もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

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BC表紙


「Brazen Chariots」(以下、本作)は、2019年に米国MMP社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームである。テーマはクルセーダー作戦。1941年11月、北アフリカ戦線における英連邦軍(連合軍)によるトブルク方面に向けた反撃作戦だ。本作は、クルセーダー作戦を、1ユニット=1個大隊、1Turn=1日、1Hex=1マイルの規模で描いている。
今回プレイしたシナリオは、シナリオ5.8「Operation Crusader(2MAP)」。クルセーダー作戦を再現するシナリオだが、東端のマップは使用しないシナリオである。

今回、私は枢軸軍を担当した。

前回までの展開は-->こちら

5Turn(11月23日)

またもや補充がゼロである。第2Turnを除いて全く補充を得ていない枢軸軍なのであった。
補充のダイスにもめげず、攻撃を続行するDAKである。先のTurn、折角英軍2個機甲旅団を包囲したものの、BCSの場合、部隊に対する包囲は非包囲側にとっては左程致命傷にはならない。補給線を潰されない限り比較的容易に包囲輪から脱出できるのだ。その傾向は機械化部隊でより顕著になっている。折角敵を包囲したのに、これじゃ全く意味がないよ。と、嘆く枢軸軍プレイヤーであったが、あとの祭りである。

それでも枢軸軍は激しい攻撃を継続する。第21装甲師団が英第4機甲旅団を攻撃。相変わらずダイス目に苦しめられるが、DRM+3(能力差2とDouble Objectの+1)の効果もあって何とか自軍に倍する損害を敵に与えていた。

また第15装甲師団は、英軍最強の第7機甲旅団を攻撃する。こちらは英軍の中では数少ないAR(アクションレーティング)が4の精鋭部隊。ドイツ軍装甲部隊のAR値が5なので、その差は1しかない。DRMも+2しか得られず、苦戦が予想された。しかしここではドイツ軍のダイス目が冴え、英第7機甲旅団を完全撃破。久しぶりに勝利の美酒に酔った。

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6Turn(11月24日)

もういい加減にしてくれよ。またもや補充ポイントがゼロ。前線からは補充を求めて矢のような催促が舞い込んでくるが、補充を与えることはできずにいる。前線の将兵諸君、スマン。

このTurn、枢軸軍にとって別の意味で重大なイベントがある。DAKの主力である装甲2個師団がマップ東端から離脱する可能性がある。英連邦軍を追って追撃戦を行うためということだが、実際に発生すると枢軸軍にとってはかなり痛い。
このイベントが発生する確率は2/3(1d6で3以上)でかなり高い。
今回はダイス目が2で、イベントは発生しなかった。取り敢えずホッとした次第である。

ゾンビのように復活してきた英第7機甲旅団。彼らはあり余る補充ポイントを使って1度撃破された部隊であっても容易に復活させることができるのだ。ドイツ軍第15装甲師団は、復活してきた英第7機甲旅団に攻撃を加えて再びこれを壊滅させた。しかしこちらも戦車2ステップを失い、そろそろ残りがやばくなってきた。

一方の連合軍は、英第4機甲旅団がDAKの第21装甲旅団に対して果敢に攻撃を仕掛けてくる。しかし第21装甲師団は巧みに反撃。英軍に3ステップの損害を与えて、これを撃退した。

Bir el Gubi方面では、新たに前線に登場してきた英第22機甲旅団が、イタリア軍アリエテ戦車師団の守る陣地を攻撃する。しかしアリエテ師団の90mm砲が再び猛威を振い、英機甲旅団を撃退した。

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7Turn(11月25日)

久しぶりに補充ポイントを得た。ダイス目は3で最低レベルに近いが、それでも戦車、歩兵各1ポイントの補充は貴重である。なんせ、これまでは全く補充が得られなかったのだから・・・、

ドイツ軍第21装甲師団は、英第4機甲旅団に対する攻撃を中断し、海岸方面へ北上を開始する。海岸沿いを進むニュージーランド師団に備えるためだ。

そのニュージーランド師団。これまで海岸線をゆっくり前進してきたが、初めてドイツ軍防衛戦に接触した。ドイツ軍アフリカ師団が守る陣地を攻撃するも、激しい戦いの末撃退される。

