「山崎の戦い」(以下、本作)は、2016年に国際通信社から「コマンドマガジン149号」の付録ゲームとして発売された作品である。本作のテーマは、1582年の山崎の戦い。日本人なら誰でも知っている有名な戦いだ。
今回プレイしたのはショートシナリオ。ゲーム中盤から開始される全11Turnのシナリオである。両軍が既に戦場に展開した状況で開始されるシナリオであり、兵力に劣る明智方は苦しい戦いを強いられることになるだろう。今回、私は羽柴方を担当した。
前回までのあらすじは、-->こちら
11Turn
このシナリオは、第11Turnより始まり、第21Turnに終了する。羽柴軍は当初の予定に従い、円明寺川に沿って布陣する明智勢左翼に対し、羽柴側右翼に展開する池田恒興隊、加藤光康隊が粛々と前進していく。そして円明寺川を挟んで対峙する両軍だが、未だ戦端を開くには至らない。本作の戦闘システムは所謂「マストアタック」だが、川沿いのヘクスサイドでは攻撃が免除されるのだ。その間、羽柴側の主力部隊である秀吉本隊、丹波長秀隊、神戸信孝隊が西国街道に沿って北上し、明智側右翼を狙う。
12Turn
羽柴側右翼で戦端が開かれる。羽柴側池田恒興隊と加藤光康隊が、明智側左翼を守る斎藤利三隊、津田信春隊と円明寺川を挟んで激しく戦う。池田隊は津田隊の一部を撃破し、円明寺川対岸に渡った。戦線左翼では、羽柴側の中川清秀隊が、明智側左翼に展開する松田政近らと接触。交戦を開始していた。
13Turn
最初は面倒なシステムだと思ったが、慣れてくると結構サクサク進む。移動や戦闘の機会は多いが、それを実行できるユニットが命令やチットによって限定されているので、1度に実行できることが少ないのだ。その分、色々な可能性を検討する必要性がなく、勢い目の前の敵を叩く、という短絡的な展開になりやすい。これは別に欠点ではなく、当時の戦争はそんなものだったんだろう、と考えるしかない。だからこそ両者が接敵する前の事前計画が重要だと思い知ることになる。戦線右翼では羽柴勢が苦戦を強いられている。明智勢の猛攻を受けた加藤光康隊は、痛打を受けて淀川沿いに撤退を余儀なくされる。さらに円明寺川対岸に進出した池田恒興隊も明智側斎藤利三隊等のタコ殴りを食らい、進退がままならない状態になる。
一方戦線左翼では、中川清秀隊が奮戦し明智側右翼戦線の一角と突破した。
14Turn
戦線右翼。先に円明寺川対岸に渡った池田恒興隊の一部は明智隊の攻撃により壊滅。池田隊は円明寺川の対岸にまで押し返された。一方、池田恒興隊の左隣を進む高山右近隊も明智側前線と接触。これに猛攻を加えて円明寺川を再び渡河した。戦線左翼では、中川清秀隊が明智勢の反撃を受けて苦戦を強いられるも、戦線後方からはせ参じた羽柴秀長隊、蜂屋頼隆隊が明智側と接触。攻撃を開始する。
15Turn
戦線右翼。加藤光康隊に代わって前線に姿を現した中村一氏隊が淀川沿いに前進して円明寺川を渡河。明智側左翼を圧迫する。高山右近隊も奮戦を続けており、円明寺川を守る明智側の前線は綻びを見せ始める。戦線左翼では中川清秀隊が明智側の戦線を突破し、これを分断した。これにより明智側の一部は退路を遮断されて包囲下に陥る。さらに羽柴側の主力である秀吉本隊、そして信長公の三男信孝率いる部隊も敵と接触。交戦状態になる。
16Turn
明智側の戦線は両翼から突破されつある。特に明智側右翼は危機的な状況で、戦線の体をなしていない。それを守るため明智側は総予備とも言うべき光秀本隊を明智側右翼に投入。中川清秀隊の前面に立ちふさがる。17Turn
明智側の左翼が危機的な状況に陥っている。これまで奮戦していた斎藤利三隊、津田信春隊も背後を遮断され、羽柴勢の包囲下に陥る。18-21Turn
この後の展開は駆け足で紹介したい。羽柴勢は各地で明智勢を包囲し、個々に殲滅していく。局地的には明智側が善戦し、羽柴側に打撃を与えることもあるが、全般的には兵力に勝る羽柴側が明智勢を個別に撃破していく展開である。第10Turn終了時には津田信春隊は壊滅、斎藤利三隊も斉藤利三旗本隊1ユニットを残して壊滅する。
そして最終の第11Turn。残るは光秀本隊のみとなった明智勢は、全力で勝竜寺城目掛けて撤退を開始。それを追う羽柴勢。さらに秀吉本隊が先回りして勝竜寺城前面に展開する。結局明智隊は勝竜寺城に到着することなく羽柴側の大軍に取り囲まれ、ゲーム終了となる。
結果
勝利得点は羽柴側が11点以上リード、さらに光秀が勝竜寺城外にいるので、羽柴側は史実を上回る決定的勝利を収めた。とはいえ、この兵力差、このシチュエーションでは、明智側が勝利を収めることは難しいだろう。感想
ルールが意外に多い上、ルールの説明がアッサリしているので最初は戸惑う。しかも先の戦闘ルールのように「ルールに書いていないルール」が多く、ソロプレイだけだとプレイに漕ぎ着けるのは困難だろう。筆者自身、対戦前にソロプレイで練習した時には、正直「どこが面白いんだろう?」と思った程である。実際にプレイしてみると、確かに細かいルールは多いし、ルールブックの書き方は不親切だが、ゲームのテンポ自体は意外なほどサクサク進む。今回のプレイでも全11Turnという長丁場ながらもプレイ時間は実質6時間ほど。この分ならロングシナリオでも2日ほどあれば余裕でプレイできそうな感じだ。
ゲーム自体も慣れれば結構面白い。似ていると言えば、かつてツクダホビーから出版されていた戦国合戦シリーズに似た感じのゲーム展開(テーマが同じ戦国時代の合戦なので、アタリマエなのだが・・・)。日本製ゲームのようにキャラを際立たせるようなことはしていないが、その分リアルな感じがしてよい。また戦闘陣形や攻城戦など、日本製合戦ゲームではあまり見られないルールがあるが、それが合戦の感じを上手く表現していて良い。
「てんかとういつ」シリーズは、山崎の合戦以外に、長久手の戦い、関ヶ原の戦いがある。特に関ヶ原は日本人としては是非プレイしてみたいテーマなので、機会を見つけてプレイしてみたい。