Blue Water Navy(以下、本作)は、米Compass Games社が2019年に発売したシミュレーションゲームだ。テーマは1980年代における西半球全域を舞台とした米ソ両陣営の海上戦闘で、実際には起こらなかった第3次世界大戦を扱った仮想戦ゲームである。
本作の概要については、以下の動画でも示されているので、参照されたい。
これまでにも本作については、何度か紹介してきたが、それらはいずれもVASSALによる遠隔対戦又はVASSALを使ったソロプレイであった。
そこで今回、初めて本作の対面での対戦が実現した。シナリオは1983年の戦術的奇襲である。私はソ連側を担当した。
前回の展開は --> こちら
5-6日目
米本土に大規模な増援部隊が到着。欧州に向けた大規模船団の編成を進めている。その機先を制すべく、強化されたキューバ航空隊が3個連隊で出撃した。ニューヨーク沖に集結しつつある米輸送船団に対して多数の巡航ミサイルを発射。ただし大都市の近くなので核弾頭は使えない。それでも通常弾頭つきのミサイルによって米空母「エンタープライズ」が命中弾により中破。輸送船団も約20隻が沈没する。一方で米本土を発進した戦闘機の迎撃により約50機の爆撃機のうち20機近くが撃墜されてしまう。バルト海では、東へ向かうソ連バルチック艦隊を英空軍のバッカニア攻撃機が攻撃した。艦隊上空にはソ連空軍のMiG-25戦闘機が警戒に当たっていたが、バッカニア攻撃機は戦闘機の迎撃を掻い潜って対艦ミサイルを発射した。ミサイルの1発が軽空母「キエフ」に命中。さらに数発のミサイルが「キエフ」に命中し、「キエフ」は沈没してしまう。
先に北極海から西へ向けて移動を開始したタイフーン型弾道ミサイル原潜部隊がグリーンランド北方の凍結した海を抜けてラブラドル海に姿を現した。超大型ミサイル原潜の突然の出現にNATO側は大いに驚愕したことだろう。
このTurn、NATOの輸送船団がボロボロになりながらも何とかアントワープに到着した。これによって増援部隊を得たヨーロッパ正面のNATO軍は初めてソ連軍の進撃をストップさせることに成功した。ソ連軍の先鋒部隊はハンブルクを占領した時点で一時的にその進撃が停止してしまう。
一方、北部戦線ではソ連軍はノルウェー南部のオスロに到達。ノルウェー全土の制圧を完了していた。
7-8日目
ラトビアの港湾都市リガで新たな上陸船団が編成された。デンマーク侵攻を目指す部隊である。バルチック艦隊に護衛された上陸部隊がリガを出航。バルト海を南西へ向かって進んでいく。西ドイツ軍のUボートは反撃を試みるが、今度は対潜ヘリ部隊や哨戒機部隊がバルチック艦隊の周辺海域を警戒しており、Uボートによる攻撃は困難を極めた。NATOはUボートだけではなく、米英の原潜部隊をも投入してバルチック艦隊の阻止を試みる。しかしソ連側の対潜防御は強力であり、NATO潜水艦の攻撃はなかなか奏功しない。ソ連軍は旧式巡洋艦「スヴェルドルフ」が機雷に触れて沈没するなどの被害を出したが、それでも上陸作戦を強行した。結局、バルチック艦隊による2回目のデンマーク上陸作戦は両軍共に多大な損害を出しながらもソ連側の勝利に終わった。しかしNATOの反応は早かった。北海に集結していた米空母4隻からなる機動部隊がデンマークへ大規模な攻撃隊を発進させたのである。空母4隻分の攻撃力はすさまじいものがあり、デンマークに上陸したソ連軍は1週間近くも停滞を余儀なくされてしまう。
9-10日目