ドイツ軍第15装甲師団は英第7機甲旅団となおも激闘を繰り広げていたが、遂に戦車大隊1個が残りステップ数がゼロとなり壊滅。枢軸側では初めてのユニット消滅となった。

トブルク正面では、いよいよ英第70歩兵師団が活動を開始する。まず包囲輪周辺でイタリア軍が築いた鉄条網を破壊し前進。イタリア軍の防御陣地に接敵する。しかし行動力不足につき攻撃を開始するには至らず・・・。

という所で今回は時間切れ、ゲーム終了となった。ちなみにトータルのプレイ時間は約17時間である。

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感想

ビッグゲームと呼ぶにふさわしい規模のゲームである。全体像をつかむとか、戦略を考えるとか以前に「ルールに弄ばれている」という感が強い。
このシリーズ、何度プレイしても感覚的につかめないのが補給の概念である。補給ルールがわかりにくいというのもあるが、一番しっくりこないのは、

 1)補給を切るため、あるいは補給を切られないためにはどうしたら良いのか
 2)補給を切られた時の影響度は如何ほどか

まず敵ユニットを囲んで「退路がない」状態に追い込んだ場合。その場合は孤立損耗を強要できる。ただし敵側の活性化終了時点で判定するので、敵側が活性化によって孤立状態を解消すれば、損耗は発生しない。ちなみに「退路がない」状態というのは、HQまで安全な経路を確保できていない状態を表す。安全な経路は、地形や敵ZOCによって遮断されず、HQの指揮能力+5ヘクスを超えない範囲の経路になる。この文章だけを読むと「ZOCで囲めばポンできる」と考えがちだが、そうはいかない。戦車などの戦術移動力を持つユニットで「安全経路」を考える場合、戦車のような射撃値を持つユニット以外のZOCは無視できるのだ、つまり戦車を囲めるのは戦車だけ、となる。英軍の主力である機甲旅団は戦車大隊を3個持ち、対するドイツ軍装甲師団は戦車大隊を2個持つに過ぎない。よって英軍戦車旅団を包囲殲滅するのは、かくして絶望的になる。

案外効果がありそうなのが、HQそのものを囲んでしまうという方法。これはいわゆるMSR遮断状態を現出する。MSR遮断状態が実現すると、活性化の最初の時点で判定されるため、問答無用で補給段列が盤外移動になる。補給段列が盤外移動になると活性化に-3のDRMが適用されてしまう。これに疲労度やイタリア軍のように元々の活性化チェックに不利な修正が適用される軍隊の場合、活性化に失敗する可能性が大きくななる。活性化に失敗すれば、状況はさらに悪化し、指揮下の部隊は移動できないので孤立損耗してしまう。
そうだ。BCSではHQを「踏みつぶす」のではなく(踏みつぶしたら、司令部がどこかに下がっていくだけ)、HQを「囲む」のが良かったのだ。そうすれば補給段列が使えなくなるし、麾下の部隊も孤立損耗を強いられる。部隊全体を囲むのではなく、HQだけを囲めばよかったんだ。チクショー、なんでそれに気が付かなかったたんだ。
ということは、逆に守る側の立場に立てば、味方のHQが囲まれないように注意すれば良い。HQを不必要に突出させず、前線部隊と適度な間隔を保つ。また敵快速部隊の跳梁を阻むため、中央部には戦車ZOCを張って敵側の安全経路が背後に回り込むのを防ぐ。こんな感じで布陣すれば、敵側の「電撃戦」をある程度防げるのではないだろうか・・・。

あと違和感を覚えたのは「命令」ルール。デザイナーの意図がどこにあるのか不明だが、結局の所、防御している側を不利にするだけのルールに思える。攻撃側の立場に立ては、大雑把に方向を決めて攻撃させれば、あとは戦局の推移によってHQの前進位置を適当に「調整」できてしまう。極端な話、攻撃側プレイヤーは移動命令を与えておきながらも、実際に移動する段になって「全く移動させない」という選択すら可能なのだ。
その一方で防御側は、準備防御の命令を与えていると、たとえ敵が突破してきても律義にその場に居続けなければならない。
私が今回枢軸側を担当していて守備がメインだったので特にそう感じたのかもしれないが、命令ルールについては「果たしてこのルールって必要なの?」と思ってしまった次第である。

