は依然目標を捉えきれない。

5Turn

「シャルンホルスト」の主砲弾がさらに3発が「マラーヤ」に命中した。しかし距離24kmから放たれた28cm砲弾は、その悉くが「マラーヤ」の装甲板に跳ね返された。「マラーヤ」は全く無傷である。

6Turn

CW_BB10aドイツ側戦艦部隊が船団から十分に遠ざかったことをみた「マラーヤ」は、右120度回頭でドイツ艦隊への追撃を中止する。このまま追撃を続けても優速なドイツ艦隊を捕捉できないと判断したためだ。
「シャルンホルスト」からの射撃は目標を逸れたが、今後は「グナイゼナウ」の主砲弾が命中した。しかし相変わらず「マラーヤ」の装甲に阻まれて実害はない。

Turn06


7Turn

このままでは埒が開かないと見たドイツ艦隊は再び左120度回頭して英船団に向かう。接近戦で「マラーヤ」を仕留める戦術だ。

Turn07


8Turn

再び接近コースに入ったドイツ艦隊。彼我の距離は21kmまで接近した。「マラーヤ」は距離が近づいた「シャルンホルスト」に目標を変更して射撃開始。しかしその砲撃は外れ。
一方のドイツ艦隊は「グナイゼナウ」の主砲が目標を捉えた。3発の28cm砲弾が「マラーヤ」の非装甲部に命中。小規模な誘爆を引き起こし、死傷者が出る。初めて「マラーヤ」に実質的な損害が出た。

9Turn

GE_BB2a「マラーヤ」は「グナイゼナウ」の砲撃を躱すため左60度旋回する。しかし「グナイゼナウ」は「マラーヤ」を逃さない。連続して3発の28cm砲弾が「マラーヤ」の上構に命中した。そのうちの1発は「マラーヤ」の方位盤に命中し、「マラーヤ」に砲側射撃を余儀なくさせた。また別の1発は「マラーヤ」の艦橋付近に命中。幹部に多数の死傷者を出した「マラーヤ」は一時的に戦闘力を失う。

Turn09


10Turn

「良き羊飼いは羊のために命を捨てる」

手負いの「マラーヤ」はキリストの言葉を身を以て示すしかなかった。しかし「狼たち」は容赦なく近づいてくる。距離13Hex(約20km)から「シャルンホルスト」は主砲弾を放ったが、目標を逸れた。

Turn10


11Turn

ドイツ艦隊はなおも迫ってくる。距離12Hex(18km)。「マラーヤ」は砲側照準で反撃を実施。「シャルンホルスト」に対して主砲の一斉射を放った。1発の38cm砲弾が「シャルンホルスト」に命中。上構に命中したその徹甲弾は、「シャルンホルスト」の通信室を破壊した。一時的に混乱を起こすドイツ艦隊。「シャルンホルスト」はお返しとばかり3発の28cm砲弾を「マラーヤ」に命中させたが、その悉くが「マラーヤ」の装甲板によって跳ね返された。ここまで「マラーヤ」に命中した28cm砲弾は計15発。それでも「マラーヤ」は十分に戦闘が可能であった。

12Turn

MS01a燃料に不安を感じ始めたドイツ艦隊は、目標を「マラーヤ」から輸送船に変更した。輸送船から9Hex(13km)まで接近した2隻のドイツ戦艦は、主砲と副砲で輸送船を撃ちまくる。4隻の輸送船に命中弾を与えたが、いずれも沈没には至らない。
一方の「マラーヤ」は方位盤の修理が完了し、距離12Hex(18km)から「シャルンホルスト」を狙った。38cm徹甲弾2発が「シャルンホルスト」に命中した。しかもそのうちの1発は水中弾となって「シャルンホルスト」の舵機の一部を破壊し、「シャルンホルスト」は運動の自由を奪われた。

Turn12


13Turn

ドイツ戦艦2隻は輸送船に対して砲火を浴びせ続ける。3隻の輸送船が被弾し、うち2隻が中破状態まで損傷を広げたが、沈没する船はまだ出ない。

14Turn

輸送船1隻が「グナイゼナウ」の集中砲火を浴びて沈没した。最初の沈没船である。しかしドイツ側にもタイムリミットが迫っている。果たして・・・・。

15Turn

最終Turnである。ドイツ戦艦は輸送船団の壊滅を狙ったが、結局このTurnは1隻も撃沈できなかった。一方「マラーヤ」は2発の38cm砲弾を「シャルンホルスト」に命中させ、そのうちの1発は「シャルンホルスト」の主装甲を貫いたが、「シャルンホルスト」の損傷状態は小破に留まった。

