The Battle for Germany(以下、本作)は、2021年に米国Compass Gamesが発表したシミュレーションゲームだ。テーマは1985年8月を想定した西ドイツにおけるワルシャワ条約機構(WP)軍とNATO軍の対決。1Turnは実際の1日、1Hexは12kmに相当し、1ユニットは連隊~師団規模になる。 本作の基本システムは、
以前の記事
で紹介したので、そちらを参照されたい。
今回は、その中からシナリオ5「The Battle for Germany」をソロプレイしてみた。このシナリオはマップ全域を使ういわば「グランドキャンペーン」というべきシナリオである。
前回までの展開は --> こちら
同様に北部戦線でもハンブルグ南方に孤立したソ連軍、東ドイツ軍各1個師団を救援すべくNATOの防衛線に激しい攻撃を加えた。しかし西ドイツ軍、イギリス軍、そしてベルギー軍がガッチリ防衛線を固めており、WP側大兵力の攻撃にもビクともしない。無論、一部ではWP側が勝利する場面もあったが、NATOの兵力が大きいためにステップロスや補充ポイントの消化だけで賄われてしまっている。WP側が唯一前進できたのはハンブルグ北西部のエルベ川流域で2個師団の兵力がエルベ川西岸へ強行渡河に成功。オランダ軍第4歩兵師団前面に3ヶ所の橋頭保を築いた。
プレイの途中に気づいたのだが、予備移動のルールに適用ミスがあった。大きなミスは以下の2点である。
1)予備移動で活性化した司令部は行動済みになる(補給ポイントを支払えば行動済みにならないと思っていた)。
2)予備移動ではRoad Column(路上行軍)を利用できない(路上行軍を利用できると思っていた)。
この2点のおかげで第1TurnにおけるNATOの展開が早くなり、防御態勢が固まってしまった。それが今回の一方的な展開の大きな要因だと思う。それがなければ、WP側はもう少し大きく前進できたと思う。
今回初めてキャンペーンシナリオをプレイしてみたが、政治ルールに問題があると感じた。小国の脱落が簡単に起こり過ぎるのだ。デンマークのように開戦劈頭に本土侵略を受けるような国ならまだしも、オランダやベルギーのような国家が開戦1~2日で、しかも本土が侵攻されている訳でもないのに簡単に脱落するものだろうか?。ましてやポーランドやチェコスロバキアのような国家が、簡単に脱落するものだろうか?。現実問題として自国国内に敵側の軍隊が進入するとか、あるいは自国内で大型核兵器が炸裂するとかしない限り、これらの中小国が単独で戦線離脱は考え難いように思う。
下表は本作でNATO諸国が戦線から離脱する可能性を示すものである。
ここで注意してほしいのは、NATO諸国が戦線から離脱する可能性は、WP側の獲得したVPの「絶対量」に応じて変化するということである。「絶対量」という意味に注意してほしい。本作のVPシステムは基本的に「加算」方式である。すなわち自軍に有利な事象を達成すれば自軍のVPが加算され、逆に敵軍に有利な事象が達成されれば敵軍のVPが加算される。つまり両軍とも時間の経過と共にVPは増えていくことになる。
ここで大規模シナリオと中規模シナリオの違いを考えてみてほしい。当然大規模シナリオでは中規模シナリオに比べて同じ期間で比較すれば両軍ともより多くのVPを獲得する(VPの加算機会が多い)。これがどういうことかと言えば、大規模シナリオでは必然的に中規模シナリオよりも中小国の戦線離脱が起こりやすくなるわけだ。もっと分かりやすく言うと、本作で北部戦線のみを扱ったシナリオ3では、中小国の戦線離脱はそれほど激しくは起こらない。しかしキャンペーンシナリオではいとも簡単に両陣営の中小国が「戦争を止めて」しまう。シナリオ3とシナリオ5では同じ状況を扱っており単に切り取り方が違うだけなのに、再現される現象が異なるのは如何なものか?。
この問題について個人的な見解を述べれば、中小国の離脱ルールはデンマーク以外は無視した方が良いと思う。またデンマークについてはWP側が2個師団以上をユトランド半島北端より盤外離脱させればデンマークは降伏する、ぐらいで良いように思う。
そこまで極端に変えるのが嫌なら、例えばキャンペーンシナリオでは政治テーブルのVPラインを2倍程度に引き上げて中小国の離脱が発生し難くするのが良いと思う。
先に挙げたVP判定の件以外にも工兵チェックや各種支援の是非など、ダイスによる変動要素が多く、「荒れる」ことの多いゲームである。ミニキャンペーンではそれほど気にならなかったが、キャンペーンシナリオだとこの「荒れ具合」がやや極端に思えてくる。シナリオ3や4のようなミニキャンペーンでは左程気にならなかったのだが・・・。対人戦を考えると、シナリオ5よりもシナリオ3とか4の方が向いているように思えた。
そう考えると、GDWのThe Third World Warの方が全体的に安定しており、そちらの方が高く評価できる。やはりThe Third World Warは傑作だなぁ、と、思い直した次第だ。
The Fulda Gap The Battle for the Balkans NATO Designer Signature Edition The Third World War, Designer Signature Edition Blue Water Navy Next War Poland Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』
今回は、その中からシナリオ5「The Battle for Germany」をソロプレイしてみた。このシナリオはマップ全域を使ういわば「グランドキャンペーン」というべきシナリオである。
