もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

タグ:タンクコンバットシリーズ

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某ゲーム会で「タンクコンバットシリーズ」をプレイする機会に恵まれました。そこで今回、その時の様子を紹介します。

前回までの展開 --> こちら

74式 vs T62

次にWW2以降の戦いがメインテーマである「パットン」をプレイしてみることにしました。今回選んだのは、日本陸上自衛隊が誇る74式戦車とソ連軍の主力戦車であるT-62です。性能差を加味して、日本側を3両、ソ連側を4両にしました。

ちなみにこのゲームでは、陸自74式戦車の評価が高いです。西側戦車の大半は、その高車高が災いして殆どプラスの寸法修正(つまり敵の射撃が当たりやすくなる)を持っているのですが、何故か74式は寸法修正がマイナスです。まさにソ連戦車並。そのため敵の射撃が命中し難くなっています。

また前回のプレイで試したティーガーvsT34/85では、両方の装甲値に対するゲーム上の評価が過大な感がありましが、今回の対決では両戦車ともかなり高い確率で敵を撃破できます。装甲が徹甲弾の直撃に耐えられないのです。
例えば距離500mで撃ち合って命中弾が出た場合、お互いに貫通・撃破される確率はそれぞれ60%以上になります。これはすなわち「パットン」が扱う1950年代後半から1980年代までの期間においては火砲の威力が装甲を上回っていた、という評価なのかもしれません。

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序盤ソ連軍は自衛隊の弱点を突くべく戦線右翼の2両を前進させます。その前面で待ち構えるのは74式戦車1両。T-62が74式の視界内に飛び込んだ時、両軍とも同時に射撃実施。命中率は火器管制装置の性能に優れた74式の方が高かったですが、陸自の射撃は出目に恵まれず(最悪の6ゾロを出してしまった)外れ。対するT-62は命中率の低さにも関わらず見事に命中弾を与えて74式を撃破しました。

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その後、T-62は盤端に向けて前進。陸自は戦車1両をその迎撃に向かわせます。マップの奧で交戦状態となった陸自とソ連軍。再び同時射撃。今度は両方とも狙いを外さず、各1両撃破。しかし自衛隊は戦車2両を失って残り1両。一方ソ連軍は戦車3両が残っているので、この時点で勝負あった。ダイス目に恵まれたソ連側の勝利です。

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感想

まず褒めるべき点。精密なゲームにも拘らずプレイアビリティは驚くべきほど高いです。ルールを全く知らなくても、ルールを理解している人が1人いれば、すぐにプレイに参加できます。

次に気になった点。
このゲーム、私の主観では「ウォー・シミュレーション」ではありません。デザイナー氏の史観に基づく「火砲と装甲の紙上実験装置」というのが私の評価です。戦場の姿を描いた作品(ゲーム)ではなく、実験場で戦車の性能を検証するための装置です。「歩兵が出てこないから」という話ではなく、「戦場の姿を描いていない」(あるいは極めて偏った視点から描いている)から・・なのです。

あと気になった点として、これはTHQデザインの戦術級ゲームに共通する事項かもしれませんが、「システムがゲームの中で生かされていない」という問題があります。要するに「システムありき」でデザインされており、「システムが主、ゲームが従」なのです。今回のタンクコンバットシリーズで例を挙げれば、移動にかける手間が多すぎて戦術運動を行う気にならない移動システムが挙げられます。そのためにゲームの中で戦術に反映する手段が殆どない。結局は貫通力と装甲厚の勝負になり、圧倒的な差があれば劣勢側に勝機はなく、差が小さければラッキーヒットを出した側の勝利。つまりただの「サイコロゲーム」です。

「遊べるシナリオがない」というのも気になる所です。ツクダの戦術級(彼らの言葉を借りれば「戦闘級」)ゲームは「プレイヤー側で自由にシナリオを作ってください」というスタンスのものが多いです。もちろんプレイヤーが自由にシナリオを作れることはゲーム上の利点ですが、まともに遊べるシナリオがないというのはやはりゲームとしては問題だと言えます。

結論として「戦車が好きで好きでタマラナイ」という「戦車愛」に溢れた人なら、本作を楽しめるかもしれません。そういう方であれば、シナリオの自作も左程気にならないのかもしれません。

何はともあれ一つの時代を代表するゲームの1つには違いがなく、そういった意味でプレイする機会を得たことは幸運でした。

つづく

MBT: The Game of tank-to-tank combat in 1987 Germany MBT-FRG MBT-BAOR
Centurion vs T-55: Yom Kippur War 1973 (Duel Book 21) Sagger Anti-Tank Missile vs M60 Main Battle Tank(Duel Book 84) JグランドEX世界の戦車全戦力ガイド

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旧ツクダホビーの「タンクコンバットシリーズ」といえば、「タイガーI論争」に代表されるように、プレイそのものよりもプレイの外側で有名なゲームと認識しておりました。かくいう私も、これまでゲームの名前は勿論知っていたし、かつてはゲーム自体を保有していたこともあります(安価で手に入れた「パットン」を持っていましたが、どこかへ行ってしまいました)。

という訳で「タンクコンバットシリーズ」は、私にとって30年以上もの間、「名前は知っているけどプレイしたことがない」ゲームでした。

この度、某ゲーム会で「タンクコンバットシリーズ」をプレイする機会に恵まれました。そこで今回、その時の様子を紹介します。

システム紹介

タンクコンバットシリーズは、「エンドレスフェーズシステム」という独特のシステムを採用しています。これは1Turn(ツクダ用語ではTurnのことをイニングと呼びます)を6フェイズに分割し、それぞれ移動・射撃を行うというシステムです。1Turnは実際の30秒に相当するので、1フェイスは実際の5秒間に相当します。

「だったら、最初から1Turnを5秒のスケールにすれば良いんじゃね?