Turn15


結果

英軍の損害

沈没:輸送船1隻
大破:輸送船1隻
中破:輸送船2隻
小破:戦艦「マラーヤ」

独軍の損害

小破:戦艦「シャルンホルスト」


勝利条件から英軍の勝利。

感想

今回は英艦隊の勝利となったが、バランス的にはドイツ側が有利と思われる。英艦隊が勝利できた要因はドイツ側が逡巡して一貫性の欠いた戦術を採ったためで、決然と接近戦に持ち込めば、砲力の優越がモノを言って「マラーヤ」を撃破できただろう。事実、この後に実施した第2回目のテストでは、ドイツ戦艦2隻が「マラーヤ」を袋叩きにし、中途で同艦を大破させて勝利を得ている。
ドイツ軍にとってネックなのは主砲の威力の低さである。現時点の評価では、ドイツ製28cm SK C/34の評価は、射程距離が長い(46cm砲と同等)ことを除けば、他の28cm砲と差異はない。当然ながら英戦艦が装備する38.1 cm Mark 1に比べると、貫通力と威力の両面で見劣りする。今回のシナリオでも「マラーヤ」は計15発の28cm砲弾を食らったが、損傷レベルは「小破」に留まっている。中距離砲戦に固執したドイツ側の失敗もあるが、28cm SK C/34の評価についてやや貫通力が弱いと思われる。一度大口径砲の貫通力を並べて再評価したいと思う。

このシナリオの目的は砲戦システムだけの練習用シナリオを提供するということであった。純粋に戦艦対戦艦の対決ということで仮想戦としてベルリン作戦を選んだ。そういった意味で練習用としては上手く機能していると考える。もし上級者と初級者が本シナリオで対戦する場合は、初級者がドイツ側を担当し、上級者が英側を担当するのが良いだろう。

KMS_Schamhost



欧州海域戦 ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942 Atlantic Sentinels
大西洋、地中海の戦い ドイツ戦艦史-世界の艦船2021年6月号増刊 Struggle For the Middle Sea The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

欧州海域戦_表紙


欧州海域戦 「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。
今回挑戦するのは「パンテレリア沖海戦」。「ハープーン作戦」と呼ばれるマルタ島輸送作戦の途中で起こった海戦だ。シナリオの詳細については、 こちらの記事 を参照されたい。

前号までの展開は、--> こちら


11Turn

IT_CL7a勇敢にも接近を続ける英駆逐艦とそれを迎え撃つ伊艦隊。その距離は6Hex(約9km)まで近づいてきた。この距離だと両軍の砲火もその正確性を増してくる。英駆逐艦の砲撃を受けた伊駆逐艦「アスカリ」が被弾小破。だが戦闘続行は可能だ。
それに対して伊艦隊は、軽巡「ライモンド・モンテクッコリ」が英駆逐艦「マーン」に2発の6インチ砲弾を命中させた。「マーン」は中破し、事実上戦闘力を失う。

Turn11


12Turn

TorpMk9Pa英艦隊はこのまま座して死を待つよりも決死の突撃を敢行する。とはいえ残った艦隊駆逐艦は僅かに2隻(他に船団護衛中のハント級駆逐艦5隻と防空軽巡「カイロ」が残っていたが・・・)。その2隻に対してイタリア艦隊の集中砲火が降り注ぐ。至近距離から放たれる巡洋艦の砲撃はすさまじいものがあったが、奇跡的にも命中弾なし。英駆逐艦2隻は必中の思いを込めて12本の魚雷を解き放った。

Turn12


このTurn、またもや枢軸軍の空襲があった。狙われたのは輸送船「オラリー」。船尾方向から接近して来たJu88は、対空輪形陣の弱点を突く形となった。250kg爆弾1発が至近弾となったが、幸い「オラリー」の損害は軽微であった。

13Turn

IT_CL10a英駆逐艦が渾身の想いを込めて放った魚雷は、しかし無情にも目標を逸れた。反転して離脱を図る英駆逐艦に対し、イタリア艦隊の砲火が降り注ぐ。トライバル級の駆逐艦「ベドウィン」は、伊軽巡「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」の放った6インチ砲弾2発を受けて中破。また最後まで無傷であった駆逐艦「イシュリール」もイタリア駆逐艦の集中砲火を浴びて中破した。

Turn13


14Turn

DamegeH英駆逐艦は煙幕を展張しつつケツをまくって逃げを図る。煙幕が功を奏したのか、イタリア軽巡による射撃は至近距離であったにも関わらず両方外れ。しかし伊駆逐艦の射撃は的確であった。1発が英駆逐艦「イシュリール」に命中。同艦は大破して最大速度が10ktまで低下してしまう。

Turn14


ナヴィガトーリ級駆逐艦を侮るなかれ。一見鈍足で使えない同級駆逐艦だが、その砲戦能力は英海軍のL/M級艦隊駆逐艦に匹敵するのだった。英駆逐艦はこの思わぬ大敵によって多大な出血を見ることになる。