とまあ色々と書いてみたが、BCSが非常に魅力的なルールとシチュエーションを扱った作品群であることは疑いない。今回プレイした「Brazen Chariots」にしても、クルセーダー作戦を大隊規模で再現するというのは極めて野心的な試みと言える。BCSの「やや癖のある」戦闘システムや補給システムについても、「何ができて」「何をやるべきか」が明確になれば、もっと楽しむことができるだろう。

そういった意味においては、「Brazen Chariots」にしても他のBCS作品にしても、機会を見つけて再戦したい作品であることは間違いない。

英クルセイダー戦車






NO RETREAT2 ドイツ装甲軍団1
ロンメルとアフリカ軍団戦場写真集 ロンメル将軍 副官が見た「砂漠の狐」 「砂漠の狐」回想録 エル・アラメインの決戦: タンクバトル2

BC表紙

「Brazen Chariots」(以下、本作)は、2019年に米国MMP社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームである。テーマはクルセーダー作戦。1941年11月、北アフリカ戦線における英連邦軍(連合軍)によるトブルク方面に向けた反撃作戦だ。作戦自体は連合軍の勝利に終わり、トブルクとキレナイカ一帯の支配を連合軍が奪回した。しかし戦いの途中ではドイツ軍優位に進んでいた場面もあり、連合軍としてもギリギリの勝利だったと言える。
本作は、クルセーダー作戦を、1ユニット=1個大隊、1Turn=1日、1Hex=1マイルの規模で描いている。なお、一部のシナリオはブレビティ作戦やバトルアクス作戦等を扱っている。マップはフルマップ3枚でトブルク周辺部のキレナイカ一帯を描いている。マップ東端部がハルファヤ峠、西端部がトブルク包囲網の西外周部分である。クルセーダー作戦はWW2期に実施された作戦の中ではそれほど大規模な戦いではないが、BCSのスケールで描くと結構ビッグゲームになる。なお、カウンターは1000個以上が同梱されている。
説明が前後するが、本作はBCS(Battalion Combar Series)の1作である。BCSについては 以前の記事 で紹介したので、参照されたい。一言で言えば、大隊規模ユニットによる陸上戦闘を詳細なルールで再現したシリーズと言える。
今回プレイしたシナリオは、シナリオ5.8「Operation Crusader(2MAP)」。クルセーダー作戦を再現するシナリオだが、東端のマップは使用しないシナリオである。その結果、マップ東部で繰り広げられておるハルファヤ峠の戦いや、バルディア要塞を巡る攻略戦等は省略されている。

今回、私は枢軸軍を担当した。

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状況分析

このシナリオは、トブルクに籠るイギリス軍を、ドイツ、イタリアの枢軸軍が包囲し、その包囲輪の外周から連合軍が攻撃を仕掛けてくるところから始まる。連合軍の勝利条件は、外部からトブルクへ通じる1級又は2級道路沿いの連絡線を確保すること。地図を見ればわかるが、トブルクへ通じる第1、2級道路は、地中海沿いに東西に走る海岸道路とトブルクの南に延びるEl Adem道路のみ。つまりトブルクの東、南、西の3方向に延びている。
そのうち海岸道路については、英軍の攻撃開始位置であるトブルク南東部からかなり遠く離れている上、同方面で最強のドイツ・アフリカ軍団(DAK)と対峙しなければならない。一方のEl Adem道路は、守備隊がイタリア軍のみで比較的弱体。無論DAKの機動反撃に晒されることにはなるが、連合軍側からの反撃も可能なので、一方的に叩かれるという展開にはなりにくい。従って連合軍側の主攻性はEl Adem道路に指向されるとみるのが妥当だろう。
従って枢軸軍としては、El Ademに向けて進撃してくるであろう英連邦軍諸隊をDAKの2個装甲師団で各個撃破する作戦を狙うこととした。