前回までの展開は --> こちら
4Turn(1985/8/4)
戦略フェイズ
天候は晴天。NATOがAWACS優勢を確保した。WPは航空戦力が整わないので迎撃を断念。全機を地上待機とした。そのためNATOの攻撃機が思うがままに暴れ回り、WP側のSAM部隊を完全制圧。さらにインフラストラクチャー網を攻撃し、インフラ値を15から一気に5までダウンさせた。事実上これで決着がついた感がある。WPプレイヤーターン
WPはそれでもNATOの前線を突破すべく攻勢をしかける。フルダ峡谷前面では、歴戦の第79親衛戦車師団(79GTD)や第39親衛機械化師団(39GMRD)などが米第3機甲師団の守るフランクフルト東部に対して定点攻撃を仕掛けた。しかしNATO側の守りは固い上、航空戦力の支援も欠いたWP側に最早勝機はなく、攻撃側が大損害を出しただけに終わった。同様に北部戦線でもハンブルグ南方に孤立したソ連軍、東ドイツ軍各1個師団を救援すべくNATOの防衛線に激しい攻撃を加えた。しかし西ドイツ軍、イギリス軍、そしてベルギー軍がガッチリ防衛線を固めており、WP側大兵力の攻撃にもビクともしない。無論、一部ではWP側が勝利する場面もあったが、NATOの兵力が大きいためにステップロスや補充ポイントの消化だけで賄われてしまっている。WP側が唯一前進できたのはハンブルグ北西部のエルベ川流域で2個師団の兵力がエルベ川西岸へ強行渡河に成功。オランダ軍第4歩兵師団前面に3ヶ所の橋頭保を築いた。
感想
この時点でWP側の突破能力が無くなったと判断。ゲーム終了とした。プレイの途中に気づいたのだが、予備移動のルールに適用ミスがあった。大きなミスは以下の2点である。
1)予備移動で活性化した司令部は行動済みになる(補給ポイントを支払えば行動済みにならないと思っていた)。
2)予備移動ではRoad Column(路上行軍)を利用できない(路上行軍を利用できると思っていた)。
この2点のおかげで第1TurnにおけるNATOの展開が早くなり、防御態勢が固まってしまった。それが今回の一方的な展開の大きな要因だと思う。それがなければ、WP側はもう少し大きく前進できたと思う。
今回初めてキャンペーンシナリオをプレイしてみたが、政治ルールに問題があると感じた。小国の脱落が簡単に起こり過ぎるのだ。デンマークのように開戦劈頭に本土侵略を受けるような国ならまだしも、オランダやベルギーのような国家が開戦1~2日で、しかも本土が侵攻されている訳でもないのに簡単に脱落するものだろうか?。ましてやポーランドやチェコスロバキアのような国家が、簡単に脱落するものだろうか?。現実問題として自国国内に敵側の軍隊が進入するとか、あるいは自国内で大型核兵器が炸裂するとかしない限り、これらの中小国が単独で戦線離脱は考え難いように思う。
下表は本作でNATO諸国が戦線から離脱する可能性を示すものである。
ここで注意してほしいのは、NATO諸国が戦線から離脱する可能性は、WP側の獲得したVPの「絶対量」に応じて変化するということである。「絶対量」という意味に注意してほしい。本作のVPシステムは基本的に「加算」方式である。すなわち自軍に有利な事象を達成すれば自軍のVPが加算され、逆に敵軍に有利な事象が達成されれば敵軍のVPが加算される。つまり両軍とも時間の経過と共にVPは増えていくことになる。
ここで大規模シナリオと中規模シナリオの違いを考えてみてほしい。当然大規模シナリオでは中規模シナリオに比べて同じ期間で比較すれば両軍ともより多くのVPを獲得する(VPの加算機会が多い)。これがどういうことかと言えば、大規模シナリオでは必然的に中規模シナリオよりも中小国の戦線離脱が起こりやすくなるわけだ。もっと分かりやすく言うと、本作で北部戦線のみを扱ったシナリオ3では、中小国の戦線離脱はそれほど激しくは起こらない。しかしキャンペーンシナリオではいとも簡単に両陣営の中小国が「戦争を止めて」しまう。シナリオ3とシナリオ5では同じ状況を扱っており単に切り取り方が違うだけなのに、再現される現象が異なるのは如何なものか?。
この問題について個人的な見解を述べれば、中小国の離脱ルールはデンマーク以外は無視した方が良いと思う。またデンマークについてはWP側が2個師団以上をユトランド半島北端より盤外離脱させればデンマークは降伏する、ぐらいで良いように思う。
そこまで極端に変えるのが嫌なら、例えばキャンペーンシナリオでは政治テーブルのVPラインを2倍程度に引き上げて中小国の離脱が発生し難くするのが良いと思う。
先に挙げたVP判定の件以外にも工兵チェックや各種支援の是非など、ダイスによる変動要素が多く、「荒れる」ことの多いゲームである。ミニキャンペーンではそれほど気にならなかったが、キャンペーンシナリオだとこの「荒れ具合」がやや極端に思えてくる。シナリオ3や4のようなミニキャンペーンでは左程気にならなかったのだが・・・。対人戦を考えると、シナリオ5よりもシナリオ3とか4の方が向いているように思えた。
そう考えると、GDWのThe Third World Warの方が全体的に安定しており、そちらの方が高く評価できる。やはりThe Third World Warは傑作だなぁ、と、思い直した次第だ。
The Fulda Gap The Battle for the Balkans NATO Designer Signature Edition The Third World War, Designer Signature Edition Blue Water Navy Next War Poland Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』