RMS_DD_NavigatoriClass_DaRecco


15Turn

逃げる英艦隊。追う伊艦隊。このTurnはヘタリア海軍の本領発揮。煙幕に邪魔されて1発の命中も得られず。

このTurn、枢軸軍の空襲があったが、対空砲火に阻まれて外れ。

16Turn

英駆逐艦「マーン」に6インチ砲弾が命中。「マーン」は大破する。

17Turn

伊軽巡部隊はまたもや煙幕に阻まれて命中弾なし。一方、伊駆逐艦隊は英駆逐艦「イシュリール」に集中砲火を浴びせて撃沈。ようやく最初の獲物をしとめた。

18Turn

最終Turnである。イタリア艦隊は、英駆逐艦「パートリッジ」に命中弾を与えてこれを大破に追い込み、さらに射程距離内に入ってきた護衛駆逐艦「バードワーン」に命中弾を与えて小破せしめたが、そこまでだった。 頼みの空爆もまたもや外れ。この時点でタイムアップとなった。

Turn18


両軍の損害

英艦隊

沈没:駆逐艦「イシュリール」
大破:駆逐艦「パートリッジ」「マーン」
中破;駆逐艦「ベドウィン」「マッチレス」、油槽船「ケンタッキー」
小破:駆逐艦「バードワーン」

伊艦隊

小破:駆逐艦「プレムダ」「アスカリ」

VPではイタリアは50VPを獲得、英側は0VPであったが、イタリアがボーダーラインである50VPをギリギリでクリアしたため、イタリア海軍がギリギリ勝利した。プレイ中はイタリア側の圧勝と思えたが、意外とギリギリだった。イタリア側としては優勢を決めた13Turn以降の戦いがやや雑であった感がある。

感想

シナリオ自体はいい感じに仕上がっているように思う。ある程度勝敗が見えてきても、ボーダーラインが厳しいので劣勢側にもチャンスがある。空襲の結果にややバラつきが大きいように思ったので、その点だけ少し手を加えよう。それから輸送船のVPを少し高めにし、輸送船を攻撃する「美味しさ」を増やそう。それ以外は今のままで良いんじゃないかな・・・。

RMS_Eugenio_Di_Savoia


欧州海域戦 ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942 Atlantic Sentinels
大西洋、地中海の戦い イギリス海軍の護衛空母 Struggle For the Middle Sea The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

欧州海域戦_表紙


欧州海域戦 「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。
今回挑戦するのは「パンテレリア沖海戦」。「ハープーン作戦」と呼ばれるマルタ島輸送作戦の途中で起こった海戦だ。シナリオの詳細については、 こちらの記事 を参照されたい。

前回はイギリス駆逐艦の活躍の前に全く良い所がなかったイタリア海軍であった。しかし史実では大いに善戦し、ハープーン作戦を失敗に導いた立役者の1人にもなっている。
前回の反省点は、イタリア艦隊が英駆逐艦に不用意に接近し、速射砲によって大損害を被ったこと。そこで今回は伊巡洋艦の砲口径に優位を生かすべく、アウトレンジ戦法で挑むこととした。

Turn00



1Turn

IT_CL7a
「敵艦隊発見」

距離約30kmで敵を認めた両艦隊はそれぞれ対応行動を起こす。
伊艦隊は単縦陣のまま右へ変針。敵との距離を詰める。
対する英艦隊は水上戦闘能力に優れた第11駆逐隊(艦隊型駆逐艦5隻)を増速させて船団前程に進出。伊艦隊を阻止する構えを見せる。
伊巡洋艦2隻(「ライモンド・モンテクッコリ」「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」)は、距離15Hex(約22km)から英駆逐艦に対して初弾発砲。しかし些か遠すぎた。6インチ砲弾は大きく目標を逸れた。

Turn01


2Turn

英駆逐艦の接近を見たイタリア艦隊は左へ60度変針。接近経路を避けてT字戦法に出る。この運動で伊艦隊の単縦陣は崩れて2列陣形となった。
対する英艦隊も猪突猛進は避けて距離10Hex(約15km)で右へ60度変針。伊艦隊と並行態勢に入る。船団を守るのが目的なので、距離を取って戦うのが得策と判断したためだ。
2隻の伊軽巡が再び発砲。しかし変針直後の射撃であったこともあり、射弾は目標を逸れた。