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1Turn(1941年11月19日)

このシナリオは連合軍の攻勢開始により始まる。最初に攻撃を受けたのは、Bir el Gubiを守るイタリア軍アリエテ戦車師団である。英第22戦車旅団がアリエテ師団に猛攻を仕掛けてきた。アリエテ師団はイタリア軍随一の装備を誇っており、特にその装備する90mm対戦車砲は、伝説のドイツ軍88mm砲に匹敵する威力を誇っている。
今回、このBir el Gubiの戦いでは、イタリア軍90mm法が猛威を振るい、英第22戦車旅団のマチルダやクルセーダー戦車を次々と撃破した。英軍の損害は戦車4Step、歩兵1Stepの計5Stepにも及び、アリエテ師団の損害は僅かに歩兵1Stepに過ぎなかったのである。

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2Turn(11月20日)

「なんなんだよ、これ。一体」

枢軸プレイヤー(つまり筆者)の悲鳴が響き渡る。先ほどの戦闘で大損害を受けたはずの英第22戦車旅団であったが、わずか1回の補充によってほぼその全部が回復してしまったのである。

「これじゃ、賽の河原だよ」

英軍の無尽蔵な補充能力。知識としては理解していても、いざその猛威に直面すると、やはり驚愕を禁じ得ない。

気を取り直して反撃開始。まずはDAK自慢の第21装甲師団が、El Adem南東へ伸びるトレイル上を走っている英Support旅団の後尾を捕捉して一撃を加えた。砲撃と戦車による攻撃でSupport旅団に計4Stepの損害を与えた第21装甲師団は、まずは幸先の良いスタートを切る。

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DAKもう1つの雄、第15装甲師団も活動を開始。こちらはEl Adem付近で攻勢態勢に入っている英第7戦車旅団を攻撃する。しかしこちらはダイス目に恵まれず英軍と相打ち状態。補充能力に劣るドイツ軍にとって相打ちは危険な兆候である。
さらにその第15装甲師団を後続してきた英1戦車旅団が攻撃。行軍隊形のまま接敵攻撃を行っていた第15装甲旅団の判断が災いし、計4Stepもの損害を被ってしまう。

先ほど奮戦していたアリエテ師団に対しても新たな敵が迫ってきた。歩兵中心の南アフリカ第1旅団である。砲撃と歩兵による接近攻撃により、さしものアリエテ師団も歩兵4Stepを失う大損害を被った。

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3Turn(11月21日)

補充の出目が全く振るわず、こちらの補充ポイントはゼロ。それに対して英軍の補充ダイスは、またもや最高値の6で補充Max。補充能力に乏しい事は分かっていたが、こうもダイス目に見放されると嫌になる。
第21装甲師団は英Support旅団に対してなおも攻撃を継続する。ドイツ軍最強クラスの装甲師団の猛攻を受ければ、さしもの英軍歩兵旅団も対抗する術もなく、殆ど壊滅した。

第15装甲師団は英第7戦車旅団に対する攻撃を継続。相変わらずダイス目の悪さに悩まされるつつも、機動力の優位を生かして英軍を包囲する。

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アリエテ師団には先ほどの教訓を受けて歩兵部隊を広く散開させて砲撃の損害軽減を図る。その甲斐もあってか、砲撃による損害は1Stepに収まった。

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4Turn(11月22日)

またもや補充ダイスに泣かされる。こちらのダイスは最低の1で、補充ポイントはなし。連合軍はダイス5で、ベストではなかったにしてもかなり良い出目である。補充能力に差があることは最初から分かっていたが、悪いダイス目が続くとさすがに嫌になる。度重なる戦闘で、DAK誇る装甲部隊の残りステップ数も心細くなってきた矢先でもある。

DAKの反撃。第15装甲師団は、英軍の主力である第7機甲旅団を包囲することに成功。壊滅寸前に追い込んだ。
さらに第21装甲師団は、英第4機甲旅団を攻撃する。相変わらず出目の悪さに苦しむドイツ軍であったが、それでもなんとか第4機甲旅団を包囲することに成功する。

