
海軍航空隊始末記

源田實 文春文庫

批判的な内容でかつ後知恵で恐縮なのだが、本書を読むと「未だにこんなことを言っているのか」と批判的に思ってしまう点が多く気になってしまう。例えば筆者は1944年の戦いに関する記述で「レーダーを駆使した米空母の防御能力がすごぶる大になった」的なことを書いている。しかし米空母が強くなったのは、ゴジラのように勝手に成長した訳ではない。彼らは様々な試行錯誤と技術的挑戦、そして戦訓によって強くなったのだ。米空母が強くなっている間、日本空母は何をしていたのか。筆者はその点については全く触れず、まるで他人事のように「米空母の防御力はすごぶる大になった」と言いながら、その一方で「零戦は戦争中期までは文字通り無敵であった」とか「日本空母の攻撃至上主義は正しかった」等、根拠の薄弱な自己礼賛である。零戦の弱さや日本空母の攻撃至上主義の限界は、別に戦後になってわかったことではなく、戦時中既に分かっていたというのに・・・。
氏が日本海軍を代表する航空機の専門家であったことは疑いなく、それは氏の先見性を示すものといって良い。しかしそんな氏であっても「この程度」の手記しか残せない点、日本海軍の限界を見る気がする。
お奨め度★★★★



