「No Retreat!」(以下、本作)はWW2における独ソ戦をキャンペーンレベルで描いたシミュレーションゲームだ。独ソ戦のキャンペーンとしては、The Russian Campagin(以下、ロシキャン)が有名だが、本作の1Turnは2ヶ月でロシキャンと同じ。1Hexは約100km、1ユニットは枢軸陣営が軍規模(8~12万人)、赤軍側は方面軍規模(13~21万人)になっている。いずれもロシキャンよりも一回り大きい。
今回、本作のキャンペーンシナリオを対人戦で試してみた。
前回までの展開は -->こちら
14Turn(43年7-8月)
盤面のソ連軍は殆ど増強状態となり、ソ連軍の攻撃力は開戦時とは見違えるほど強化されてきた。しかしソ連軍の進撃は今一つ振るわない。ドンバス前面で反撃してきたドイツ軍によってスターリノが奪回されてしまう。これに焦ったソ連軍は、ペレコープ地峡前面で反撃に転じた。難攻不落のペレコープ地峡に隙が生まれた。これが後に大きな禍根を残すことになる。15Turn(43年9-10月)
ドイツ軍はペレコープ地峡に再び攻撃を加える。最強の第2装甲軍(7-6)を注ぎ込んでペレコープ地峡を一撃で突破。セヴァストポリに迫る。ロシア軍はセヴァストポリの要塞を強化して守りを固める。これで一安心、の筈だったが・・・。16Turn(43年11-12月)
忘れていたが第13Turnからソ連軍のフリー改編が1ユニットから2ユニットに増えていた。2ユニットほど損したことになるが、まあ仕方がない。現実の社会でもこういった損はよくある話。小さな損をいつまでも悔やんでいては、本質が見えなくなるのも現実世界と同じだ。ドイツ軍がセヴァストポリ要塞に対して激しく攻撃するも、セヴァストポリの守備隊が奮戦してドイツ軍の攻撃を跳ね返している。このまま要塞守備隊が頑張ってくれれば、クリミア半島の入口をソ連側が支配してセヴァストポリの安全は確保されるだろう。
17Turn(44年1-2月)
「えーっと、地上補給戦が通じない場合、回復はできないですね」相手プレイヤーの一言に一瞬何のことか理解できなかった。畳みかけるように
「セヴァストポリの地上補給戦が切れてますよね」
と言われてようやく気が付いた。セヴァストポリは海上補給が通じるので補給切れになることはない。だから「難攻不落」と思っていたが、ルールをよく読むと地上補給線が切れているではないか。それでわざわざケルチ地峡(現在のクリミア大橋がある所)側にドイツ軍が進出してきたのか・・・。これまで楽勝ムードだったロシア軍は、一瞬にして窮地に立たされることとなった。
ロシア軍にとって苦境を脱する方法は2つしかない。1つはセヴァストポリが陥落する前にセヴァストポリへの地上補給線を回復すること。もう1つはセヴァストポリが陥落する前にレニングラードを奪回すること。後者については幸い勝利判定がTurnの開始時なので、セヴァストポリの陥落とレニングラードが同じTurnなら、首の皮一枚でソ連側が助かることになる。
ちなみにこのTurnからソ連軍のステップ数が2ステップに増える。これでようやくドイツ軍と互角に近い状態で戦うことが可能となる。ドイツ軍の前線は薄くなってきて、いよいよスチームローラー発動。こんな状態でセヴァストポリを取られて負けてしまうなんて、耐えられない・・・。
18Turn(44年3-4月)
セヴァストポリの守備隊が遂に壊滅した。しかし戦闘結果がEXだったので、ドイツ軍は戦闘後前進できていない。ソ連軍はセヴァストポリを奪回すべく、ケルチ地峡側からはソ連最強の第5親衛戦車軍(8-4)が攻撃を実施。さらにクリミア半島入口付近では、ドニエプロペトロフスクを占領したソ連軍がさらに西へ進んでオデッサに向かう。あと一歩でクリミア半島を完全包囲できるのだが、果たしてそれまでゲームが続くかどうか・・・。レニングラード方面でもソ連側の第1戦車軍(6-4)がレニングラード前面を守るドイツ第4装甲軍を攻撃する。第4装甲軍はステップロスしており戦力は低下していたが、それでもソ連軍の攻撃を跳ね返した。
19Turn(44年5-6月)
セヴァストポリが遂に陥落した。戦略的にみてこの時期セヴァストポリが陥落することに何の意味があるのか、とも思えるが、ゲーム的には重大事件である。ソ連軍がサドンデス負けを避けるためには、何としてもレニングラードを奪回しなければならない。レニングラード前面を守るドイツ第4装甲軍(4-6)に対してソ連軍はカウンターブローを仕掛ける。しかしソ連軍の攻撃は不発に終わって攻撃失敗。この段階でレニングラード陥落は不可能となった。最終Turnまであと3Turnであったが、この時点でドイツ軍によるサドンデス勝利が決まった。
感想
プレイ時間は休憩時間を除くと7時間弱である。結構時間がかかったが、白熱した戦いであった。ただ勝敗だけを見ると、正直な所悔いの残る1戦であった。ペレコープ地峡で変な色気を出さなければ、セヴァストポリが落ちることもなく、兵力で優位に立つロシア軍で弱体化したドイツ軍を圧倒できる筈であった。つくづく余計なことをしなければ良かったと思う。あと、序盤のレニングラード陥落も失敗だったが、これは経験不足なので仕方がないと思う。次回のプレイでは、同じ失敗を繰り返さないようにしたいとは思う。ただ、今回のプレイでの真の敗因がレニングラード早期陥落にあったことは間違いない。
ゲーム自体の感想についてだが、シンプルなゲームだが戦い方にある程度定石やツボのようなものがあり、それがわからないと経験者相手に初心者が勝利するのはほぼ不可能だと思えた。ただしゲームとしては面白いので、勝敗に拘らず「胸を借りる」つもりでプレイすれば、十分に面白い作品ではないだろうか。今回の私のように仮にゲーム上では敗れたとしても、
「あそこでこうしておけばよかった」とか
「そんなルールがあるなら気を付けよう」とか
思えたのなら、次の対戦では同じ失敗をすまい、と思えて、次回の対戦意欲が湧くと思う。
気になる点は、カードの取り扱い。カードプレイの占める割合が多く、カードの使い方次第で戦局を動かせること。例えば今回問題になった「列車砲」。私自身もやられたことがあるのだが、このゲーム、要塞の効果が大きく普通の攻撃では陥落させることが難しい。「列車砲」カードを使えば要塞を陥落させるのは容易だが、ソ連軍がこのカードを抱え込んでしまうと、ドイツ軍は要塞に対して苦慮することになる。他にもカードを捨てさせるカード、相手のカードを無効化するカードなどを使いこなす必要がある。しかしカードプレイのテクニックを考えると、果たしてこのような工夫が「いったい何のしみゅれーしょん何ですか?」と思えてくる。本作が一部で「ゲーム的過ぎる」と批判されるのは、カードプレイへの過度な偏重にあると思う。
ゲームとしてのバランスについては評価が難しい。今回、私のポカミスがなければ勝てたようにも思えるのだが、ドイツ側にもまだまだ秘策のようなものがあるのなら、ロシア側が有利とはいえないかもしれない。ただ、今回のプレイの印象では、ロシア側はミスをしなければ有利に戦えるのではないかと思えた。