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このTurnの終盤に事件が起こった。次Turnの連合軍増援部隊のうち、ニュージーランド歩兵師団がマップ東端の海岸道路付近から登場してくることが判明したのだ。ちなみに同方面を守る枢軸軍の守備隊は皆無で、海岸道路付近にはDAKの兵站部隊が集まっている。ここを潰されたらDAKの壊滅は免れない。この時点で投了をも覚悟した枢軸軍であった。

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このまま終わりにするのもお互い悔いが残るので、両者協議の結果、ドイツ軍アフリカ歩兵師団の配置を見直すことに決定。同師団を東側から接近する連合軍に対する守りの配置につかせることで一件落着となった。

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本件、明らかに枢軸側のポカミスだが、いきなり自軍の側面から敵が増援で登場してくるのは正直かなり面食らう。他のBCS作品、例えばアラコートでも同様の事が起こるのだが、これはBCSのシナリオの書き方にも一因があると思っている。とにかくBCSのシナリオは、セットアップや増援部隊がわかりにくい。部隊名がテキストで(しかも改行もなしで)延々と並んでいるので、読み解いて、マップに配置するのは一苦労だ。今ならカラフルなセットアップシートや増援シートが当たり前になっているのに、未だに20世紀のような旧態依然としたシナリオ書式に固執するデザイナーの考えは全く理解できない。OCSもしかりだが、早く「21世紀に相応しい」ウォーゲームになって欲しいと思う今日この頃である。

つづく



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「Brazen Chariots」は、2019年に米国MMP社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームです。テーマはクルセーダー作戦。1941年11月、北アフリカ戦線における英連邦軍(連合軍)によるトブルク方面に向けた反撃作戦です。
作戦自体は連合軍の勝利に終わり、トブルクとキレナイカ一帯の支配を連合軍が奪回しました。しかし戦いの途中ではドイツ軍優位に進んでいた場面もあり、連合軍としてもギリギリの勝利だったと言えるでしょう。
「Brazen Chariots」は、クルセーダー作戦を、1ユニット=1個大隊、1Turn=1日、1Hex=1マイルの規模で描いています。また一部のシナリオはブレビティ作戦やバトルアクス作戦等を扱っています。

「Brazen Chariots」は、MMP社が精力的に販売を続けているBCS(Battalion Combar Series)の1作です。BCSについては 以前の記事 で紹介したので、参照してください。一言で言えば、大隊規模ユニットによる陸上戦闘を詳細なルールで再現したシリーズです。

クルセーダー作戦はWW2期に実施された作戦の中ではそれほど大規模な戦いではありませんが、BCSのスケールで描くと結構ビッグゲームになります。マップはフルマップ3枚で、トブルク周辺部のキレナイカ一帯を描いています。マップ東端部がハルファヤ峠、西端部がトブルク包囲網の西外周部分に相当します。またカウンターは1000個以上が同梱されています。

今回、「Brazen Chariots」のプレイ内容を紹介する動画を作成しました。今回プレイしたシナリオは、シナリオ5.8「Operation Crusader(2MAP)」。クルセーダー作戦を再現するシナリオですが、東端のマップは使用しません。そのため、マップ東部で繰り広げられておるハルファヤ峠の戦いや、バルディア要塞を巡る攻略戦等は省略されています。



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BCS-LastBlitzKrieg-BoxArt

BCS LastBlitzkrieg(以下、本作)をプレイする。
本作は、2016年に米国MMP社から発売されたSLGで、テーマは1944年12月のアルデンヌ攻勢、いわゆる「バルジの戦い」である。本作は、BCS(Battalion Combat Series)と呼ばれる作品群の第1作目にあたる。本作の基本システムは、 以前の記事で紹介済 なので、そちらを参照されたい。

