もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

タグ:歴史

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ATTACK ON PEARL HARBOR

Bret Kinzey A Detail & Scale Publication

タイトル通り真珠湾攻撃を扱った書籍である。本書の特徴は完全にデジタル媒体による出版のみの販売形態になっていること。そのためにカラーイラストや写真が豊富に入った計400ページ以上の大作ながら、日本円で2000円以下と廉価である。
本書の特徴は真珠湾攻撃について現在判明している範囲で最も詳細に扱った著作の1つという点だ。その描写は主に戦闘場面に集中しているが、日本側の準備行動や米側の対応、攻撃後の米側の復旧活動にも一定量のページ数を割いている。
本書の売りは141ページから始まる日本軍の攻撃場面で、雷撃、爆撃、機銃掃射の実相とそれによって生じた被害が延々200ページに渡って記載されている。とはいっても写真の類が多いので、読む所はそれほどないのだが・・・。
米側から見た真珠湾攻撃の実態を知るためには格好の著作といえよう。本書とモリソン戦史。日本側は戦史叢書と森史郎氏の作品を揃えて置けば、真珠湾攻撃について現在判明していることは一通り理解できると思う。

お奨め度★★★★

戦史叢書-海軍捷号作戦2-フィリピン沖海戦

良い世の中になったものである。戦史叢書がネットでいつでも読めるようになった。本書は捷号作戦のクライマックスとも言うべきレイテ沖海戦についての戦史書である。またレイテ戦以降のフィリピン戦、すなわち多号作戦、ミンドロ島上陸戦、ルソン島上陸戦にもページ数を割いている。
本書「むすび」にも記されている通り、捷号作戦はレイテ沖海戦での栗田艦隊の反転を以て事実上終了していた。従ってそれ以降の戦いは米軍にとっては掃討戦に近い内容のものであったといえよう。にも拘らず日本側はあくまでレイテ決戦の意思を捨てず、それどころかレイテ海戦直後は「あと一歩で勝てる」とまで認識していたというから「知らないこと」は恐ろしい。
捷号作戦における一連の流れを「当時の視点」で考えてみると、日本側の認識は常に「あと一歩で勝てる」というものであった。レイテ沖海戦についても今では大敗北であることが知られているが、当時は米軍に大打撃を与えたと思われていたし、栗田艦隊にしも「米機動部隊を撃破した栄光の艦隊」だったのだ(実際にはジープ空母にすら勝てない弱小艦隊だったのだが・・・)。思えば台湾沖では「空母19隻を撃沈破」し、レイテ海戦でも「空母7~8隻を撃沈」したとなっている。これはプロパガンダというよりは「本当にそう思っていた」と考えるしかない。無論、現場に近いレベルでは「そんなに勝っている訳ないよ」と思っていたかもしれないが。それが集団として共有されることなかった。それどころか誤った情報に引きずられて作戦指導自体が誤った方向に導かれている(レイテ決戦の強行)。捷号作戦の敗因で一番大きな部分は質量両面における劣勢だが、その敗北をより悲惨で惨めなものにしたのは、適切な情報処理の欠如にあったといえよう。

「先の戦争で旧日本軍は、希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという願望にしがみついたために国民に多大な犠牲を強いた」

映画シンゴジラの中のセリフだが、まさに至言である。

お奨め度★★★★

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機械化兵器読本

吉田豊彦 アーキテクト

元々は昭和15年(1940年)に東京日日新聞から発刊されていた著作の復刻版である。当時フランス戦でフランス軍がドイツの電撃戦に敗れた時期であり、当時日本陸軍における機械化推進の熱気が伝わってくる著作である。本書の内容は現在の視点から見ても特に変に思える個所は少なく、少なくとも本書の著者が陸軍の機械化について水準以上の知見を持っていたことを示している。精神主義的で近代的な思想に乏しいと思われがちな日本陸軍であるが、少なくとも軍の機械化について世界の潮流を正しく認識していたことは留意すべきだろう。
戦前、戦中における日本陸軍の機械化について考察する場合には必読の著作と思える。

お奨め度★★★★

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US Navy Aircraft Carrier

Progressive Management

タイトル通り米空母に関する解説書である。ラングレーからジェラルド・フォード級までの米空母がコンパクトに纏められている。興味深いのは"Flattops in Wargames"という部分。ここでは戦前における米海軍の演習(Fleet Problem)で米空母が如何に運用され、問題点が洗い出され、戦術が洗練されていったかが興味深く描かれている。これを読むと珊瑚海やミッドウェーで日本海軍が米空母に苦戦した理由もよくわかる。また米空母戦術発展の過程で「レキシントン」「サラトガ」の2艦が果たした役割の大きさもまた。

お奨め度★★★

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Weapons that wait

Gregory Kemenyui. Hartmann The Naval Institute Press

機雷戦全般を扱った著作。機雷戦の歴史から始まって第1次大戦、第2次大戦における機雷戦、機雷戦の技術的背景、対機雷戦、機雷の効果、戦略戦術、現在の機雷戦、そして未来の機雷戦について記載されている。機雷戦自体が地味なので戦史的な面がやや寂しい。また機雷の数学的効果はかなり詳しく読まないとついていけない面もある。巻末の米海軍の機雷戦、対機雷戦装備のカタログは一見の価値あり。

お奨め度★★★

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