突っ込みが聞こえてきそうですが、まあ「そういう考え方もありますね」と軽く流しておけばよいと思います。1Turnを6分割した方が管理上便利な点があるのも確かなので、デザイナー氏の選択は間違いではないと思います。

各フェイズの手順は驚く程シンプルで、先攻・後攻で移動を行い、次に同時解決で射撃を行う、という流れになります。防御射撃とか機会射撃とかいった面倒な概念はありません。そういった意味では「エンドレスフェイズ」システムは、システムをシンプルにするという意味では有効な手段と考えて良いと思います。
また、砲弾装填速度の問題を自然に解決できる点も評価したいです(デザイナー氏は多分これを一番やりたかったんじゃないかな)。事実上5秒Turnのゲームなので、装填速度の違いを5秒刻みで再現できるようになりました。

もちろん問題もあります。事実上1Turnが5秒スケールのゲームです。展開がとにかく「ノロい」のです。これはスケールの小さい空戦ゲームでも時々見られることですが、一連の戦術運動(例えば敵戦車を左右から挟む等)を完結させるために、とてつもない「単純作業」を強いられます。それが「楽しい」と思える人は、本シリーズを楽しむことができると思います。私には・・・、ムリかもね・・・。

射撃システムは、命中判定、命中箇所判定、装甲厚判定の3段階です。いずれも2d6で判定します。命中判定は、2d6で命中値以下の数値を出せば命中。砲の種類と距離によって基本命中値が決まり、それに相手の大きさ、移動状態、地形、自車の移動状態等の修正を適用して最終命中値を決定します。2d6に起因する確率の歪み("7"の目が出やすく、端に行くほど確率が少なくなる)は特に考慮されていません。従ってDRMが同じでも、基本命中値の違いによってその効果には雲泥の差があります。
命中箇所は、砲塔、車体(上部と下部に分かれている)等の他、履帯への命中や主砲砲身への命中といったやや珍しい場所も考慮されています。
最後の撃破判定は、命中箇所の装甲値と徹甲弾の貫通力を比較して貫通力が勝れば敵戦車を撃破です。

ティーガー vs T34/85

最初は「勝利ポイントの上限を指定してその範囲内で戦車を購入する」という方法で試してみました。その結果、ドイツ軍はティーガーI型が2両、ソ連軍はT34/85が3両という対決になりました。場所は広大なロシア平原です。

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距離1000m前後で向かい合った両者はお互いに射撃を開始。最初はお互いに命中弾がありませんが、両者とも停止射撃に切り替えると、途端に両軍とも命中弾が出始めます。射撃精度ではドイツ軍に一日の長がありますが、車体の大きさではT34/85の方がコンパクトなので、命中率に殆ど差はありません。両軍とも次々と敵戦車の正面装甲に徹甲弾を命中させます。

しかし・・・

その徹甲弾がなかなか「貫けない」。ドイツ側のティーガーならわかるのですが、T34/85に命中した88mm徹甲弾も、距離500~800mという近距離にも関わらずその装甲に全く歯が立たない。

「ちょっと装甲効果が高すぎるんじゃないの・・・」

そんな思いもチラホラ。

結局、ティーガーは2両とも履帯を破壊されて移動不能になり、さらに1両のティーガーは砲塔基部に命中弾を受けて砲塔旋回できなくなりましたが、いずれも戦闘継続可能でした。一方のT34は1両が撃破されて残りは2両です。それにしても両方とも多数の命中弾を受けながら、この撃破率の低さは一体・・・。装甲効果が高すぎるのではないかな。

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気になったので後でゲーム上での撃破確率を調べてみました。ティーガーIとT34/85が距離500mで正面から向かい合った場合を想定します。
まずT34/85から射撃を行った場合、命中弾1発あたりの撃破確率は3.2%です。つまり30発命中させてようやく1両を撃破できるかできないか。ちなみに履帯に命中する確率は8.3%なので、今回のように「撃破される前に履帯を切られる」というのはよくある話になります。
次にティーガーがT34/85を正面から撃った場合、撃破確率は8.8%です。T34/85からの射撃よりは少しマシな数値ですが、それにしてもショボい。88の威力ってこんなものかなぁ・・・?。

ただし両方とも特殊徹甲弾を使用すると、撃破確率は53.7%、31.5%に跳ね上がります。特殊徹甲弾の使用を前提とすると、ティーガーの方がT34/85よりも不利になります。

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話の序に他のゲームを調べてみると、GMTのPanzerでは、上記条件下では命中箇所に係わらず双方共正面装甲を確実に貫きます。撃破確率も54~63%の高率です(Panzerの場合、貫通しても撃破に至らないケースがある)。

Panzer


CMJのTanksでは、ティーガーによるT34/85の命中弾1発あたりの撃破確率が58%で、T34/85からティーガーを射撃した場合が17%です(条件は距離500mの正面射撃)。Tanksはシンプルなルールを採用しているので、貫通する・しないという概念はなく、貫通力と装甲値の差から判定表を使って撃破判定します。
余談の余談になりますが、このTanksのシステムを流用して、現在戦車戦ゲームが作れないものか、妄想しております。

Tanks



さらに(戦車戦ゲームではありませんが)ASLの場合、ティーガーによるT34/85に対する射撃では、命中弾1発あたりの撃破確率は69%。逆の場合は22%です。このように考えると、タンクコンバットシリーズにおける各戦車の装甲値は、他のゲームに比べるとかなり高い評価になっていると言えそうです(あるいは徹甲弾の貫通力が過小評価されている?)。

ASL



つづく

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