今回は、その中からシナリオ5.4「Southern Campagin」をプレイしてみた。これはドイツ第5装甲軍によるバストーニュ方面への攻勢作戦の最初の6日間を再現するシナリオである。勝利条件はBastogne(2.20,バストーニュ)とHouffalize(8.31,ウッファリーズ)等の都市の支配で、ゲーム終了時までに左記両都市をドイツ軍が支配すればドイツ軍の勝利。1個でも米軍が保持していれば、ドイツ軍の勝利は甚だムツカシイ。BastogneとHouffalizeの両方を最後まで保持すれば、恐らく米軍の勝利になる。

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1Turn:44年12月16日

アルデンヌ攻勢の開始である。ドイツ軍は最前線に沿って流れているオウル川(Our R.)を渡河できる歩兵兵力で前線突破を図る。北から第116装甲師団、第560国民擲弾兵師団、第2装甲師団、第26国民擲弾兵師団、戦車教導師団、第5降下猟兵師団、第352国民擲弾兵師団、第276国民擲弾兵師団、第212国民擲弾兵師団の順番で進撃を開始する。装甲兵力は川に阻まれて前進できないが、歩兵部隊は難なくオウル川を渡って対岸に出る。
対岸を守る米軍は第28歩兵師団、第9機甲師団、第4歩兵師団などだが、兵力の差は歴然としており、2個師団の敵に対して1個連隊で守るような場面もざらだった。特に広正面を守る第28歩兵師団は圧倒的な兵力のドイツ軍相手に苦戦を強いられ、各地で包囲され、退路を断たれた。

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2Turn:44年12月17日

オウル川の橋梁の修理が完了し、ドイツ軍の装甲部隊がオウル川を渡って突進してきた。北部ではドイツ第116装甲師団がOuren(30.33,ウーレン)の渡河点に特殊部隊を投入してこれを確保。米第28歩兵師団第112連隊を撃破しつつ西へ向かう。
その南側面では、ドイツ第2装甲師団と歩兵部隊が要域Clervaux(23.25,クレルヴォー)に近づきつつある。その南側ではドイツ戦車教導師団が米軍戦線の側面を迂回。国道12号線沿いの米軍主補給線(MSR)を脅威したが、活性化チャックがギリギリで失敗し、米軍のMSRを遮断するには至らず。

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3Turn:44年12月18日

米軍に強力な増援部隊が登場した。第101空挺師団である。重装備はなかったが練度が高く(アクションレーティングが4とか5とか)、また戦力も比較的充実していた。彼らは早くもバストーニュ周辺に展開する。

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ドイツ軍もそろそろ疲れが見えてきたが、それでもバストーニュに総攻撃を加えた。第116装甲師団と戦車教導師団はバストーニュに突進。米空挺部隊に損害を与えるも、バストーニュ占領はまだまだ先になりそう。その間、要域Wiltz(17.17,ヴィルツ)を第26国民擲弾兵が占領する。

一方の米軍は、戦線南方から第10機甲師団が登場。その一部が戦線南翼より攻撃を開始する。攻撃を受けたのはドイツ軍第272国民擲弾兵師団。米機甲師団の攻撃を前に、ドイツ軍国民擲弾兵は後退を余儀なくされる。

そんなこんなでここでゲーム終了。全6Turnのうち3Turnが終了した。ここまでのプレイ時間は、セットアップと休憩時間を除くと約7時間であった。

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この段階で勝利得点を計算すると、ドイツ軍は1VP、米軍は4VPであった。このままでは米軍が勝利するが、もしドイツ軍がバストーニュとウッファリーズの両方を占領すれば、VPは3:2で逆転する。ただし1個でも米軍が支配できていれば、米軍の勝利は動かない。

感想

今回は防御側の米軍を担当したが、このシステムでの防御側は難しい。交互にフォーメーションを活性化させるシステムなので、整然と後退するのが難しいのだ。後退しようとしても、バラつきが出てしまう。その結果、戦線にすき間を作ることになり、そこが攻撃側の付け入る隙となる。
このシステムの場合、防御側はあまり戦線維持に拘らず、それよりは交通の要所をしっかり守って敵の後方への大突破を防ぐ。小規模な包囲は甘んじて受け、包囲されても自主後退ルールで粛々と後退する。どうしても後退できない友軍は涙を呑んで見捨てる、ぐらいの心構えで丁度良いようだ。
今回のプレイは必ずしも満足できるプレイ展開ではなかったので、機会を見つけて再戦したいアイテムである。