Turn02


3Turn

IT_DD14a英輸送船は右へ変針。敵艦隊と距離を取りつつある。一方英第11駆逐隊と伊艦隊は距離10~12Hexを隔てて並行砲戦。しかし距離が遠いためお互いに命中弾なし。
このTurn、枢軸軍による空襲がある。狙われたのはMS05「ケンタッキー」。船尾方向から突入してくるので、恐らくドイツ空軍のJu88爆撃機であろう。進入方向を守る英護衛駆逐艦「バードワーン」等が激しい対空砲火を撃ちあげる。激しい対空砲火に恐れをなしたのか、Ju88は目標の遥か手前で爆弾を投下。爆弾は目標を大きくそれていった。

Turn03


4Turn

IT_CL10aイタリア巡洋艦「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」が初めて夾叉弾を得た。狙われたのは英駆逐艦「イシュリール」。艦が小さかったので命中はなかったが、このままだと命中を受けるのは必定である。

5Turn

夾叉を受けた英駆逐艦は右60度変針して敵艦隊からの離隔を図る。それを見たイタリア巡洋艦も変針してこれを追う。

Turn05


6Turn

MS05b 英駆逐艦が速度を30ktまで上げた。これに対してイタリア側には速度の遅いナヴィガトーリ級駆逐艦が混じっているため、無暗に速度を上げる訳には行かない。
伊巡洋艦「サヴォイア」が再び夾叉弾を得た。しかし今回も命中はなし。
このTurn、再び枢軸軍の空襲があった。1機のJu88が雲間から突如急降下し、油槽船「ケンタッキー」に250kg爆弾2発を命中させたのである。火災を起こした「ケンタッキー」は消火活動に大童の状態であった。

Turn06


7Turn

CW_DD15b英駆逐艦は右へ180度一斉回頭を行い、再び伊艦隊への接近経路を取る。それを見た伊艦隊は右120度回頭。英駆逐艦の頭を押さえる位置に布陣する。
伊巡洋艦「サヴォイア」が英駆逐艦「マッチレス」に6インチ砲弾1発を命中させた。両軍を通じてこの戦い初の命中弾である。「マッチレス」は小破し、砲塔の一部が破壊された。

Turn07


8Turn

英艦隊は再び左120度一斉回頭を行い、伊巡洋艦への接近を避ける。
旋回中の英艦隊に対して伊巡洋艦2隻が砲撃を行うが、距離が遠いためか、命中弾は得られず。

Turn08


9Turn

CW_CL10a 伊巡洋艦「サヴォイア」の主砲が再び英駆逐艦「マッチレス」を捉えた。6インチ砲弾1発が命中。船体に命中弾を浴びた「マッチレス」は最大速度が20ktにまで低下してしまう。
伊第10駆逐隊もその射程距離に英駆逐艦を捉えた。駆逐艦「アスカリ」が最大射程距離から放った主砲弾が英駆逐艦「パートリッジ」に命中。「パートリッジ」は小破する。

Turn09


このTurn、またもや空襲があり、ドイツ空軍のJu88が輸送船「オラリー」の船首方向から急降下爆撃を行ったが、防空軽巡「カイロ」の激しい対空砲火を浴びて撃墜された。

HMS_Cairo


10Turn

CW_DD11a英艦隊はここで決断を迫られることになる。すなわちこれまで同様にダラダラとピストン運動を繰り返しながら時間を稼ぐが、それとも間合いを詰めて反撃に出るか。
前者の場合、被弾するリスクは減少するものの英側からの効果的な反撃は難しく、結局はイタリア側の砲火によってすり減らされていく。
一方後者の場合、被弾のリスクは高まるが、こちらからの反撃も有効性を増してくるので、うまく行けば敵艦を撃破できるかもしれない。仮に撃破できなくても、イタリア側が接近戦を嫌がって非敵方向へ舵を切れば、船団への脅威はそれだけ小さくなる。

英艦隊は熟慮の末、後者を選んだ。伊艦隊への接近である。中破した「マッチレス」は左120度変針で敵から離れる一方、残った駆逐艦4隻はなおもイタリア艦隊への接近を図る。
それに対して伊艦隊も猛烈な砲火で迎え撃った。軽巡2隻による射撃はいずれも「外れ」であったが、駆逐艦からの砲撃が目標を捉えた。命中弾を受けたのは英駆逐艦「パートリッジ」。この被弾により中破した「パートリッジ」は、戦闘能力を失った。
英駆逐艦の砲火が漸く一矢を報いた。駆逐艦「マーン」の放った4.7インチ砲弾が伊駆逐艦「プレムダ」に命中したのである。元ユーゴスラヴィア駆逐艦「ドゥブロヴニク」は、この攻撃により小破したが、なおも戦闘可能であった。

Turn10


Ju88


つづく

欧州海域戦 ソロモン夜襲戦 海空戦南太平洋1942 Atlantic Sentinels
大西洋、地中海の戦い イギリス海軍の護衛空母 Struggle For the Middle Sea The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

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