大西洋でソ連原潜部隊が大戦果を上げた。凄腕のヴィクター3型原潜が米空母に護衛されたNATO輸送船団を攻撃。直径650mmの重魚雷を使って米空母部隊に対して遠距離攻撃を仕掛けたのである。小型核弾頭を搭載した重魚雷1発が見事に米大型空母「ニミッツ」に命中した。ミサイルに比べると弾頭威力が小さな核魚雷であったが、それでも通常弾頭の魚雷とは比べ物にならない威力を発揮した。そもそも直径650mmの重魚雷なら、通常弾頭であっても米空母に重大な損傷を与えることが期待できる。それが核弾頭を付けて舷側で炸裂したのだからさあ大変。「ニミッツ」は真っ二つに裂けて大西洋に沈んでいった。「ニミッツ」は第2次大戦以降で初めて撃沈された米空母であり、かつ実戦で核兵器を受けて沈没した最初の米空母となったのである。11-12日目
米本土沖に展開していた旧式のヤンキー型弾道ミサイル原潜は、米軍の対潜部隊による執拗な攻撃を受けて遂に全滅した。核戦力の均衡が失われたと恐怖するソ連共産党。その影響を受けて南部ヨーロッパでの進撃が一時停止してしまう。この状況を打破すべく、米本土近海に到達したタイフーン型超大型弾道ミサイル原潜がオンステーション。それに対して早くも米対潜部隊が攻撃を実施。危うくタイフーン型の1隻である「レッドオクトーバー」が対潜魚雷による攻撃を受けそうになったが、秘密兵器キャタピラードライブを使用して辛くも危機を脱した(セーブダイスに成功した)。ソ連軍はヨーロッパ正面の状況を打破すべく化学兵器を使用。これにより全戦線でソ連軍が再び大きく前進した。西ドイツ戦線ではブレーメン、シュタットガルトからミュンスター、フランクフルトまで進出。南欧戦線ではイタリア半島を南下してローマに近づいていた。
そしてこのTurn終了時点でソ連軍は遂にルール工業地帯とローマに到達した。この時点でソ連軍が獲得した「鎌ハンマー」マークが5個になった。鎌ハンマーの数が4個でソ連軍の勝利となるので、この時点でソ連側の勝利が決定した。
感想
プレイ時間は2日間で実時間にして約15時間であった。今回のプレイでも明らかになったが、慣れれば2日間で十分に決着の付けられるゲームである。今回についてはかなり致命的なルールミスを2つ犯してしまった。ソ連側の勝利もルールミスの影響が大きかったと言える。従って今回の勝敗はあまり意味がない。
1つ目はキューバの扱いである。キューバはソ連の消極的同盟国として扱われ、哨戒機(MP)1ユニットが基地として利用することができる(ルール21.5)。ただし攻撃機(STK)はキューバを基地として利用できない。今回、キューバを基地とするソ連軍爆撃機が大きな活躍を見せたが、正しいルールでプレイした場合にはこのようなことはなかった。まあ、今回はキューバ政府が予想以上の親ソ的であった場合を想定した演習であったと考えることにしよう。
もう1つはイベントカードの扱いである。イベントカードのイベントをアクションの一部として発動する場合、消費するOPが通常のOPに2加えるというルールがある(ルール16.6.5)。今回、このルールをすっかり失念し(両プレイヤー共)、イベントを発動してしまった。これは両プレイヤーとも誤って適用したので影響の程は不明であるが、ソ連側の方が積極的に利用していたように思う。その結果、ソ連側のカードの回りが良くなり、ソ連側に有利に作用した可能性は否定できない。
ルールミスについては言い訳をするつもりはないが、それにしてもこのゲーム、用語統一やルールの書き方が甘い。甘すぎる。同じ意味の事項を複数の言葉で説明したり、逆に定義されていない言葉が出てきたりするので混乱する。「言うは優しく、行うは難し」というのは理解できるのだが、もう少し何とかならないかと思ってしまう。
そんなこんなで今回のプレイでルールミスがいくつか明らかになったが、それを差し引いてもBlue Water Navyは面白い作品である。機会をみつけて再戦したい作品である。