写真08


おまけ

今回の対戦動画を作成しましたので、宜しければどうぞ。




バルジ大作戦 (ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス第4号 第2版) Game Journal 88-激闘ロンメル・マッカーサー Fortress Europa
バルジ大作戦 バルジの戦い(上) バルジの戦い(下) 西部戦線 (歴史群像アーカイブVol.17)

BCA_Arracourt表紙



BCS(Battalion Combat Series)とは、WW2における陸上戦闘を大隊規模で再現するシミュレーション・ウォーゲームのシリーズである。BCSの概要については、 こちらの記事 を参照されたい。

今回は、BCSシリーズの1作「Arracourt」のキャンペーンシナリオに挑戦してみた。これは、1944年9月にフランス・ロレーヌ地方のアラクール周辺で戦われた米軍とドイツ軍との戦いを描いたシナリオである。

前回までの展開 --> こちら

10Turn(9月27日)

天候は晴れたが、連合軍の航空支援は1ポイント+バズーカ・チャーリーだけ。連合軍としてはちょっと寂しい。補充ポイントもドイツ軍がまたもやダイスが良く、先に撃破されたドイツ第113装甲旅団の重戦車部隊を復活させた。

Bazooka-charlie


先手を取ったドイツ軍は、比較的健在な第11装甲師団が前進し、米第4機甲師団の連絡線を遮断する。それに対して米第4機甲師団のCCAが反撃。第11装甲師団の先鋒部隊を撃破する。ドイツ軍も満身創痍の第113装甲旅団でシャトーサリーを攻撃。守備隊に打撃を与えて、あと一歩まで追い詰める。

Turn10a


US_79ID_HQ南方では米第79歩兵師団がMoncel(36.11)でムルト川渡河。そのまま北上し、ルネヴィル市街に突入する。ルネヴィル中心部ではドイツ第15装甲擲弾兵師団の115連隊第3大隊が頑強に抵抗していたが、残りステップ数が1になり、陥落の危機が迫る。その一方、米第79歩兵師団も度重なる戦闘で疲労レベルが3にまで上昇しており、かなり厳しい状況にはなっている。

Turn10b


11Turn(9月28日)

US_CCB_Conley裏天候は曇り。先手を取ったのは米軍。弱体化していたシャトー・サリーに第4機甲師団のCCBが増援部隊を送り込む。シャトー・サリーを攻撃するドイツ第113装甲旅団は既に攻撃力が限界に達しており、これ以上の攻撃は困難であった。

その南側に隣接して展開するドイツ第111装甲旅団、第11装甲師団もそれぞれ戦力を喪失しつつあり、それに対して米第4機甲師団が反撃を実施。ドイツ軍の前線を数Hex押し返した。

南方戦線では、連合軍の攻撃を担っていた米第79歩兵師団が疲労回復のため停止。僅かにルネヴィル北方から米第6機甲師団のCCBが迂回攻撃を仕掛けていた。

M4Sherman_6thArmordDiv


12Turn(9月29日)

GE_15PG_1_104裏天候は雨。にも拘らず米軍は攻撃を仕掛ける。この日の戦いは南方から始まる。南方の要域、ルネヴィルに近づいて来た米第79歩兵師団。疲労レベル2にも関わらず完全活性化に成功した。直ちにルネヴィルに接敵。後方連絡線を遮断しつつ、砲火力を集中してルネヴィルを守るドイツ軍第15装甲擲弾兵師団の第104連隊第1大隊(1/104)を攻撃する。ドイツ軍歩兵も練度の高い精鋭部隊であったが、砲火力を集中されるとたまらず壊滅する。こうして米軍がルネヴィルを奪回した。

Turn12a


その北側。戦線中央のアラコートに対しても米第4機甲師団のCCRが攻撃。ドイツ第111装甲旅団の守るアラコートを米軍が奪回した。

Turn12b


GE_113Pz_2113裏しかし北部戦線ではドイツ軍が維持を見せた。兵力の半数以上を失って壊滅状態であったドイツ第113装甲旅団が意地を見せた。4号戦車を装備した2113戦車大隊が米軍CCBの戦車大隊、機械化歩兵大隊を次々と撃破。要域シャトー・サリーへの突破口を啓開した。そこへ砲兵支援を受けた装甲擲弾兵大隊がシャトー・サリーへ突撃を敢行。米軍の守備隊を追い出し、シャトー・サリーを奪回した。

4号戦車


13Turn(9月30日)

GE_15PG_1_104裏最終Turnである。天候は晴れ。米軍の航空兵力も初めて全力出撃となった。

先手を取った米軍は第4機甲師団のCCBを活性化し、シャトー・サリーの奪回を目指す。シャトー・サリーには、ドイツ第113装甲旅団の歩兵部隊が守備している。米軍の攻撃は猛烈を極めたが、遂に米軍はシャトー・サリーを落とすことはできなかった。

Turn13b


US_4A_CCA_53Bその間、ドイツ軍は第111装甲旅団を活性化し、アラコートに反撃を実施。アラコートをドイツ軍が奪回する。その後、米軍CCR、ドイツ軍第11装甲師団が活性化。アラコートを取ったり取られたり、第11装甲師団がアラコートを奪取。このままでは勝利条件的に米軍は勝てない。そこで米軍最強の第4機甲師団CCAを活性化。幸い完全活性化に成功したCCAは、アラコートに猛攻撃を実施し、遂にアラコートを米軍が奪回した。この時点でドイツ軍にアラコートを取り返す余力はもうない。

Turn13c


その後、小競り合いのような戦いが続いたが、結局大勢は覆らず。
ゲーム終了時にドイツ軍はVPヘクスであるシャトー・サリーを支配したものの、アラコート、ルネヴィルは米軍が支配。さらに装甲兵力の完全損失でもドイツ軍が上回っていた。勝利得点的には、米軍が3VP、ドイツ軍が1VPで、米軍の勝利に終わった。

GE_559HQちなみにこのTurn、これまで活動を停止していたドイツ軍第559歩兵師団がようやくSNAFUチェックをクリアし、活動を開始。補給線を遮断している米軍部隊を撃破。補給線を回復した。さあ、これで殆ど無傷の第559歩兵師団が活動を開始できる・・・、筈だったが、既に最終Turnなので、特に活躍の余地なし。

感想

ルールは難しいが、ユニット数が少ないのでサクサク進む。戦闘は消耗型だが、ステップロスしてもユニットの能力が下がらないのでなかなか死なないイメージがある。しかし振り返ってみると、特にドイツ軍は半数以上が除去されるという大損害を被っており、その出血が凄まじい。

ゲーム展開としては、結構「荒れる」。特にゲーム中盤に北方から登場するドイツ軍第559歩兵師団が「荒れる」原因になる。北方の米軍部隊(第4機甲師団)が僅か1本の補給線に依存しているので、そこを切られるとアウトだ。今回は米軍が逆にドイツ第559歩兵師団の主要連絡線を遮断し、同師団の機動を封じていたので米軍にとっては無事だった。しかし状況が逆転して米第4機甲師団が連絡線を切られて動けなくなっていたら、それこそドイツ軍の圧勝だった。米軍としてはかくなる事態を避けるため、例えば第4機甲師団の連絡線を南方の道路に移す方が安全かもしれない。その場合、北方の要域シャトー・サリーはドイツ軍に委ねることになるが・・・。

ゲーム全体のイメージとしては、やや粗削りな感じはあるが、面白いと感じた。歩兵、戦車、砲兵がそれぞれの役割を持っていて、その違いがマップ上に表現されているのが興味深い。ただしコンポーネントにはやや不満があり、例えば戦車部隊はNATO兵科ではなく戦車のシルエットにした方がより雰囲気が出たものと思われる。

とまあ色々書いたが、BCSというシステムは非常に面白く、先進的なものであることは確か。今回プレイしたArracourtは一番小規模なゲームだが、他にも電撃戦をテーマとした作品が発表されているので、機会を見つけてプレイしてみたい。


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